やこうの記事

第一部 四話 恐れを乗り越えて

「てことはここも天道宗の結界の内側になるわけか」 神宮寺さんがフムと息をついて腕を組んだ。 私は泰雲堂の応接セットで神宮寺さんと向かい合っている。 宗方くんはカウンターに座っているがこちらに顔を向けて話を聞いている。 三谷建設でのヒアリングで天道宗の敷いたレイラインのことを知り、特殊な鎮物をした箇所をマーキングした地図をコピーさせてもらって、すぐに泰雲堂へと戻って神宮寺さんに報告をした。 「陣じんがあるならどこかに傷をつけて破綻させるのが結界破りの定番だが、ビルの地下に埋められちまったものはすぐにどうこう ...

第一部 三話 見え始めた影

天道宗を告発する記事を書いて1週間ほど経ったある日、私は東京駅の近くにある喫茶店に呼び出されていた。 呼び出しをかけたのは姉。 昔から頭の上がらない数少ない相手である。 篠宮神社の長女として最も神様の近くに置かれ、何をするにも拝殿や本殿が目に入る位置で行うよう躾けられて来た神様の許嫁。 母にしてみれば「神様がしーちゃんを直接見守りたいから、おそばに置かせて頂いてるだけよ」ということだが、本人にとってはたまったものではなかったらしく、高校卒業と同時に姉は東京へ出た。 両親の教育方針としてはただ「何をするにも ...

【ありがたすぎてシェア】「闇の鳴動」に対する台湾の皆さんの反応

Unlin篠宮神社シリーズが好き、天道との決戦を待っている読者はたくさんいますよ! 01「第一部 一話 霊能者インタビュー 嘉納康明1~2」「魔女」に対するコメント be*******:  篠宮神社を見ただけでスレをクリックした。 an******: タイトルを見ただけで凄く興奮した!!!! an*********: 興奮したのは私も同じです! do**********: 俺の愛人になってくれるって何よwww あしたのエピソードが楽しみです! o8****: おおおお!待っていました! cy*****:  ...

第一部 二話 望まぬ再会

前回のあらすじ 天道宗によるヨミ騒動や邪悪な箱の呪術を受け団結する霊能者達。 月刊OH!カルトでの特集をラジオでも拡散するべくジローに依頼する水無月。 リスナーから相談を受け呪術の施された箱を回収し、伊賀野庵で除霊を行う。 伊賀野和美の除霊に感銘を受けたジローは、伊賀野・笠根・水無月に出演を依頼する。 「はい。今夜も始まりました。毎週金曜の夜にお届けする怪奇な番組『怪談ナイト』のお時間です」 阿部ちゃんのキューに合わせていつも通りの言葉で喋り始める。 いつもは小林さんと2人きりなので、5人もいると放送ブー ...

【業務連絡】書籍発売のお知らせと今後の展望【読者の皆さんへ】

書籍化についてのお知らせです。 以前の投稿で「書籍化します」とお知らせをしましたが、実は日本国内ではなく台湾での書籍化となります。 特設ページ http://www.revebooks.com/chilin/Shrine/news.html 書影が確認できます。 表紙はあの御方!! 販売ページ https://www.books.com.tw/web/sys_puballb/books/?pubid=chihlin 「買いますよ~」と言ってくれた日本の読者さんには本当に申し訳ないですが、現在、日本国内での ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第14話

「ウチの母に事の顛末を説明して、それで例の神様についてどう思うかを聞いてみたんです。なので私の考察というよりは母の考察ですね。私を通してウチの神様もある程度は事情をわかってくれてるはずですから、その神様と母の言うことが今のところ最も信憑性があると思っています。母が直接前田さんとお話ししたいと言うので、今から電話しますね」 篠宮さんがスマホを取り出し電話をかける。 ここにきて新たな人物か。 しかも母とは。 実家が神社と言っていたな。 女性が神主なのだろうか。 「もしもし?お母さん?今から大丈夫?うん、うん、 ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第13話

結果が出たのは篠宮さんが初めて来社してから一週間ほど経ってからだった。 この一週間でほとんどわかったというのだからライターというのは大したものだ。 最初にわかったのはアレの正体だった。 「まずはアレの正体ですね。アレは一般的にオバケと呼ばれるモノではありませんでした。アレはいわゆる鬼。オニです。人が死んで化けて出たのではなく、最初から鬼として生まれた、主に山などに住む妖怪ですね」 鬼。オニ。オバケではない。 だからあんなに生々しい食われ方だったのか。 「鬼については古今東西、強いのも弱いのも良いのも悪いの ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第12話

《月刊OH!カルト》編集者 篠宮水無月みなづき ライターさんが差し出した名刺にはそう印刷されていた。 クソみたいな名前の雑誌だなと思いつつ軽く談笑する。 この手のオカルト系雑誌は今まで積極的に避けてきたので詳しくはない。 この雑誌が有名なのかどうかも全くわからない。 「マニア向けジャンルですからねー。知る人ぞ知るって感じです。根強いファンがいますから時代に左右されないでそこそこの部数をキープしてます」 篠宮さんは長い髪をゆる巻きにしてまとめた感じのアクティブ系女子で、ジャケットにジーンズというラフなスタイ ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第11話

振り返ってみれば一連の怪現象に悩まされたのはたった四日間の出来事だった。 あのビデオ編集の仕事をした日から数えると結構な日数になるのだが、伊賀野トク子の死を知り、寺社を巡って御守りやお札を集め始めたのはつい六日前のことだ。 「…………」 凄まじい四日間だった。 あの霊に翻弄され続けた四日間。 特に最期の二日間はキツかった。 木崎美佳の姿をしたアレにつきまとわれ、最悪なことに死人まで出てしまった。 「……………」 タッキーと伊賀野さんのお弟子さん達。 取り返しのつかない犠牲を思うと辛い。 しかし不謹慎だが、 ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第10話

時刻は23時になろうとしている。 周りは暗く人の気配はない。 昼間は賑わっているであろう土産物屋も全て閉まっている。 高尾山の山道入り口まで車で入り込み、高尾山薬王院たかおさんやくおういんという石碑が立っている道を車で進む。 一般車両進入禁止の看板があったが、笠根さんに無理を言って侵入してもらった。 車で行ける限界まで進み、車を降りる。 後は徒歩で登っていくしかない。 高尾山に向かう道中で調べたのだが、高尾山には登山道がいくつかあり、登山道によって難易度が全然違うらしく、もっとも険しい道はまるっきり山道で ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第9話

夕方まであてどもなく渋谷の街を歩いた。 腹が減ったらファーストフードで飯を食い、店から出たらまた歩き続けた。 途中何度も木崎美佳きざきみかの姿をしたモノがちょっかいをかけてきた。 背中の後ろで気味悪く笑ったかと思うと、交差点の向こう側でこっちを見ていたり、ファーストフードの店内で机の下から俺を見上げていたり、トイレを終えて手を洗う時に鏡の中から俺を見ていたり、もうありとあらゆるタイミングで存在をアピールしてきやがる。 「くそったれ」 木崎美佳がちょっかいをかけてくるたびに罵倒の言葉を吐いたが、木崎美佳は気 ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第8話

俺が目を覚ましたのは除霊の翌日だったらしい。 点滴がされていなかったのは、ただ単に眠っていただけだったからだ。 伊賀野いがのトク子に続いて娘の和美かずみもやられた。 もう伊賀野庵いがのあんは無くなるかもしれないと笠根かさねさんは言った。 そして「手を引きたい」とも。 「正直言って私にできることはもう何も見当たりません。いや、本山ほんざんに連絡するくらいはできますが、それでも解決するかどうか、って感じです。それほど伊賀野さん達は凄かった。これ以上何かしても被害を増やすだけのような……ああ、すいません。前田さ ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第7話

目を覚ますと俺はまた病院にいた。 あの時と同じ病院のようだ。 病室に入ってきた斎藤さいとうさんが、俺の意識があるのを見て怯えた顔をしたあと、ベッドの側に来て「よかった……今、先生を呼んで来ますね」と言った。 医師の検診を受けしばらくボーッとしていると笠根かさねさんが入ってきた。 「やあ前田さん、どうも」 そう言って笠根さんはベッド脇の椅子に腰かけた。 「無事……とは言えないけど、とりあえず元気そうでよかった」 さっきまでと服装が違う。 俺はつい今まで笠根さんのお寺にいたはずだが、まさかぶっ倒れたのだろうか ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第6話

忙しげに準備をする笠根かさねさんとタッキーを見ながら俺は応接ソファに体を預けている。 頼もしい気持ちと共に不安が押し寄せてくる。 いきなりバトル、とはすぐに除霊を行うということだろう。 あの映像のように、今度は俺が本堂の真ん中に正座して首を垂れる側になるのだろうか。 あの時の木崎美佳きざきみかはぐったりというか、朦朧としていたようだった。 俺もあんな風になるのだろうか。 怖い。 窓の外を見ると昼の日差しが明るく庭を照らしている。 全て解決すればいいのだが。 いや、解決してくれなくては困る。 手首につけた数 ...

山に入れなくなった話【朗読用】  第5話

笠根かさねさんと別れたあと、俺は夜間出入り口から病院内に入った。 病棟まで戻ると斎藤さんが俺を見つけて近寄ってきた。 「どうでしたか?」 心配そうに聞いてくる。 優しい人だ本当に。 「おかげさまでなんとかなりそうです」 そう言うと彼女はホッとしたようにため息をつき「よかった…」と言った。 惚れてしまいそうだった。 病室に戻るのは若干怖かったが、笠根さんの言葉を信じてベッドに横たわる。 あっという間に疲れが襲ってきて、何を考える間もなく俺は意識を手放した。 朝まで熟睡できたのは数珠のおかげだったのだろうか、 ...

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