『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

【新作洒落怖】最終退室者

投稿日:2021年2月18日 更新日:

126 :最終退室者(5/6):2009/06/21(日) 02:58:03 ID:Ji+DSlua0

その数秒後、何かを絞ったような「キシキシキシ」という軋み音が聞こえたかと思うと、
「うぐっ、ぐぅ…、うぅぅぅ…。」という、
くぐもった苦しげな声が『隣の個室の中から』聞こえてきたのだ!

それと同時に、個室の壁をめちゃくちゃに暴れて蹴飛ばすような、
「ドカン! ドカン! ドカン!」という大音量が立て続けに鳴り始めた。

突然の出来事に死ぬほど怯えながらも、その大音量を合図に手探りで鍵を開け、
「うわぁ~!」と思わず叫びながらトイレの個室を飛び出した。

しかし完全な闇で扉を開けた後も何も見えない。
自分がどちらを向いているのか、出口がどちらにあるのかもわからない。

慌てて携帯電話のボタンを適当に押し、
しばらく待ってから淡い光を前方に向ける。
隣の扉はやはり閉まったままだ。誰の姿も見えない。
しかし、「ドカン! ドカン! ドカン!」という恐ろしい音が鳴り響いている。

携帯を握りしめたまま、うっすらと見える道を必死に走り、
転ばないように最小限の注意を払いながら非常階段を目指す。

ようやく鉄の扉に辿りついてドアのレバーを押し下げるが、
扉が「ガツン! ガツン!」と何かに引っかかって、
押しても引いても全く開かない。

「うわぁ、ドアが開かない! 開かないぃぃぃぃ! 誰か開けてくれ~!」と叫んだが、
ふと見ると「-」のような形のドアロックを90度回して解錠しながら、
レバーを下げなければ開けられないことを思い出し、
転げ出るように非常階段へと飛び出した。

127 :最終退室者(6/6):2009/06/21(日) 02:59:10 ID:Ji+DSlua0

その階段も真っ暗に消灯されている。
元々、動体センサーで動くものを捉えて蛍光灯が点灯するようになっていたので、
気にせず階段の手すりを手探りで探し当て、転げ落ちるように階段を駆け降りた。

自分を追いかけるように背後から点灯していく蛍光灯。
その光に励まされながら階段を降り続け、自分のオフィスがある6階まで辿りつくと、
非常ドアを引き開けた。いつもと変わらない明るい共用部分にほっとする。

8階の開かずの個室だが、これまで変な噂は一度も聞いたことがなかった。
我々の会社の他の人間も時折8階のトイレの個室を使う者がいたようだが、
私のような体験をしたものは1人もいなかった。

この話は会社の誰にも相談できなかった。
だがそれ以降、どんなことがあっても決して最終退室者にならないよう、
気をつけたのは言うまでもない。

出典http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1245407426/

 

  • B!

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