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0370本当にあった怖い名無し垢版2020/06/05(金) 15:29:10.84ID:OoJ3UOaj0
今年の二月、まだ全然自粛ムードじゃなかった頃の話。
旅好きの友人Kが一人行方不明になった。
そいつとは大学が一緒で仲のいい友達三人でよくつるんでた。行方不明だって知ったのはソイツの親から連絡が入ったからで、
「いつも通り旅に出たんだが帰ってこない、そちらに行っていないか?」
と聞かれたけど、うちは社宅なので当然来てるはずもなくて、
「こっちには来てないです」とだけ伝えて電話を切った。
もう一人の友人Fと飲む約束をしてたもんでKの親から電話が来たことを話すと、どうやらFにも電話が掛かって来ていたらしく二人で不思議だなぁなんて話ながらその日は解散した。
それから一週間たってまたFと飲みに行ったときにFがこんなことを言った。
「アイツはあしきりえんを探しに行くって言ってたよ」
KとのLINE画面を見せられた。
「どこだよ」と聞いては見たものの
Fが場所を知ってるはずもなく、シンプルに知らんと言われた。
「変な名前だな」というと
「足に添え木を当ててる人が多かったからこんな名前らしい」
それで脚木里か。
「あしきはわかったけども、えんはどういう意味なんだよ」
答えを期待したけども、またシンプルに知らんと言われた。
「理由がわからんが足の不自由な人が多かったのかもな」
「だとすると鉱毒でもあったのかねえ」
その後はくだらないマスクの話をしてから家に帰った。
Kの親から見つかったという知らせがないまま、気づけば三か月程してFから連絡があった。
「Kを探しに行かないか?」と。
大学時代のゼミの先生にその話をしたらえらく興味を持っていたみたいで、脚木里ついて調べてくれたらしい。
どうやら群馬県の避暑地にほど近いところにそれらしい土地があるらしく、
「どうせ暇なら二人で探しに行かないか?」
自分は先月辺りから碌に仕事がなかったし、Fは自営業なので時間はいくらでもあった。
男二人で群馬に行くことになった。
五月の避暑地は想像以上に寒くって二人で驚いたのを覚えている。
0371本当にあった怖い名無し垢版2020/06/05(金) 15:30:56.01ID:OoJ3UOaj0
山道を車でうねうねと何キロも上った。教授からもらった地図も分かりにくくて何回か車を止めたが、なんとかそれらしいところについた。
車道の左手にある、いかにも田んぼにでも繋がってそうな道をしばらく行くと、大きな杉の木が一本だけあって、向かいの広葉樹に細いしめ縄のようなものでつながれていた。
しめ縄の上には藁細工の馬?みたいな何かが飾ってあって少し不気味だった。
Fは「気持ち悪ぃな」みたいなことを言ってた気がする。
砂利道をしばらく進むと開けた土地に出て、建物が六軒くらいあった。そのうち二つは崩れかけていて、既に廃墟だったんだと思う。
「こんなところにFがいるわけないよな」
なんて二人で言い合ってたところに家の中から人が出てきてびっくりした。ジャケットを着た六十歳くらい(もっと上かも)の老人で、こちらを見てポカーンとしていた。
「すみません、うるさかったですか?」
そうFが聞くと
「いやそんなことはない、久しぶりに家内以外の人を見て驚いてしまった」
爺さんはそういうと「お茶でも飲んで行きなさい」と僕らを家に招待してくれた。案内された居間であった婆さんも先程の爺さんと似たようなリアクションだった。
行方不明の友人のことを聞いたが、二人とも知らないと言っていた。
それから村についての話を聞いた。
村の名前の由来は昔足が不自由な人が多かったからで、脚に木をそえてる人が多いから脚木里。老夫婦が今も残っているのは村にある神社の整備のため。家の裏の岸壁にはいくつも穴が掘られていて、昔は冷蔵庫の変わりだったこと。
面白い話をいくつも聞いた。気づいたら四時間近く経っていて、外はすっかり暗かった。
「そろそろ帰りますね」といって僕がこたつから出ようとすると
「宿を予約してるのではなければ止まっていかんか?」
爺さんにそう言われた。
もともと車中泊のつもりで寝袋は持ってきていたものの、この寒さだと心配だったので嬉しい誘いだった。
それから婆さんの作ってくれたチャーハンを食べて、客間に布団を敷いて横になった。うるさくするのも悪いので、早々に僕は眠ってしまった。
この時Fは人が来ないはずなのによく干された客用の布団に違和感を感じていたらしい。
0372本当にあった怖い名無し垢版2020/06/05(金) 15:38:38.53ID:OoJ3UOaj0
夜中にFに起こされた。
「今すぐ帰るぞ」
と小声で言われ、水を一口飲まされた。
Fは既にコートも着ていて、本当にすぐ帰るつもりのようだった。
「なんでだよ、帰るのは明日でもいいだろ」
苛立ち混じりにそういうと、Fは
「帰ったら話す、とりあえず帰るぞ」
Fが冗談を言ってるわけではないらしい雰囲気だったので着替える。
それから客間の窓から庭に出た。そこで納屋から出てきた爺さんとばったり会った。鉈を持ってる。
初めて会ったときのようなポカーンとした表情をした後、ジリジリとこちらに近寄ってきた。無言でだ。昼間の愛想よさが嘘みたいだった。
Fに手を引かれて生け垣を二人で貫通して庭から出て、自分たちの車まで走った。追いかけてくる足音は聞こえたけど、振り向く余裕なんてなかった。
その後軽井沢のコンビニまでいってようやく安心できた。
「俺たちなんかまずいことしたのか?」
恐怖でここまで逃げてきたものの、未だに状況が理解できてない自分はFに説明を求めた。
Fは俺が寝た後家の中をフラフラしていたらしい。昼間に婆さんが台所の下に入っていくのを見たのが気になって、Fは台所に行った。台所の下には通路があったらしく、家の下を通って裏の崖に繋がっていたようだ。
崖にに三つほど穴があって、右二つはすぐ行き止まりだった。一番左は入り口にしめ縄のような物があってやはり上には藁細工の何かがあったという。少し入ると異臭に気づき、スマホで周囲を照らした。
先には動物の死体が山積みになっていたらしい。そのどれもが下半身がなくて、骨と皮だけのような状態だった。詳しく見てはいないが人の物もあったかもしれないと言っていた。
それから俺を起こしてすぐに家を出て今に至る。初めは信用していなかったがFがいやに真剣なので信じることにした。
ここまでが先週の話だ。
ここからは自分の想像だけど、あそこは生き物の足を切って何か儀式をしていたんじゃないかなんて思った。村の入り口のしめ縄も不思議だし、Fが見た洞窟?の中の死体の山も気味が悪い。
俺は鉈を持って追いかけられたくらいしか実害がなかったけど、あのまま寝てたらどうなったのかは想像したくない。
教授にその話をしたら今週末にそこに行ってみると言ってた。
Kはまだ見つかっていない。