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195 :本当にあった怖い名無し:2014/03/05(水) 21:52:01.05 ID:PZeaZkp10
もう5年も前になりましょうか。
僕はあるマンションを借りました。
初めての一人暮らしということもあり、とても緊張していたことを覚えています。
借りられたその部屋は、広さにそぐわない家賃でとても嬉しかった反面、怪しいと思わなかった訳ではありません。
しかし、そのマンションにかれこれ十年近く住んでいる友人の話では、何の因縁も無く、ついこの間まで会社員の男性が住んでいて、実家の農家を継ぐ為に退去したそうですから、僕は思い切ってソコに住む事にしたのでした。
そして住み始めてから一週間近く経ったある日のことでした。
寝ていると、けたたましくドアを叩く音で目が覚めました。
まだ意識が定まらないなか、ポケットから携帯を取り出して時刻を確認しました。
3時………夜中の3時………誰だ…迷惑だな、とボヤキながら、体を起こして、フラフラとしながらもドアに辿り着き、覗き穴から招かれざる客の姿を拝もうとしました。
覗くと………ソコにはだれもいませんでした。
僕はドアをみて、廊下を見渡しました。
誰も居ません。
196 :本当にあった怖い名無し:2014/03/05(水) 21:56:42.49 ID:PZeaZkp10
次の日の夜の事です。
また、ドアを叩く音で目覚めました。
時刻は再び3時。
連日の訪問に嫌気がさした僕は、今日はこの迷惑極まるイタズラの犯人を捕まえてやろうという気持ちでいっぱいでした。
布団から飛び起きた僕は、脱兎のように扉に飛びつき、勢い良く開け放ちました。
誰も居ません。
昨日と同じです。
僕はまたもや、モヤモヤとした気持ちで布団に戻りました。
その日も、それから寝付けませんでした。
朝にはイタズラと寝不足との苛立ちで、最悪の気分でした。
次の日も同様に、3時のイカサマは僕を苦しめました。
あと、僕の歯ブラシがどこかへ行ってしまいました。
197 :本当にあった怖い名無し:2014/03/05(水) 22:03:09.28 ID:PZeaZkp10
次の日、僕がテレビを見ている時でした。
小腹が空いた僕は、買い置きのカップラーメンを食べようとキッチンに行きました。
シーフードが一つ残っていたはずでした。
しかし、いくら探しても見つかりませんでした。
昨日の歯ブラシのこともあり、若干の気持ち悪さを覚えたので、もう一度戸締りをして、もう寝る事にしました。
しかし、一向に寝付けません。
そこで、どうせ三時にイタズラで起こされるなら
時間まで起きて、犯人を捕まえてやろうと思い、椅子を扉の前に置いて、待機する事にしました。
しかし、待つ事数分で強い眠気に襲われ、いつのまにか寝付いていました。
起きたのは、やはり3時。
ドアを叩く音です。
スグにドアを開けようと、鍵に手をかけました。
しかし………思いとどまり、五回ほど叩かれた後
ゆっくりと開けました。
誰も居ません。
ドアを閉めます。
ムネを撫で下ろしました。
自分でも心境の変化についていけませんでした。
たぶん、歯ブラシとラーメンのことが、尾を引いているのだと思いました。
ドアの向こうにいるモノを見るのが怖かったのです。
その日も、ソレからは眠れませんでした。
199 :本当にあった怖い名無し:2014/03/05(水) 22:06:55.18 ID:PZeaZkp10
次の日、友人にもう一度部屋について聞いてみました。
ですが、この前と変わりありません。
僕はモヤモヤとしながら部屋に戻ると、管理人さんが僕の部屋の前にジッと立って扉を見つめていました。
思わずたじろぐと、こちらに気づいた管理人さんは、ペコリと会釈をして、立ち去ってゆきました。
不安は大きくなるばかりでした。
その場で立ちすくんで、もしや一連のことは全て管理人さんの仕業かもしれないと思いました。
ですが、そう考えると少し救われたような気が
しました。
201 :本当にあった怖い名無し:2014/03/05(水) 22:11:00.55 ID:PZeaZkp10
その日の夜。
3時にいつものように、ドアの音で起きました。
ですがこの日はドアを開けに行きませんでした。
もし扉の向こうのモノに会ってしまったら………と考えると体が強張りました。
ですから布団をより一層強く掴んで、包まって、丸まって、音が止むのを待ちました。
音は弱くなるばかりか、強くなって、更に間隔がドンドンと狭まってゆきました。
最終的には部屋の隅から隅まで聞こえる位の、
大音量が連続で響き、僕の耳を蹂躙しました。
最後に、ドン………!!と、とびきり大きい音が聴こえて、静かになりました。
僕は安堵から、体がふやけるのを感じました。
緊張からカラカラになった喉を癒すために、水を飲もうと、立ち上がる寸で、ドンドンドンとまた叩く音が聞こえました。
しかし、それはドアからではありませんでした。
窓からです。
僕は窓を見ず、固まる体にムチをうって、鍵も
かけずに家を飛び出しました。
朝。
僕はマンションの下まで戻ってきました。
昨日はあれからネットカフェで夜を凌ぎました。
そして、しばらく眺めていました。
五階にある僕の部屋を。