それいけ怪談部 14 文化祭エピローグ

「つっきーとつくちゃんとドラゴン。どれがいいです?」
三ツ葉の言葉に憑田先輩が首をかしげる。
「なんのこと?」
憑田先輩の言葉に三ツ葉がニシシと笑う。
「先輩の呼び方ですよ。憑田先輩じゃ仲悪いみたいじゃないですか」
「あーなるほど」
唐突な三ツ葉の提案にも憑田先輩は動じず受け止める。
体育会系のノリなのか本人の気質なのか、部長と違って考え方もドッシリしている。
「ドクロとドラゴンじゃなあ。なんかこの部活までコミケっぽくなりそうで嫌だなあ」
そう言って笑い、そのまま数秒固まる。
「つっきーでいいんじゃない?小学生の頃はそう呼ばれてたよ」
「じゃあつっきー先輩で!」
「あ、先輩つけなくていいよ。同じ部活メンバーなんだし友達認定で」
「おけ!つっきー!」
「いえーい」
三ツ葉の差し出した手にハイタッチで答える憑田先輩ことつっきー。
私の隣で鬼里谷ちゃんも頷いている。

「鬼里谷ちゃんはオニちゃんと萌ちゃんどっちがいい?」
「オニちゃん?」
思わず聞き返した。
「普通はきーちゃんじゃないの?」
またはきりちゃんとか。
「それだと普通すぎてつまらないんだよ。オニちゃん可愛くない?」
「うんオニちゃん可愛い」
たしかに可愛いので同意しておく。
「どっちがいい?」
そう言って三ツ葉が鬼里谷ちゃんの顔を下から見上げる。
背の低い三ツ葉と高身長の鬼里谷ちゃんだと必ず見上げる形になる。
グイグイいく三ツ葉の背が低いのは圧迫感がなくて良いと本人も自覚している。
「あ、あの」
「オニちゃん?萌ちゃん?どっちでもいいよ」
鬼里谷ちゃん今日は見学に来たわけで入部するとも決まってないのに、三ツ葉はもう入部前提で考えているようだ。
まあお昼を一緒に食べたときも自然に合流して楽しかったから、鬼里谷ちゃんも心理的な距離はかなり詰めてきてくれていると思う。
「お、オニちゃんで…」
「おけー!決まり!オニちゃんいえーい!」
「はい〜」
三ツ葉のテンションにやや押されながらも笑顔でハイタッチする鬼里谷ちゃん改めオニちゃん。
結局その日のうちに入部届けを書いてくれ、我が怪談研究会は無事に怪談部へと昇格することが決定するのだった。

翌日、部員全員と顧問で怪談部発足の儀式を執り行うことになった。
まあ儀式と言っても「これから部になりますんでよろしく」というだけなのだが。
「おーす。みんないるな」
ドアを開けて入ってきた部長の後ろに続いてイマセンが入ってくる。
忌野問答(いまわのもんど)。
つっきーよりも若干背が高く、部長よりもさらにガリガリのヒョロガリノッポで、女子生徒だけでなく男子生徒からも恐れられている闇属性の顧問である。
性格は無口で陰険という噂がつきまとうが、無口なだけで別に陰険でもないし面倒見が悪いわけでもない、部の活動に口出ししないがこちらからのお願いにはちゃんと答えてくれるまあまあいい先生だと私は思っている。

「えー、所属が5名になったということで、今日からここは怪談部の部室となります。活動等に変更はないですが部ということで学校側からも一目置かれる集団になったということは理解しておいてください。文化祭お疲れ様でした。憑田君、鬼里谷さん、入部おめでとうございます」
ニコリともせず言い切ったイマセンの言葉に新入部員の二人が頭を下げ、その後全員で拍手をする。
言う事だけ言ったイマセンがさっさといなくなった部室で、部長が買ってきてくれたジュースで乾杯をする。
イマセンよりも長い演説を闇島ドクロがしている間、私と三ツ葉は新たな友人となったつっきーやオニちゃんとの可能性に笑顔を交わすのだった。

第14話 完

投稿日:2024年9月5日 更新日:

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