『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

【新作洒落怖】子供

投稿日:2023年8月25日 更新日:

922 :子供8:2012/07/10(火) 01:43:48.67 ID:COnTfSmE0

中に入ると部屋中カビ臭いというか木の腐ったような匂いが凄い。
「うぉー」とか「すげぇ」とか言いながら進んでった。
部屋は畳が敷いてあってタンスや古い型のラジオがそのまま置いてある。
壁には掛け軸が掛けてあるし、開きっぱなしの押入れの中に布団があるしで、どうにも気に入らない。

部屋を抜けると廊下に出て左がさっきの玄関、正面が脱衣所とトイレのようで右に階段と奥に扉が1つあった。
廊下には布切れやビニール袋なんかのゴミが落ちてた。
ゴミの1つに俺達が小学生くらいの時に潰れた店の買い物袋があって、この家自体10年以上はそのままかも知れないとチラっと考えた。
廊下に出た途端、なんか空気が淀んでるような感じで気持ち悪さが増してく。

脱衣所を覗くと洗面台があり、床が所々抜け落ちてて風呂場には行けそうに無かった。

玄関を調べてたUが俺とTのとこにやって来て「これTのじゃね?」って手に持ったモノを見せてきたのね。
銀色で表面に炎のエンブレムが刻印されたジッポ・ライター。
間違いなくさっきの休憩所みたいなトコでTが探してた物。
Uが言うには玄関の下駄箱の上に置いてあったらしい。

923 :子供9:2012/07/10(火) 01:44:35.63 ID:COnTfSmE0

完全に担がれたと思ったんだろうTが「お前さ、そういうのやめてくんない?マジで」と半ギレ。
そのジッポ・ライターはTと仲の良い年上の従兄弟から譲って貰った物とかでTのお気に入りなのはみんな知ってる。
人の良いUがそんな他人の大事な物でわざわざこんな悪ふざけするとも思えなかった。
でも急にUが「ゴメンゴメン」って言いながらあっさりと自分が犯人だって白状したのね。

俺もTもUの不自然な態度に「あれ?」って思ったけど取り敢えずその場は気を取り直して、トイレを調べようとしてた時、頭の上で“ミシ”と音がした。
その瞬間3人とも固まって、誰も声を出さない。

急に冷静になってジットしたまま耳に意識を集中して天井の気配を探った。
音の感じから2階からしたのだろうという事は判った。
音はその1回きりで他に音はしなかった。
お互いに顔を見合わせて何故か小声で「聞こえた?」「人?」「動物?」と確認し合い緊張感が一気に増して来た。

それ以上は何も起こらなかったんで、警戒しながら扉の奥を調べる事にした。
扉のノブを回して手前に引くとそこは恐らくダイニングキッチンと居間を合わせたような広い部屋だった。
ダイニングテーブルがあり、食器棚の中の食器もそのまま。
その奥のキッチンの床はあり得ない位ゴミ袋や紙くずが散乱してて近づきたくもなかった。

924 :子供10:2012/07/10(火) 01:45:42.43 ID:COnTfSmE0

居間のテレビ台の上に凄く古い型のテレビが置いてあって、手前にソファーとテーブルがある。
壁にカレンダーとその横に何か貼ってあるんで良く見ると小さな子供が描いたらしい親子の絵。
クレヨンでニコニコ顔の大きな人2人の間に小さい人が描いてある。

カレンダーの日付は1997年5月。

うわっ15年前じゃん。すげぇ古いなぁとか思いながら、本当になんの気なしにカレンダー捲ったらもうビックリ。
捲ったカレンダーの真裏にさっきと同じ子供が描いたらしい人の絵が描いてあんの。
何がビックリかってその絵の目の部分だけ真っ黒に塗りつぶしてあんのね。
ちょうど穴がポッカリ空いたみたいな感じで。

絵を見た瞬間、呪怨の真っ白い子供を思い出して全身に鳥肌が立った。
持ってたカレンダーをパッと離してどうしてか服で手を拭った。
もう、マジで気持ち悪い。
頭の中のイメージも恐すぎてなんとか別の事を考えようと、ここに来る前にDVDで観たエアロスミスの“I Don't Want To Miss A Thing”のサビ部分を必死に頭の中で繰り返した。
流石にTとUも気持ち悪がってカレンダーをもう1度触ろうとかしなかった。
このカレンダーで俺は完全に此処に来た事を後悔してしまって、1番元気な筈のTも冗談すら言わないの。

925 :子供11:2012/07/10(火) 02:08:04.00 ID:COnTfSmE0

もう半ば意地で1階部分を見終わって、2階に上がる階段の前に立った。
急な勾配で小さな踊り場がある。
階段の途中の壁にちょうど拳位の穴が開いてた。何かで壁を叩き壊したような感じ。

気のせいか、2階から誰かに視られている気がしてしょうがなかった。
狭いのでTが先頭で1人づつ登る事になり俺が真ん中で後ろにU。

ちょうど踊り場に差し掛かった時に突然B'zのさまよえる青い弾丸が大音量で鳴った。
Tのスマホの着歌が狭い階段に反響してもの凄く響いて思いっきりビクンってなったのね。

電話の相手は外で待ってる筈のRかららしくTがスマホに向かって少し話をした後直ぐに切った。
俺が「何?」って聞くと、
T「出ろって」
俺「は?」
U「どしたん?」
実はこの時、Tの方を向くと嫌でも上の2階廊下部分がうっすら見えるんだけど、何故だか無性に恐くて意識して見ないようにしてた。
T「なんか直ぐにこっから出ろって」
俺「・・・分かった」

926 :子供12:2012/07/10(火) 02:09:43.97 ID:COnTfSmE0

訳は分からないが兎に角出る理由が出来て少しホッとした。
で、向きを変えて階段を降りかけた瞬間“ダン”ってすーごい重い音が直ぐ真上からした。

もうそっちを見るとかとんでもなくて、速攻駆け降りて必死で家から出た。
あれはほんっとうにビビった。
正直に言うと半泣き。
何かを気にするとか全部吹っ飛んだ。
あの音を思い出すだけで今でも鳥肌がヤバイ。

心臓バックンバックン鳴ってて、大きく深呼吸しようとした弾みに咽て余計苦しくなった。
Tがフー、フーって荒い息しながら、ライトでしきりに家の中の様子を伺ってた。
喉が痛くてツバを吐きながらRとKを探すと門のところに居た。

2人ともお互いに抱きつくようにピッタリくっついててKは震えながら泣いてるし、Rも半泣きで酷い有り様だった。

お互い何があったかとか尋ねる余裕も無くて、殆ど駆け足で車に戻った。

戻る時は俺が最後尾だったんだが、やたら後ろが気になって気になってしょうがなかった。
気のせいなんだろうが、直ぐ真後ろに誰かがピッタリくっついて来てるような感覚があって恐かった。
歩いているうちに段々と無性に腹が立ってきて、何か現れたら思いっきりぶっ飛ばしてやるって気合を入れまくった。
でも絶対に後ろは振り向けなかった。

927 :子供13:2012/07/10(火) 02:10:50.96 ID:COnTfSmE0

車を駐めてある広場の近くまで来て何で違和感があったのかやっと解った。やかましい位の虫の鳴き声。
家の周りでは静か過ぎる位に何の音もしてなかった。

車の側に来た時、TとUが急に興奮し出して、マジ恐かったとかヤベェヤベェと騒ぎ出した。
俺はその時になってようやく後ろを振り返る余裕が出来た程度で、はしゃぐ元気なんてとてもじゃないが無くて黙ってた。
しかも、RとKはまだショックを受けた感じのままで、特にKが凄く落ち込んでたから、帰りにみんなでファミレスに寄って落ち着くことにした。
車で山を下ってる最中、何故か急に塩っぽいのが食いたくなって堪らず、明太子のパスタとアイスコーヒーを頼んで食った。

パスタを食ってる最中、右肘から少し血が出てるのをUから指摘された。
傷自体は少し切った程度だったが、全く痛くなく、どこで何時切ったのか全然気付かなかった。
据付のナプキンで軽く血を拭き取って、少しの間抑えてたら血はしっかり止まった。

パスタを食い終わる位に、店内に入ってすぐトイレに篭ってたRとKが出て来た。
Rはカフェオレ、Kはイチゴパフェ(朝っぱらからかよ)を注文したりして2人共少しづつ元気が出てきたみたいで、あの家でお互いに何があったのか話し合った。
何でも俺たち男連中が家に入って暫くして、Kがもの凄い視線を感じて2階を見上げると、窓際に人が立って居てそいつと目が合ったらしい。
小学生位の子供で絶対に生きてる人じゃなかったと涙目で訴えてんのが妙に恐かった。
日頃お化けとか信じないTが茶化さずに黙って真剣に話しを聞いてたのも印象に残ってる。
Rも窓に何かが居たのは見たと言った。
それで中の俺達が危ないと判断してTに直ぐ出てくるように電話したという事だった。

928 :子供14:2012/07/10(火) 02:12:50.52 ID:COnTfSmE0

1番2階部分に近かったTが言うには、デカイ音の正体は2階の部屋のドアが凄い勢いで開く音で、中から真っ黒い何かが廊下に出て来たのがチラッとだけ見えたらしい。
しかしはっきりとは見ていないし、勘違いだったかもと曖昧だった。
Tが珍しく真面目な感じで話してるのを見て(ああ、こいつも相当ビビってたんだ)とようやく気付いた。
Uはダイニングで女の人の声を聞いた様な気がしたが、気のせいだったかも知れないと教えてくれた。
納得いかないままのライターの犯人については、わざとか誰も話題にしなくて、俺もその時はどうでも良いって気分だった。

再生したビデオカメラには特に変なモノが映っている事も無く、ただし階段で聞いた重い“ダン”って音だけはバッチリ入ってて再び鳥肌が立った。

ビデオで改めて見ると、驚かせようとして狙ってやったんじゃないかって感じの音のタイミングとか、本当は家に住み着いた浮浪者とかの仕業だったんじゃないかと少しだけ考えたが、
何にしてもあんなトコに1人で住む奴なんか明らかにまともじゃない。
やはりあの家には何かしらヤバイのが居たのは間違いないと結論付けた。

すっかり明るくなってからUの家に一旦戻って解散し、俺の車でRとKを家まで送る時にRが教えてくれた話しで、やっぱり幽霊だったんじゃないかって少しだけ思い直した。

R「(病院跡に)行く時さコンビニ寄ったでしょ?」
俺「うん」
R「駐車場で話してる時、タクシーのオジサン2人いたの知ってる?」
俺「あー、居たね。なんか1人こっちガン見してたわそういや」
R「そそ、そのオジサン、私達の真ん中をずっと見てたんよ」
俺「真ん中って?」
R「うん。ちょうど胸より下、子供の高さくらい・・・」
俺「(マジかよ)気のせいとかじゃ?」
K「アレ私もあのオジサンの視線変だと思った。絶対におかしかった」
俺「・・・・・・」

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