941 :すすり泣く声10:2011/08/18(木) 00:27:05.84 ID:uaEUglcs0
父も引っ越してからは少し穏やかになり、母に言葉を濁しつつも謝っていた。今思えば、父もあの家に住んでいる間は特に、暴君ぶりに拍車がかかってたかもしれない。
兄と当時のことを話してみたら、思い出したくないとか言いながらも話し始めた。
「あの頃、俺がいつも図書館に行くようになったのは、部屋で勉強してたら、誰かのすすり泣く声が聞こえるようになったんだよ、昼だろうと夜だろうと。
おまえが観てるTVの声だと思ってたけど違うことに気づいて家に居たくなかった」
なんてことを言い出した。
942 :すすり泣く声11:2011/08/18(木) 01:18:29.58 ID:uaEUglcs0
俺もそのすすり泣く声は実は聞いていた。だけど俺は、いじめられていることが悔しくて兄がすすり泣いているもんだとばかり思い込んでいた。
兄もプライドがあるだろうからと、何も突っ込まずに居ようと思って黙っていたんだ。
何年も経ってから、その家に住んでた頃の友人と会おうという話になって集まった時、その町に来るのも久しぶりで懐かしいと思いながら、家の辺りにも行ってみた。
友人の一人が、「おまえの住んでた家って、何か妙に空気が重いって言うか変な雰囲気だったよな」とぼそっと口にした。
943 :すすり泣く声12:2011/08/18(木) 01:20:49.63 ID:uaEUglcs0
今はもう、家は取り壊されて小さいマンションが建っていた。
あの家では一体何があったんだろうか、あのマンションの住人にも、あの足音やすすり泣く声は聞こえているのだろうか。