前田さんと実家に到着して、ものの1時間ほどで遥拝の準備ができた。 ゆっくりする間もなく、前田さんは冷水で体を清めて、笑ってしまうほどにガタガタ震えながら、白い着物を着せられて戻ってきた。 神職見習いの橋本君が用意してくれたベンチコートを羽織り、境内に持ち出された屋外用の石油ストーブに手をかざして震えている前田さんに声をかける。 「前田さーん、大丈夫です?」 ギギギと音がするほどのぎこちなさで振り向いた前田さん、よく見ると鼻が垂れている。 「ま…まだ11月なのに…やたら寒いっすね…」 「冷水は効きますからね ...