怪談・洒落怖

【新作洒落怖】『とーきのぼー』

投稿日:2022年4月16日 更新日:

本文

545 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:39:08.46 ID:cY098STr0

埼玉県西部にある国道の整備で、道沿いの山の中に管理事務所立てて夜間も作業してた。
夜勤以外の大半の者は家に帰ったり、近くの町のビジホとかに泊まった。
俺は元請の責任者とこの事務所に寝泊りしてた。

夜勤のある平日は夜中も誰かしら事務所にいて何事もなかった。
それでも作業が休みの日もあるわけで、一日中誰もいない。
責任者も帰っちゃって、俺だけが残った。

国道って言っても山の中を通ってるから、交通量は多くない。
夜はたまに走り屋みたいなのとトラックがまばらに走ってるだけ。
ひとり残されるとけっこう怖い。

546 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:39:40.88 ID:cY098STr0

昼間、近くのコンビニに行って、食料とか酒とか雑誌なんかを買出しして夜に備える。
管理事務所はよくあるプレハブの二階建て。
一階が休憩所で二階が会議室兼仮眠室になってる。
その日は夕方まで作業場を見回ったり、国道を見張ってる警備員のおっさんとこいって雑談してた。
そん時、休日夜間の警備はつかないって聞いて、完全に俺だけかよってちょっとビビッたw

夕方六時頃、警備のおっさんがハンコもらいにきて、ビビッてた俺はまた雑談しようとしたが、
おっさんは「いや、早く帰りたい」と言ってそそくさと帰っちゃった。
帰りぎわ、「夜は早く寝なさいね」なんてお母さん的なことも言ってたw
でもなんか表情がやけに硬く、いつものやんわりとした空気じゃなかったのでよく覚えてる。

547 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:40:22.19 ID:cY098STr0

日も暮れて辺りはすっかり暗くなって、一階の休憩所で買っておいたメシを食う。
それから雑誌をペラペラめくりながら缶ビールを飲む。
半分くらい飲んだとき、外で音がした。
鉄でできた機材の上に小石が降ったような、カンカンカンて音。
それほど大きな音でもないがはっきり聞こえた。
俺はその音を無視した。

しばらくしてまた同じ音がした。
さすがに無視できなくなり、見に行くことにした。
何かあったら俺の責任になる。
ライトを持ち、事務所を出て音のする方に歩いていくと重機と機材が積んである空き地がある。
誰かがいたずらで小石でもばら撒いたのかと思ったが誰もいない。
その辺を一回りしたが変わったところは無かったので戻ろうとした。

548 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:40:53.31 ID:cY098STr0

そのときガサガサっ!てヤブを掻き分けるような音がしたんで、びっくりして振り返った。
人がいた。
スーツっていうか背広をきたおっさん。
背が高く、180くらいは余裕でありそう。
顔をチラッとみたが、目が大きいくらいしか特徴の無い普通のおっさん。
こいつの仕業だと思った。

「だれ!?」って俺が聞くと無視してまたガサガサと草木を掻き分けて山の方に入っていく。
俺はおっさんを追った。
「おいおい待てよ!」
するとおっさんはヤブの中で立ち止まり、向こうを向いたままぶつぶつしゃべってる。
「え?なに? こっち向きなよ」
頭のおかしいおっさんが入り込んだと思った俺は、嫌になりながらも近づいていった。

よく聞き取れなかったんだが、おっさんは
たぶん「とーきのぼー とーきのぼー」って繰り返しつぶやいていた。

「え?何いってんの?」
俺はおっさんの頭をライトで照らした。
そのとたん、おっさんはものすごい勢いで山の中に入っていっちゃった。

549 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:43:45.67 ID:cY098STr0

気味が悪かったのでそれ以上追う事はせず事務所に戻った。
しかし、外にあんな気色悪いおっさんがいるので眠れなくなった。
それから何かあったら嫌なので、責任者に電話をかけ、先ほどの出来事を伝えた。
「うん、まあ変人だろうな。たぶん何もないだろうから大丈夫だよ」
とか人ごとのように言われて終わった。

俺は例の『とーきのぼー』がやけに気持ち悪く耳に残り、怖かった。
で、仲のいい同僚に「おい、なんか変なのいるから来てくれよ」って電話した。
最初はねみーとかめんどくせーとか言って断ってた同僚だが、俺がしつこく頼み込んだので
空気を察してくれたのか来てくれることになった。

550 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:45:13.14 ID:cY098STr0

人を待つってのはやけに時間が長く感じる。
30分くらい経ったと思って時計を見るとまだ5分しか経ってなかったり。
時間は夜9時を回った。
そろそろ同僚がくるはずだった。
でも来ない。
ぜんぜん来ないから電話した。
留守電になる。しばらくしてまた掛けるが留守電。
変な妄想が頭をよぎる。

もしかしてここにくる途中事故った?
やばい気持ちがそわそわして落ち着かない。
そんな感じで一階の休憩所でタバコをふかしていたら、
外で「ぎゃーーー!!」とか「わあああ!!」とか奇声が聞こえた。
実際、びびりまくりの俺だが、外に飛び出る。
すると、またもあのおっさんが奇声をあげて走り回っていた。
ついでに、いつの間にか濃い霧が出ていた。

551 :本当にあった怖い名無し:2013/01/30(水) 00:47:48.36 ID:cY098STr0

こりゃ警察に通報だと思い携帯を取り出すと、おっさんがわめきながらが突っ込んできた。
「たーすーけーてえええ!!」
助けてもらいたいのは俺の方なのだが、おっさんの青白い鬼気迫る顔に動揺した俺は携帯を落としてしまった。
次の瞬間、突っ込んできたおっさんは俺の携帯を踏んづけた。
バキっと携帯が折れた音がした。
俺の頭の中でも何かがプチっと切れた音がした。

「てめえ!」とか怒鳴っておっさんの腕を引っ張った。
おっさんはそのままの勢いで倒れこみ、俺は携帯を拾い上げた。
完全に折れていて、液晶画面も割れていた。

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