563 :祠7:2011/08/15(月) 00:15:02.97 ID:5GINjljK0
翌日、どんなに言われてもどうしても気になったので
自分で車を出して一人で山に行くことにした。
暗いと危ないし道も分かりにくいので、日が出てる時間に。
念を入れてもう一度ネットで建物の場所を確認してみると、
周辺に結構な数の神社があることに気づいた。
前に行ったときと同じように、トンネルを抜けて車を停め、
山の上の神社へ続く道を歩いていった。
傾斜がゆるいところから獣道に入り、頻繁にGPSで場所を確認しながら祠を探した。
行ったりきたりしながら何度も場所を確認したんだけど、
やっぱり獣道の途中、といってもほぼ突き当たりに近いところなんだけど、
突き当たりより少し下ったところにあるみたいだった。
獣道から外れたところも探してみたんだけど見つからない。
あるはずの場所から外れたところも探してみたけど見つからない。
念のため獣道の突き当たりを突っ切って、山を登りながら探してみたけど
やっぱり建物らしいものは見つからない。
少し登ったら、山の上にある神社についてしまい、ここは確実に登りすぎ。
もう一度山を降りていって見つからなかったら諦めて帰ることにした。
564 :祠8:2011/08/15(月) 00:15:54.04 ID:5GINjljK0
神社側からくだり、獣道まで戻ってきたくらいで、俺の携帯が鳴った。
少し驚いたけど気分を落ち着かせて表示を見ると、Bからの電話だった。
話を聞いてさらに驚いた。Aが死んだという内容だった。
自宅のアパートの自室で倒れているAを同じアパートの住人が発見し
119番通報したのだが、すでに息がなかったらしい。
原因ははっきりとしてはいないが、状況から心臓発作だろうと言われている。
ただ、不思議な点がひとつあって、死ぬ直前に書いていたと思われる
A直筆の手紙のようなものが落ちていたらしい。
Bのところに警察が来たときに見せてもらったそうで、
確かに文字と言われるとそう見えなくもない特徴のある形が書連ねられていたみたいだが、
まったく読めなかったらしい。
唯一「怨」「呪イ」と書かれているように見えた部分があったそうだ。
とにかく警察の聴取もあるだろうし、さっさと下山することにした。
~~
565 :祠9:2011/08/15(月) 00:16:24.22 ID:5GINjljK0
Aの死と例の祠との関係が気になり、Bと一緒に山の上の神社へ向かった。
警察の聴取のときに俺も手紙を見たが、
「怨」「呪イ」と読めそうなところ以外は、全部何が書いてあるのかわからなかった。
祠のことについては、説明しても信用してもらえそもなかったので黙っておいた。
事務所らしいところから神主さんを呼んだ。
奥から返事が聞こえ、神主さんが姿を現し、何か御用ですかと言った。
Bが話があることを切り出したのとほぼ同時くらいに
神主さんの表情が厳しくなり、強い口調で中に入るよう促した。
居間に案内され、俺達が腰を降ろしたのを見て神主さんも腰を降ろして口を開いた。
神主「だいたいの予想はつきますが…、いったい何のお話でしょう?」
B「…実は、こちらの神社の近くにある祠についてお聞きしたいことがありまして…」
神主「やはりそうですか。それで…見てしまったのですね?」
俺「…はい」
B「私達の友人が、その祠を見て4日後亡くなりました」
神主「…」
神主「…わかりました」
神主「本来は無闇に話してはいけないことなのですが、
無関係ではないようですし…お応えできる範囲でお話しましょう」
B&俺「ありがとうございます」
俺「では直球に聞きますが、あの祠がある場所は何があったんですか?」
そう聞くと神主さんは少しずつ話始めた。
577 :祠10:2011/08/15(月) 00:51:04.53 ID:5GINjljK0
獣道の途中の傾斜が他と違っている場所は集落の跡らしく、
祠が建っている場所は、外から土地を買い付けてやってきた地主の家があった場所だそうだ。
この地主の男がなぜ辺鄙な集落にやってきたのかはわからないらしいが、とにかく悪い男だった。
当時、その集落に入るための道は一本しか通ってなかったらしく、
男は自分がお金で雇った信頼の置ける人物を門番としてその入り口に配置。
集落の人間が外に出るのを防いでいたらしい。
それから、お金と権力を振りかざして、若い女性を囲ったり、厳しい強制労働をさせたりしていたらしい。
どういった形かはわからないが、外から人を招いて集落に住まわせることもしていたらしい。
ヤバいのが、その男が気に入らなかったり機嫌が悪かったりすると
相手を殺して、深く掘った穴に捨てていたそうだ。
二年近く経ったある日、外から招いた人物が先だって、
男の殺害計画が企てられ、実行された。
お金や権力があったところで、数に勝るものはなく、
今まで何に怯えていたのかわからないくらいあっさりと計画は成功した。
男に捕われていた人々を助けに館内を見回っていると、
男が現れて間もない頃に捕われた女性が、赤ん坊をかかえている状態で見つかった。
そこを目撃した集落の人は、赤ん坊の意味を理解し、
泣き喚いて暴れる女性を振り切って赤ん坊を取り上げ、
男が死体処理をしていた穴に生きたまま捨てた。
錯乱状態の女性に無理矢理言い聞かせ、強引に引っ張って館から離れた。
その夜、軟禁していたつもりの小屋から女性の姿が消えた。
館のほうへ行ったと考え向かってみると、
放心状態でフラフラと歩いている女性を発見。
声をかけても反応がなく、止めようと走り寄ったら、
女性は穴に落ちていったらしい。
それから四日後、集落は謎の大火災に見舞われ消滅した。
579 :祠END:2011/08/15(月) 00:59:35.54 ID:5GINjljK0
その後、集落跡で大量の霊を見たり、その女性と思われる霊を見たりと
色々と問題が多かったらしい。
特に女性の霊を見たと言っていた人は必ず死んでしまったそうだ。
そのままではまずいと、穴の上に祠を、それを管理する神社を建てたのだが、
霊の力が強すぎたのか、それでも女性の霊を見る者が絶えず現れ、
そのたびに死んでいったらしい。その神社の神主も。
そこで、祠周辺を中心とし、集落を含めて全体を囲う形で神社を複数建て、
祠に辿り着けなくなるような封印を施したそうだ。
だから普通は絶対に祠に辿り着くことは有り得ないらしいのだが、
ごくごくまれに、どういう訳か祠に辿り着いてしまう人がいるということだった。
また補足ですが、トンネルの霊については、見張りがいない
集落から逃げられる道が出来たことにより、地主から逃げようとする霊や
火事から逃げようとする霊が現れている(霊道になってしまった)ということらしい。
俺「…見てしまった人は死ぬしかないんですか?」
神主「祠だけしか見てないのなら、助かることもあるみたいですが、
女性の霊を見てしまったらどうしようもないです。残念ですが…」
悲しそうな顔をして神主が俺を見た。
実はAが死んだ日、Bの連絡を受け獣道を帰るとき、俺も見てしまっていた。
祠と女性の霊を。
神主はきっとそれら全てをわかっていたのだろう。