怪談・洒落怖

【新作洒落怖】廃墟の社員寮

投稿日:2021年8月3日 更新日:

本文

738 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:30:24.70 ID:D6FQL7c30

俺が高校生の時の話だが、
まあ聞いてくれ。

17歳の高2の夏に、
俺とツレのA男で、
地元にある廃墟の社員寮?で肝試しをする事になった。

その廃墟の社員寮は、
町はずれにぽつんと建っている寂れた建物で、手入れされていない生い茂った木と雑草に囲まれ、からからに干からびたプール?がついていた。

ガキの頃に、何度か昼間に訪れ、
秘密基地の様にA男と、
封鎖されている正面入り口にある大きな柱の裏でポケモンのカードゲームなんかで遊んでいたのを思い出す。
その頃は封鎖されている正面玄関から、
照明の落とされた玄関ホールをA男と恐る恐る覗くくらいが限界だった。
あの時も夏の昼間だったが、照明の落とされた玄関ホールは薄暗く、ひんやりして見えた。
玄関ホールは管理人室の様な、受付の様なものがすぐ右手にあり、
壁には木の板に筆で書かれた知らない男達の名前の書いた札が掛かっていた。
恐らく住んでいた社員達の名前だったと思う。

739 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:31:53.55 ID:D6FQL7c30

高校2年の夏休み、
A男は俺の家に泊まりに来ており、晩飯を食った後、俺の部屋で2人でダラダラと、
サイレントヒル(ゲーム)をやっていた時に、
俺らの地元にもそういえばこんな気味悪い廃墟があったよな、という話になった。
そこから、
あったあったと思い出話に花が咲き、
秘密基地に見立てて遊んだ事、
恐る恐る廃墟を覗いた事なんかが出て来て、
ゲームそっちのけで盛り上がった。

「あ、あの廃墟にちょっと行ってみねえ?」
と、A男が言った。
こいつはホラー物に目がなく、
この日もホラーゲームの他に、夜通しホラー映画を見るという計画を立てていた。
俺は怖いどうのこうのより、
行くまでが面倒くさかったため、渋っていたが、A男にごり押され行く事になった。

俺たちは深夜1時になるまで、
風呂に入ったりアイスを食ったりゲームをしたりして時間を潰した。
これは、肝試しなら丑三つ時だというA男の意見と、
夜に出掛ける事に親がイエスと言う訳がなかったので、親が寝静まるまで待とうという俺の意見も含めて決まった。

740 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:35:43.65 ID:D6FQL7c30

やがて深夜1時になり、
俺たちはこっそり家から抜け出した。
カメラ付きのガラケーと、懐中電灯、財布、あとは親父の煙草を一箱失敬して、
ちょっとした冒険気分で廃墟に向かった。

廃墟までは歩いて25分位だ。
面倒くさいと思っていたが、
田舎町のためぽつぽつある民家やアパートもしんと寝静まっていて、星は綺麗だし、夜は涼しいし、煙草をふかしながらタラタラ歩く道すがらは、なんというか最高に楽しかった。
くだらない下ネタを話しながら、俺たちは廃墟に向かう。
廃墟が徐々に近づくにつれ、
街灯はどんどん少なくなり、
雑草の生い茂げ具合もひどくなってきた。
俺たちの話は次第に下ネタから、オカルティックな話にシフトされ、
A男がやがてこんな話をきりだした。

A男「お前、あの廃墟って何の建物だったか知ってる?」
俺「いや、なんかの社員寮じゃないの?」
A男「社員寮にプールかついてると思うか?」

確かに、あの廃墟にはプールの様な物がついていた。
プールがついている社員寮なんて、
確かに聞いた事がない。

741 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:37:08.69 ID:D6FQL7c30

A男「おれ、昔ばあちゃんに聞いたんだけどさ、あれプールじゃなくて、貯水槽だったみてえだぜ」
俺「へえ」
A男「あの寮のやつはあの貯水槽の水を使って生活してたらしい」
俺「まじか」
A男「ただある時に、あの社員寮の奴等が次々に中毒症状になって死ぬという事件が起こった」
俺「はあ?」
A男「どうやら原因は、あの貯水槽の水だったらしい。貯水槽の水の中に、コレラだかなんだかに感染した女の死体が沈められてたらしいぜ」
俺「げえっ!」
A男「すぐに貯水槽と社員寮は封鎖、そのまま廃墟になったって話だぜ」
俺「へえ」
A男「おかしいのは、その水を使ったとしても、死ぬまではいかねーと思うんだよな」

俺は話半分でA男の話を聞いていた。
俺は生まれてからそんな話は聞いたこともなかったし、
オカルト好きなA男のために、A男のばーちゃんがついた作り話だと思ったからだ。
ただ、A男の語り口調のせいか、
俺は得体の知れない薄気味悪さを感じ、
鳥肌が立っていた。

742 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:41:21.23 ID:D6FQL7c30

A男「お、見えてきた」
A男の声に顔を上げると、例の廃墟が生い茂った木の間に見えた。
街灯は無かったが、星の明かりと暗闇に目が慣れたおかげで、
すすけた灰色の建物のアウトラインはくっきりと見えた。
当たり前だが、ガキの頃に見た時よりも老朽化が進んで、壁にはあちこちにヒビが入っていた。
正面に、俺たちが遊んだ正面入り口がある。
正面入り口にはめられたガラスが薄汚れている。
建物の左手には、例の貯水槽があった。
貯水槽は0.5階分くらいの高さのコンクリの上にあり、周りはフェンスと有刺鉄線に囲まれていた。

A男「おい、貯水槽を見に行こう」
A男はノリノリで貯水槽に向かって行った。
俺は重い足取りで奴について行ったが、
あの話のせいか薄気味悪さが抜けずに、気乗りはしなかった。

743 :本当にあった怖い名無し:2016/07/10(日) 23:48:50.66 ID:D6FQL7c30

貯水槽を囲むフェンスの外側から、
貯水槽を覗く。
やはりプールに見える。
ブルーシートみたいな青色(すっかり日に焼けてすすけているが)だ。
からからに干からびており、
ヒビの入っている底面から雑草が生えていた。
雑草も干からびている。
そのせいか女の髪の毛の様に見え、気持ち悪い事この上無かった。

A男「何にもねえな」
懐中電灯で一通りを照らすと、
今度は懐中電灯を立ての方に向けた。
A男「うわっ!」
A男はいきなり大声をあげ、懐中電灯を慌てて下げた。
俺「どうした?!」
A男「今二階の窓で、何か動いた…!」
俺「は?嘘だろ…」
俺は恐る恐るA男の持っている懐中電灯を二階の窓にむけてゆっくり上げた。
窓は規則正しく横並びになっており、通路が見える。通路にはこちらもまた規則正しく木の扉が並んでいる。恐らく社員達の部屋だ。

俺「なんもないじゃん」
A男「いや、マジで、スッて誰かが動いたんだって!」
俺「俺ら以外にも肝試しに来た奴がいんのかな」
A男「中入れんのか?ここ」
俺「どっかの窓が開いてんのかも」
A男「あり得る!探そうぜ!」
俺は、マジかよ…と内心思いながら、渋々A男の後を追った。

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