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0946本当にあった怖い名無し垢版2019/06/20(木) 20:30:34.11ID:aRCO6gXp0
3ヶ月の研修期間を終え、俺は念願の部署へ配属された。6月末の金曜日に、東京近郊にある8畳程度の男性用の社宅に転居した。
駅から15分程度のユニットバス型のマンションの5階で、ベランダからは道路に並ぶ閑静な住宅街が見渡せた。
土曜、日曜は搬入された荷物の荷解きと、慣れない土地での生活用品の買い出しに費し、月曜日の出社に備えた。
月曜日は課長に先導され挨拶回りをした後、早速仕事を与えられた。
憧れの部署だけあって、新人に与えられるハードルも高く、配属の喜び以上に緊張と不安を感じた。
21時に帰宅した際はひどく疲れており、22時頃には床に就いた。
床に就いたものの頭が冴え眠れない。1時間が過ぎ、ようやくウトウトし始めたときだった。
「ドンドンドンドン!ドンドンドンドン!」
玄関のドアを乱暴にノックする音が聞こえた。
夜更けの焦るようなノック音に、よほど切迫した事情があるのかもしれないと思いながらも、眠気がひどく静観していた。すると
「ドンドンドンドン!ドンドンドンドン!おじゃましまーす!」
浮かれた女性の声だった。
あぁ酔っ払った女性が部屋を間違えてるんだな。と思った。
それ以降音が聞こえなかったこともあり、安心した俺はそのまま眠りについた。
0947本当にあった怖い名無し垢版2019/06/20(木) 20:33:02.24ID:aRCO6gXp0
翌日、俺は業務に追われながらも昨日の出来事を思い返した。
社宅は男性以外は住んでおらず、おじゃましますは 家ににあげられた際に言うべき言葉だということにすぐに気がついた。
それでも、奇妙な出来事に思いを馳せる余裕はなく業務に没頭した。
ヘトヘトに疲れて帰宅した俺は、その日も22時には床に就いた。
しかし、やはり眠れない。
それでも疲れを実感していたため、目をつむり眠れるように努めていた。
しばらく経って、ようやく眠りにつけそうになった時、ベランダに臨む道路の方から、女性の高笑いが聞こえた。
閑静な住宅街に鳴り響く浮かれた声に苛立ちながらも、目をつむり続けた。
「アハハハハ!」笑い声がマンションのすぐ近くから聞こえてきた。
ふと、早すぎると感じた。
最初の笑い声が聞こえた位置から、今いるであろう場所に移動するまでが、早すぎると感じた。
昨日の出来事もあり、暗闇に不安を覚えた俺は目を開けた。
目の前に、天井から逆さに吊られた赤い服の女の後ろ姿があった。
長い髪が仰向けの俺の胸に届きそうだった。
「アーハッハッハッハッヒーヒー!」
女はゴムで吊るされているように弾みながら、手足を乱雑に動かし狂喜していた。
気がつけば朝だった。
それ以降も3年間この社宅に住み続けたが、奇妙な出来事は起きなかった。
極度の緊張や疲れが見せた妄想と結論づけたが、体験は実話。
かれこれ10年以上経ったが、初めての取引先と会った後の慣れないホテルで疲れと緊張を感じで眠りにつくような時は、今でも思い出し恐怖を感じる。