552 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:49:09.83 ID:cY098STr0
おっさんはおびえた顔で俺を見上げている。
「なにしてくれてんだよ」
「はやく!はやく!」
会話になってない。おっさんは早く早くと言うだけだ。
頭にきていた俺は「うるせーな!」っておっさんを掴みあげようとした。
「だああめえええ!」
おっさんは大声でそういって俺の手から逃げて立ち上がり、また走りだした。
国道の方におっさんは走って行き、俺は追っかけた。
濃霧で工事用の照明もぼんやりして足元がおぼつかない。
こんな山の中で狂人と追いかけっこしても仕方ないので俺はあきらめた。
とにかく異様な状況でおっかないし。
国道の方でおっさんがまだわめいている。
「わあああ!!くるなああ!!」とか聞こえた。
554 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:50:04.32 ID:cY098STr0
何から逃げてるんだあのおっさんは?
シャブ中かなにかか?
そんなことを考えているとひと際でかい声で「とーきのぼおおおおおおおお!!!」って聞こえた。
その瞬間、どしーん!!と地響きがした。
次に車の急ブレーキ音がした。
鳥肌が立ち、嫌な予感しかしなかった。
恐る恐る国道の方に向かう。
すると車のヘッドライトが近づいてきた。
同僚の車だった。急ブレーキをかけたのは同僚だった。
556 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 01:12:57.19 ID:cY098STr0
俺は同僚の顔を見て安堵した。
「さっきのどしーんって音、なんだったんだ?」
俺が同僚に聞くと、すぐそこの国道に落石があったという。しかもかなりでかい岩が落ちてきたらしい。
「あぶなかったのか?」と聞くと、
霧で落ちてきた岩が見えなくてぶつかりそうになっただけと笑っていた。
それで、背広着たおっさん見なかった?と聞いたが見てないようだった。
そういえば、おっさんの奇声がピタリと止んでいる。
まさか落石に潰されてないだろうなと思い、見に行った。
幸いにも潰された痕跡はなかった。
また落石があるとも限らないので早々に事務所に戻ろうとした。
その時、同僚が「あの霧なに?」って聞くので指差す方を見ると
何かでかい人のような形をした霧がゆっくり歩くように闇の向こうに移動していく。
「とにかく早く事務所に行こう」
すっかり怖くなった俺は同僚を急かして事務所に戻り、眠れない夜を過ごした。