483本当にあった怖い名無し2019/11/13(水) 23:58:45.44ID:t7Ezdta10
お爺さんが心配そうな顔で私を見つめていました。
心配してくれるのはうれしいのですが、お爺さんの臭いが
頭にきつくぶつかります。
少しの間お爺さんはこっちを見つめていましたが、急に笑い出すと
こんなことを言い出しました。
「昼飯はうまかったか」と。
こっちは頭が痛いのにそんなのんきな話ができるはずないだろうと
イライラしましたが、「はい」と答えました。多分。
484本当にあった怖い名無し2019/11/13(水) 23:59:09.96ID:t7Ezdta10
するとお爺さんは泣き始めました。
鼻水の音が大きくなり、しまいには号泣していました。
泣きながら何かを話していたのですが、うまく聞き取れません。
具合の悪い私をよそにお爺さんの声はドンドンと大きくなり、
何と言っているのかわかってきました。
「おなかすいた」 と言っていたんだと思います。
お爺さんの泣き声もあって、まるで食べ物をねだる子供のように見えて
とても気持ち悪く感じました。
485本当にあった怖い名無し2019/11/13(水) 23:59:35.40ID:t7Ezdta10
このままここにいるといけないと直感で感じた私は何も持たずに急いで
旅館に帰ろうしました。
そのときです。
あああという叫び声をあげた後
「にげるなぁ!せきにんとれ!」
と彼が言ったのです。
突然の事だったので、体が凍り付いたかのように動かなくなりました。
そして、その老人の顔はさっきまで泣いていたはずなのに恐ろしいほど真顔なのです。
私は何も言うことができず、そのまま立ち止まっていました。
486本当にあった怖い名無し2019/11/13(水) 23:59:54.67ID:t7Ezdta10
すると彼は口を大きく開けました。
普通の人では有り得ないくらい裂けた口の中に
多くの歯がぎっしり詰まっていました。
487本当にあった怖い名無し2019/11/14(木) 00:00:40.03ID:MEVRt6250
異常な事態の中、私は自分の身の危険を感じ、キャンバスや絵の具セットを置いて
林の入り口に向かって走りました。
後ろから彼の声であろう叫び声が聞こえました。
後ろを確認すると彼は居ませんでしたが、あの老人の声は聞こえます。
私は必死で走ります。
無我夢中で走ります。
すると何かにつまずいたのか私は体のバランスを崩し思いっきり地面へ
倒れました。
派手に倒れたので、体中が痛かったのですがそんなことお構いなしに
走りました。
488本当にあった怖い名無し2019/11/14(木) 00:01:23.97ID:MEVRt6250
そんな調子でやっと旅館にたどり着くことができ、エントランスで倒れ込んでしまうと
私を見た従業員さんが「どうしたんですか?」と訊ねてきました。
倒れたときにできた傷を見て不思議に思ったのでしょうか。
かなり慌てた感じで聞いてきました。
私はさっき起こった異常な出来事を話したのですが、話す内容が荒唐無稽なので
当然信じてもらうことができませんでした。
ですが、不審者に襲われたという事は信じて貰えたようで
従業員さんは顧問の先生を呼んで色々と話し合っていました。
ちなみに頭痛はこの辺りにはすっかり消えていました。
その後夕食を食べることになっていたのですが、その前に先生が私を含む部員を先生が泊まっている部屋
に呼んで私が不審者に襲われたことと、これからは団体で固まって作品を描くことを伝えました。
その時にキャンバスと絵の具セットを置いてきたことを先生に言うと、明日先生と一緒にあの林へ
行ってそれらを取りに行くことになりました。
489本当にあった怖い名無し2019/11/14(木) 00:01:45.54ID:MEVRt6250
そして夕食を済まして、反省会を終え、私は自分の泊まる部屋へ向かおうとしましたが、
急に尿意を催したのでトイレへ向かいました。この旅館は寝泊まりする部屋にトイレはなく、
男女で別れたトイレ室がいくつかあるのです。
私は自分の部屋の近くにあるトイレへ入り、尿を足していました。
トイレ室には小さな窓が付いていて、私がトイレをしていた時少し窓が開いていたのです。
隙間風が気になったのでトイレを済ました後、窓を閉めしました。
490本当にあった怖い名無し2019/11/14(木) 00:02:12.84ID:MEVRt6250
するとコンコンと何かたたきつけるような音が窓の外からするのです。
気のせいだとおもいましたが、その後もコンコンと窓の外から音がしました。
私は音の正体を確かめようと窓を開けました。
窓の外を見渡したのですが、暗闇と蝉の声しか聞こえません。
先程の件もあったのでまさかお爺さんがここについてきているのではないかと怖くなり、
トイレ室から急いで出ようとするとおーいと声が聞こえてきたのです。
その声はお爺さんのモノでした。
ここまで付いてきたんだと、パニックになった私は全速力で自分の部屋へ戻りました。
491本当にあった怖い名無し2019/11/14(木) 00:02:34.82ID:MEVRt6250
その勢いのまま布団に入って寝ようとしますが、怖くてなかなか寝れませんでした。
私は怖さを紛らわせるために電気とテレビをつけて、布団に入りました。
しばらくすると眠たくなってきて、うとうととしながら布の中にくるまっていると
ドアをノックする音が聞こえました。
一瞬あのお爺さんかと驚きましたが、時計を見ると就寝時間だったので従業員さんか
顧問の先生かが注意しているのかなと勝手に納得して
「すみません。」と言って電気とテレビを消しました。