『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

【新作洒落怖】廃墟の社員寮

投稿日:2021年8月3日 更新日:

750 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:34:49.02 ID:Rl0SwcMv0

警備服姿の男が、カウンターの机に、
こちらに背を向けて座っている。
何か書き物をしているように書類を机上に広げ両手を机に出していたが、ぴくりとも動かない。

俺たちは完全に固まっていた。
あそこにいる男は現実に存在しているのだろうか。

「訓練だよ」

男が俺たちに背を向けたまま、
はっきりそう言った。
俺とA男はビクっと身体を震わせた。
その瞬間、
けたたましい火災の非常ベルの音が建物に響いた。

男は微動だにせず机に座って居た。

俺たちは半泣きになりながら、
男が振り向かない事を祈りながら転がる様に食堂を飛び出し、非常口に向かって走った。

A男が震える手で非常口の内鍵を開けようとして、懐中電灯を取り落とした。
手が震えてものすら上手くつかめない。
俺は声を殺して早くしろよ!とA男を急き立てた。
A男は俺の声など耳に入らない様だった。
顔面蒼白のまま、内鍵と懐中電灯と格闘していた。
ジリリリリとけたたましい非常ベルが鳴る中で、視線を感じて後ろを振り返ると、
背を向けて座っていた男が、
こちらを肩越しに振り返り俺たちを見ていた。

751 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:41:16.22 ID:Rl0SwcMv0

その男の顔は土気色に膨れ、
目ん玉がなかった。
目ん玉は黒い窪みで空洞だった。
口から何かが垂れてるのか泡をふいているのか、だらりと垂れ下がった口角からは液体がしたたっていた。
黒い空洞が俺たちを見ていた。
口角がゆっくりパクパクと動いた。
非常ベルの音で何を言っているのか、聞こえなかった。

A男がやっと非常口を開け、俺たちは外に転がり出た。
うわあああああああ!とAが叫び駆け出した。その勢いで
非常口にあった有刺鉄線に引っかかり転んだが、A男は狂ったように叫びながらもがいて立ち上がり、また走り出した。
非常ベルはまだ鳴っていた。
俺も死にそうになりながらA男の後を追った。

非常ベルがいつしか遠くなり、
俺たちは全速力で走り、
俺の家の近くのコンビニの駐車場まで辿り着いた。
A男はコンビニの明るい光を見て、
コンビニの駐車場に倒れる様に座り込んだ。
俺もそれに続いた。
しばらく2人息を整えていると、A男がいてえ!と言い足を押さえた。
足には縦にぎざっと切り傷が入っており、
血がかなり流れている。
俺「おいおい、大丈夫かよ!」
A男「…いてえ~…」
俺「転んだ時じゃね?俺絆創膏買ってくる」
A男「わりい…」
俺「ちょっと待ってろ」
家に帰ってからでもよかったが、
血が半端なく出ていたためにすぐ手当てをしたほうがいいと思った。

752 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:45:17.49 ID:Rl0SwcMv0

俺はコンビニに入り、
絆創膏と消毒液と包帯を取り、喉がカラカラなのにも気づき、俺とA男文のジュースを買った。
レジで会計をしている時A男が気になり駐車場に目をやると、
座っているA男の隣に女の人が立っていた。
A男の顔を覗き込む様にして立っている。
髪が長くて顔が見えない。
(A男の奴め、お姉さんに心配されて話かけられてるんだな)
俺は急いで会計を済ませ、店の外に出た。

俺「あれ?」
そこにはA男しかいなかった。
俺「お姉さんは?」
A男「…は?」
俺「さっき、お姉さんに話しかけられてただろ、白い服着た」
A男「は?やめろよお前、何言っちゃってんの?」
A男は挙動不審になり、またガクガク震え始めた。
俺の背中にも冷たいものが走った。

お姉さんなんて居なかった。

753 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:48:15.69 ID:Rl0SwcMv0

俺は何も言わず、A男にジュースを渡した。
A男はそれを受け取り、一気に半分ぐらいまで飲んだ。
俺はA男の足に消毒液をかけて、
レジでついでに貰ったおしぼりで傷周りの血を拭いてやった。
A男「…さっき」
ずっと真っ白な顔で押し黙っていたA男が呟いた。
俺「え?」
A男「さっき、お前が見た女って、髪長いやつか」
俺「…うん」
A男「あのさ、俺たちが非常口から逃げ出して貯水槽の横走ってる時」
俺見たんだ、とA男がかすれた声で言った。

白い服着た女が、俺たちの方を貯水槽の中に立っていてずっと見てた。
女はドス黒い肌の色で、肌がシワシワで、黒くて長いスカスカの髪だった。
眼球がある場所には黒い穴があいていて、
その穴が俺たちの事をずっと見ていたんだ。

A男はぶるぶる震えて、腕に顔をうずめた。

A男のとなりに居たのはきっとその女だった。俺は嫌な汗が背中に伝うのを感じた。
俺たちは連れて来てしまったんだろうか。

754 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:50:40.11 ID:Rl0SwcMv0

俺は何も言えなかった。
A男は女を見たし、俺は男を見たのだ。
そして女も、男も、俺たちを見ていたのだ。

俺はA男の傷の手当てを済ませて、
A男を立ち上がらせた。
家に帰って、何もかも忘れて寝たかった。
A男に、俺の家で塩をまこうと言った。
A男は頷きながらぐしゃぐしゃに泣いていた。

それから、俺の家に着いて、
俺たちはめちゃくちゃに塩をかけた。
ルールとか、そういうのはよく分からなかったので、とにかく大量の塩をかけた。
小皿に塩を持って、俺の部屋の入り口と窓にも置いた。
明かりをつけたまま、俺たちは布団に入った。
あの夜、俺たちは何も喋らなかった。
A男が時々鼻をすする音だけが部屋に響いていた。

755 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:53:01.44 ID:Rl0SwcMv0

あれから月日が経ち、
俺は何事もなく生きている。
A男とはあれ以来、何となく疎遠になってしまった。
というより、A男がおれを避けていた。
あんな経験をさせてしまったと言う事に対して、申し訳ないと思っていたのか、
また女が見えたとか言われるのが嫌なのか、
俺を見ると思い出すのが嫌なのか、
分からない。
今はA男が何処にいるのか、生きているのかも分からない。

あの影響と言うか、
弊害と言うか、俺は訓練という言葉と警備服には未だに恐怖を感じる。
その単語が耳に入ったり警備服の男を見ると、
あの男の顔と声が頭に浮かんでくる。
あの後は数年悪夢にあの男が出てきたけど、
最近はようやく見なくなった。

756 :本当にあった怖い名無し:2016/07/11(月) 00:54:17.73 ID:Rl0SwcMv0

高校卒業後大学で地元を離れ、
就職し、今は夏休みで本当に久しぶりに地元に里帰りしている。

あの廃墟は区画整理で更地になっていた。
あの日、A男と探検し、
信じられない物を見た場所はもう無い。
更地になった場所を見て、
何かに残して置きたいと思ってここに書いてみた。

出典http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/occult/1467617840/

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