やこうの記事

バ怪談・ホッピング幽霊

おバカバーテンダーのジュン君 昔話その3。 前話はこちらから。 「ホッピングあるじゃないっすか。ピョンピョンするやつ」 バーカウンターの向こうで小さくジャンプして見せるジュン君。 「そいつ多分ですけどホッピングやってて死んだんすよ」 小学生の頃、彼は学校からの帰り道で不思議なモノを見た。 その日は体調不良で欠席した友人のS君の家に、クラスメイト達と学校のプリントを届けに行った帰りでいつもの道ではなかったという。 なんの変哲もない住宅街の路地の向こうに、一人でホッピングをする子供の姿があった。 下級生だろう ...

バ怪談・調子に乗ってたんすよ

おバカバーテンダーのジュン君 昔話その2 前話はこちらから 田舎から東京に出てきてフリーターをやっていた頃。 友人宅で飲み会をやっていた時。 前触れもなく「え゙え゙え゙え゙え゙」という声が喉から出てきた。 「え゙え゙え゙え゙え゙」 自分では制御できないどころか、口が『え』の形に開いたまま閉じることすらできない。 まるで口だけ金縛りになった状態で喉が痙攣している。 「え゙え゙え゙え゙え゙」 「なに?なにやってんの?」 友人の1人が真顔でツッコミを入れた。 「いや俺もよくわか…え゙え゙え゙え゙え゙…なにこれ」 ...

バ怪談・閣下ですか?

池袋の飲食店で働くジュンという男性から聞いたお話です。 まず最初に断っておくことがあります。 それは『ジュン君は愛すべきバカである』ということ。 それではどうぞ。 「俺たぶん前世でめちゃくちゃ恨まれてるんすよ!」 とある小さなバーのカウンターに立ってアハハと笑う彼は、子供の頃からそれはそれは恐ろしい目に遭ってきたという。 子供の頃、ジュン君は知らなかったが実家に住んでいる両親や祖父母が頭を抱えていた出来事があった。 ある時期から深夜に実家の電話が鳴るようになったという。 最初に電話に出たのは祖父だった。 ...

実話怪談・多重人格

今から15年くらい前の話。 西池袋にある雑居ビルの一室で彼はパソコンをいじっていた。 風俗店の店長だった彼は、店のホームページを更新して、今日も元気に営業してますよと、常連のお客達に来店を促した。 その日の午後、一人の女性が面接にやってきた。 年齢は22。 小柄で明るい元気娘で、これはお客の心を掴むだろうなと、すぐに採用を決めた。 源氏名は本人の希望を聞いてマミとした。 案の定マミはすぐに人気の嬢となった。 マミが出勤する日は前日から予約の電話が鳴り続け、彼の仕事と言えばお客に丁寧に詫びて、「マミちゃんの ...

怪談の体験者さんと執筆者さんが匂わせしてきてイライラする話

「この先の話もあるんだけど、それは言えないんだ」 こういう展開は怪談に限らず人に話を聞く仕事をしていれば出くわすことだろう。 何かクリティカルな出来事があるらしいのだが、『とある事情』とやらで話すことができないと。 「これ以上はマジで洒落にならないからごめん。〇〇さん、これ以上はまずいよね?」 「ああーうん、まずいね、まずい」 グループ通話のやり取りを聞いて内心でため息をつく。 うんざりしていた。 グループ通話の相手は当該の怪談の体験者とそれをまとめた怪談作家である。 彼らとツイキャス配信をするためのテス ...

第三部 一話 大霊障・前編

前回のあらすじ 天道宗とのインタビューで彼らの目的が『この国に破壊と混乱をもたらすこと』であると確信した水無月達。 インタビュー中に起きた同時多発の自殺テロによって、一連のヨミ騒動で最大級の衝撃を受けた日本社会は自殺のニュースに過剰反応するようになる。 伊賀野和美と丸山理恵の友情によって天道宗本部の場所が特定され、連雀と興信所の活躍によって天道宗の本山・道厳寺の場所が特定される。 水無月達が一歩ずつ進んでいく一方、天道宗もまた着実に状況を進めていた。 平将門ゆかりの神社関連施設が放火され、役目を終えた逆北 ...

駅のホームにいる霊がどう見てもウルトラマンにしか見えない件

2024年ニコニコ超会議出展ブースにて配布 取材:かみよう『琴葉茜と不思議探訪シリーズ』 執筆:夜行列車 「僕が見たものがなんだったのか、わかる人がいたらと思って」 そう語ってくれたのは、都内で接骨院を営むKさんという男性。 Kさんにはとある思い出がある。 今となっては思い出したくない記憶だが、それがなんだったのか、今も気になっているという。 東京の西のはずれの街で生まれ育ったKさんは、幼い頃から霊感があった。 物心ついた時には街中や家の中で変なモヤを見るようになっていた。 毎日見かけるものだし、彼に襲い ...

第二部 四話 それぞれの覚悟

平将門を封じた結界が破壊されてから2週間。 この間に私たちは実に6回のデモを行った。 最初のデモが成功したことを受けて私はまずジローさんに相談して、天道宗による解体工事が終わるまでなるべくデモを続けようと決めた。 すでに鎮しずめ物が掘り出されてしまった解体現場を除く全ての現場で連日デモを行う。 OH!カルトや怪談ナイトの公式Twitterで参加を呼びかけ、平日だろうがなんだろうが構わず集まってシュプレヒコールを上げる。 2回目以降のデモではマイクを握るのはジローさんの役目となった。 もともと芸能人として活 ...

第二部 三話 魔法陣喪失

「ミルキーウェイ?」 和美さんからの電話に出ると、開口一番にその名前を言われた。 「天道宗の本部の場所がわかったわ。NPO法人ミルキーウェイ。ネットで調べたけど横浜にある会社ね。最上階がオフィスになっていて、そこが天道宗の本部みたいなの」 和美さんは興奮しているようで早口にそう言った。 「ちょっ…ちょっと待って。どうやってわかったの?」 「理恵さんがようやく話してくれたのよ。あの子はそこでヨミの霊を取り憑かされた。地下にすごい数の箱が保管してあるらしいから、すぐにでも乗り込むべきだと思う」 これから乗り込 ...

実話怪談・池袋西口のラブホテルに現れた怪異

池袋の飲食店で働く霊感少女ナミさんから聞いたお話です。 たくさん聞かせていただいたお話のひとつなので、今後数話にわけて投稿します。 それではどうぞ。 当時付き合っていた彼氏とラブホテルに入ったら、部屋に入った途端、部屋の中からパキッというラップ音が聞こえた。 パキッ、パキッと続けざまに鳴っている。 氷の入ったグラスに水を注いだ時のようなパキッという音だったという。 かつて実家や心霊スポットで感じたような嫌な雰囲気は、その部屋では何も感じなかった。 ただ部屋の中では繰り返しラップ音が鳴っている。 彼氏にはど ...

第二部 二話 壊された日常

前回のあらすじ 天道宗のインタビューを受け入れた水無月達。 インタビューを続ける中で天道宗の思惑を見抜いて、彼らの望みが『この国の破壊と混乱である』と断ずる水無月。 そんなさなかテレビをつけてくれと申し出る天道宗。 画面に映し出されたのは国内4か所で同時多発したヨミによる集団自殺テロの映像だった。 再び現れたヨミという恐怖にさらされたこの国は…。 土曜日の昼過ぎ。 朝から自宅のパソコンでネットゲームをやっていたら携帯がヴヴヴッと震えた。 画面を見ると由香里からのLINEが来ている。 ちょうど手が離せるタイ ...

第二部 一話 繰り返される悪意

前回のあらすじ 天道宗によるヨミ騒動や大規模な呪術結界の存在をOH!カルトで告発した水無月。 出演したラジオ番組「怪談ナイト」生放送中に天道宗から取材の申し込みが届く。 恐怖を抱きつつもまたとない機会に取材を受けることに決める。 水無月、神宮寺、伊賀野、ジロー、阿部の5人が民明書房の会議室で天道宗を待つ。 内線電話で私宛の来客が到着した旨を聞いてわずかに逡巡する。 受付のスタッフに、そのまま来客を会議室に連れてきてもらうよう頼んだ。 本来なら私が取材相手をロビーまで迎えにいくのが礼儀だが、たとえその数分間 ...

第一部 四話 恐れを乗り越えて

「てことはここも天道宗の結界の内側になるわけか」 神宮寺さんがフムと息をついて腕を組んだ。 私は泰雲堂の応接セットで神宮寺さんと向かい合っている。 宗方くんはカウンターに座っているがこちらに顔を向けて話を聞いている。 三谷建設でのヒアリングで天道宗の敷いたレイラインのことを知り、特殊な鎮物をした箇所をマーキングした地図をコピーさせてもらって、すぐに泰雲堂へと戻って神宮寺さんに報告をした。 「陣じんがあるならどこかに傷をつけて破綻させるのが結界破りの定番だが、ビルの地下に埋められちまったものはすぐにどうこう ...

月明り ~稲川淳二風実話怪談~

私とあの人は、世に言うところの幼馴染ってやつでした。 とは言っても、幼稚園から一緒で小学校中学校と同じクラスで……なんていう甘酸っぱいもんじゃなくて、病院でね。 私もあの人も、生まれた時から体が弱くて、物心ついた時にゃ病院で、入院したり退院したり入院したり退院したり、そんなことを繰り返してましてね。 学校なんかろくに行けやしない。 それでも病院に行けば大抵の場合あの人と会えるんで、私は病院に行くのが嫌いじゃなかった。   あの人は脳みその腫瘍かなんかの病気で、私は心臓が弱っちくて、お互いに「どっ ...

第一部 三話 見え始めた影

天道宗を告発する記事を書いて1週間ほど経ったある日、私は東京駅の近くにある喫茶店に呼び出されていた。 呼び出しをかけたのは姉。 昔から頭の上がらない数少ない相手である。 篠宮神社の長女として最も神様の近くに置かれ、何をするにも拝殿や本殿が目に入る位置で行うよう躾けられて来た神様の許嫁。 母にしてみれば「神様がしーちゃんを直接見守りたいから、おそばに置かせて頂いてるだけよ」ということだが、本人にとってはたまったものではなかったらしく、高校卒業と同時に姉は東京へ出た。 両親の教育方針としてはただ「何をするにも ...

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