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怪談夜行列車

【新作洒落怖】般若面

投稿日:2022年8月23日 更新日:

本文

904 :1:2013/10/30(水) 08:53:44.31 ID:4PrXcmLsi

過去から現在まで続く、因果か何かの話。
長いし読みづらいです。
ふと思い出して混乱もしてるので、整理のために書かせてください。

私が小学生一年生の夏、北海道の大パパ大ママから連絡があった。
「夏休みを利用して10日ほどこちらへ遊びに来ないか。お兄ちゃんと私ちゃんだけで。」

大パパ大ママは私の種父の親で血の繋がった祖父母だったが、それまで北海道旅行に何度も行ったことはあっても実際会うのは初めてだった。
種父とは私が二歳の頃に離婚したらしい。
そんな手紙とチケットが届いたので、母は一回くらいはと私と、小学四年生の兄を二人きりで飛行機に乗せ、北海道札幌市へ送った。

905 :2:2013/10/30(水) 08:54:36.25 ID:4PrXcmLsi

大パパ大ママはとても優しい人だった。母方の祖父母より若く、洋風な暮らしをしていた。
大パパの書斎にはマトリョシカとビー玉、大きなエレクトーンがあり、お茶の時間にはコーヒーを豆から挽いたり、紅茶にはハート型の砂糖を入れたりと、何もかもキラキラして見えた。
大パパ大ママも「ずっとここにいてもいいんだよ」なんて言っていて、私は物珍しさからはしゃいでいた。
ただ一つ気になっていたのが、玄関にかかっていた二つのお面。
おかめと般若。
洋風な家になぜそんなものがかかってたのかもわからないし、とにかく家を出入りする度、般若の面が気になり、私達がいる間だけでも外してくれと懇願するも「この辺りのしきたりだから」と聞き入れては貰えなかった。

906 :3:2013/10/30(水) 08:55:26.25 ID:4PrXcmLsi

明日の飛行機で東京へ帰るという日。その日も大パパ、兄、私の三人でお風呂に入っていた。
私が先にあがり、大ママに頭と体を拭いてもらうのがこのお泊り期間の慣習になっていた。
なのでその日も大ママを呼んだが、なぜか一向に現れない。
不思議になった私は濡れた体もそのまま、なぜか書斎へ探しに行った。

ドアを開けると、女性が立っていた。
大ママはショートヘアなのに対しその人は背中に届くロングヘア。夏なのに薄緑のカーディガンを羽織って、ふくらはぎ丈のスカートを履いていたのを覚えている。
しばらく呆然とそれを眺めていると、女性が振り返った。
その顔には玄関にあった般若の面がつけられていた。
ほんの一瞬、般若面の女と見つめあっていたが、次の瞬間それは機械的な動きで大股に私に迫ってきた。
そこで記憶は途切れ、次に目を覚ました時私は布団に寝ていて、大ママに「寝ぼせたのよ」とだけ言われた。

907 :4:2013/10/30(水) 08:56:16.61 ID:4PrXcmLsi

翌朝は何事もなかったかのように帰り支度をし、お土産を持たせてもらい、最後の観光をして夜、再び兄と二人きりで飛行機に乗った。
搭乗前に「また来年おいで、今度はスキーをしよう」と言われたので兄にそのことを言うと
「もう行くのはやめよう」と言われた。

最後にあの家を出た時、般若の面だけ外されていた。
それを見てから飛行機で話しかけるまで兄は一言も言葉を発していなかった。

908 :5:2013/10/30(水) 08:57:59.57 ID:4PrXcmLsi

次にあれが身の周りに現れたのは、兄が中学に上がってしばらくした頃。
その当時私はピアノを習っていたが、母子家庭でお金がないため家にキーボードのひとつも置けなかった。
それを知った大パパ大ママが書斎にあったエレクトーンを突然送ってきたのだ。ご縁がありますように、という手紙とともに。
私は背が低かったので下の段のみを使ってピアノの練習をしていたが、私が五年生、兄が中学二年生のとき突然音が出なくなった。
何をどうしても音が鳴らないので業者に引き取ってもらうことになったが、その引き取りに来る三十分ほど前に突然、今度は鳴るようになった。

909 :6:2013/10/30(水) 08:59:05.60 ID:4PrXcmLsi

何が何だかと思いながらも引き取りのキャンセルは無理だったので、最後に使ってなかった上段で一曲弾こうと蓋を開けると、
鍵盤の間に長い髪が挟まっていた。
大ママはエレクトーンを送ってくれた当時もショートヘアで、母はずっと茶髪で、私も長さはあったがここまでではない。
ズルズルと伸びてくる長い髪を全て出し切ってゴミ箱に捨てた頃、業者がやってきた。
兄はその夜高熱を出した。

その日から兄はしきりに「幽霊が見える」と言うようになった。
夜寝ていると長い髪の女が覆いかぶさってくる。
顔を洗っていると横から覗いてくる。
金縛りやラップ音も兄の部屋では日常茶飯事のように起きるという。
母は、思春期にありがちなものと捉えていた。

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