池袋の飲食店で働く霊感少女ナミさんから聞いたお話です。
たくさん聞かせていただいたお話のひとつなので、今後数話にわけて投稿します。
それではどうぞ。
当時付き合っていた彼氏とラブホテルに入ったら、部屋に入った途端、部屋の中からパキッというラップ音が聞こえた。
パキッ、パキッと続けざまに鳴っている。
氷の入ったグラスに水を注いだ時のようなパキッという音だったという。
かつて実家や心霊スポットで感じたような嫌な雰囲気は、その部屋では何も感じなかった。
ただ部屋の中では繰り返しラップ音が鳴っている。
彼氏にはどうも聞こえていないようだ。
説明するのも面倒だし、よくあることなのでそのまま部屋を使うことにした。
彼氏と一緒にお風呂に入って、向かい合わせでイチャイチャしていたら、部屋のベッドの上に置いてあるスマホがアラームを鳴らした。
彼氏との待ち合わせ時間に合わせてセットしていたアラームだった。
予定より前倒しで合流したため、タイミング悪くお風呂に入っている時に鳴ってしまったという。
「ああ止めるの忘れてた。裸だし濡れてるし止めに行くのダルいな」
曇りガラスのドアを見て考える。
するとアラームが止まった。
彼氏が「あれ?」と言った。
二人とも一緒に風呂場にいるわけで、自動で止まるような機能はない。
その瞬間ゾッとしたという。
……部屋の中にいる誰かがアラームを止めたというのか?
彼氏はラップ音は聞こえていない様子だったが、アラームはしっかり聞こえていた。
そしてナミさんだけは見てしまった。
曇りガラスの向こうから、誰かが歩いて来て曇りガラスの向こう側に立ったのだ。
真っ黒な人型の影。
名探偵コ〇ンの悪役から目と鼻と口を取り除いたような、真っ黒なのっぺらぼう。
それが曇りガラスの向こう側でじんわりとにじんでいる。
目が合っている、と思ったそうだ。
その瞬間、ナミさんは顔をしかめてムムという表情をした。
怖いというより焦っていたという。
「見えちゃいけないものが見えちゃった。気まずい」
そう思ったという。
ドアを見て顔をしかめたナミさんの様子に彼氏は「どうした?」と声をかけた。
その彼氏に「うん。後で説明するね」と答えてしばらくドアの向こうの影を見ていた。
だんだん怖くなってきた。
ふいに黒い影がスーッと薄れて消えた。
影が現れていたのは時間にして数秒だったという。
現れた時は部屋の奥から歩いてきたのに、消えるときはスーッと消えるんかい、と心の中でツッコミを入れた。
「さっき黒い影が見えたんだよね…」
風呂場から出てベッドの上、彼氏に説明する。
彼氏はピンと来ていない様子で「ああ、そうなの?」と答えた。
そんなことでは彼氏の性欲は抑まることなく、結局そのままコトに及んだという。
色々あってからベッドに並んで寝ている時。
ふいにパキッとラップ音がして目を覚ました。
彼氏は横で寝息を立てている。
パキッ、パキッ、パキッとベッドの周りを取り囲むようにラップ音が続く。
うわ…歩き回ってる…と恐ろしくなって目を閉じる。
パキッ、パキッとラップ音は鳴りやまない。
寝れないのでテレビをつけてテレビショッピングを見て恐怖をやり過ごすことにする。
「テレビ消さないでね」と思いながらひたすらテレビを見ていた。
今回のヤツにはアラームを消した前科がある。
もしこれでテレビを消されたら、ギャーと叫んで部屋を飛び出す覚悟をしていたという。
結局怖くて眠れなくて、彼氏を起こして帰ることにしたそうだ。
翌日、有名な事故物件検索サイトで調べたところ、そのホテルに事故物件マークはついていなかったという。
「いま住んでいるマンションはマークついてるんですけどね笑」
そう言って笑うナミさんのお話はまだまだ続きます。