914 :7/9:2008/08/26(火) 09:52:24 ID:VFtYjtRn0
ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべ
てを囲まれた形になった。
「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下
を向いていろ。俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。
そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後
に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。車列はかなりゆっくりとし
たスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。
間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のよう
なものを唱え始めた。
「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」
またあの声が聞こえてきた。
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いて
いたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。
目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。
あの大股で付いてきているのか。
頭はウインドウの外にあって見えない。しかし、車内を覗き込もうとしたのか、
頭を下げる仕草を始めた。
無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣が声を荒げる。
慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。
915 :8/9:2008/08/26(火) 09:53:50 ID:VFtYjtRn0
コツ、コツ、コツ
ガラスを叩く音が始まる。
周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。
Kさんの念仏に力が入る。
やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあ
げた。
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。
やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せ
てみろ」と近寄ってきた。
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持ってい
なさい」と新しいお札をくれた。
その後は親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られ
て命を落としたということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。
バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは
極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、
少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもす
ぐに集まる人に来てもらったようだ。
916 :9/9:2008/08/26(火) 09:54:54 ID:VFtYjtRn0
それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼
のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。
道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。
そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと
念を押された。
家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞
いたが、そんなことはしていないと断言された。
――やっぱりあれは…
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。
八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということ
だ。まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのよ
うなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。
それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日
談ができてしまった。
「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通
じる道のものがな」
と、ばあちゃんから電話があった。
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえ
なかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言って
いたという)
今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…
925 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 11:59:22 ID:dlo1UABw0
>>908
すごく面白かった。
実話ならかなり怖いね。
>>917
文章が上手くて引き込まれたせいか、無駄な文章が多いとは思わなかったよ。
好みによるんだろうけどね。
926 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 12:00:42 ID:Gs+3t3AgO
>>910
九州沿岸に生息すると言われる磯女という妖怪に似ているな。護岸工事で磯に住めなくなって陸に上がってきたのだろうか。
現代風にワンピース着るとかオシャレには気を使ってるんだな。
御守り黒くなるとか強烈にやばい存在みたいだが、封印壊れちゃったのかな?
927 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 12:28:59 ID:VAXAbcjK0
BO BO BO BO
PO PO PO PO
どっち?
928 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 12:39:37 ID:+J64zLOtO
八尺様の話すごく怖かったです。
929 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 12:49:56 ID:1/9/PTvqO
>>908
最初、ポポポって鼠先輩かよwと吹きそうになったが、
読み進めると背筋が冷たくなった。
封印が解かれたというが、その後大丈夫なんだろうか?
936 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 16:08:47 ID:41cqtXxCO
八尺様おもしろかった~
937 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 16:13:46 ID:DRM7tA/x0
八尺さまの話 すごく面白かった。。。
全然長さをかんじさせなかったよー
おどろおどろしくてすごく日本ぽかった
938 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 16:25:45 ID:GNo981Y0O
8尺の話良いね~
盛り上がってきたところで次スレたてましょうか?
941 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 16:55:48 ID:3eB/Qf5TO
八尺様の話し良かった。
読んでて鳥肌立ったよ。
マジでつか?kwsk
960 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 22:53:50 ID:pFl+1To1O
いや、八尺様怖かったですよ…
結界が投稿者の方の家の方に壊れたのは大丈夫なのですか?後日談とか合ったらお願いします。
失礼ですが、実話なら投稿者の方は大丈夫ですか?
961 :本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 23:31:45 ID:fH2xL4ZJ0
八尺様の話を読んで伊藤潤二の「ファッションモデル」に登場した
淵さんが頭に浮かんだ。
あんな感じなのだろうか?
969 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 06:03:23 ID:ftPyCtsOO
どうしようハ尺様の話し怖すぎる。眠れない。
最近の怖話しで一番怖い
971 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 06:09:56 ID:b17P1ESe0
>>910
>名前の通り八尺ほどの背丈があり、
「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。
ジャイアント馬場の霊では?
976 :本当にあった怖い名無し:2008/08/27(水) 08:25:42 ID:SmFGBjFK0
>>971
女装したG馬場の霊とか怖すぎだろjk
991 :本当にあった怖い名無し:2008/08/28(木) 03:29:27 ID:j0aRIzqk0
んじやこのスレで一番怖かった話は八尺様ということで
992 :本当にあった怖い名無し:2008/08/28(木) 08:30:40 ID:UOOoTgaV0
>>908乙
このスレで一番怖かったわ。
封印の地蔵が壊れたってことは
八尺様が全国どこにでも現れる可能性が出たということと
魅入られたら逃げることが出来なくなったということだよな…。
成人前の若い人間は気をつけろよ。
出典 https://hobby7.5ch.net/test/read.cgi/occult/1116836271/