438 :本当にあった怖い名無し:2012/04/22(日) 00:44:41.25 ID:w9wb6nmw0
>>437
『ちょっとまって、ちょっとまって、ちょっとまって』
先輩の話に、平然と相手をしているA、Bに対して、すでにパニックになりかかっている私。
叫びだしたかったが、恐怖のためか、緊張のためか、声が出ません。
「ああ、出るかもな。でもさ、実は百物語っていうのは、最初は、真っ暗な中、屋外で、怪談百話を話すものだったんだ。」
「へえ、初めて知った。」とB
「ああ、この辺りでは、少なくともそうだったらしい。
で、100話を話し終わると、妖怪が出るんじゃなくて、そういう物がいる異界への扉が開いてそこに引き込まれる。
ってものだったんだ。」先輩が妙に抑揚の、いや、感情のない声で話します。
「へえ、異界への扉って、漫画みたいですね。」とB
「ああ、で、明治の帝大教授や、昭和の院生も、この地に伝わるその伝説を聞いて・・・」
「ちょっと待ってよみんな!!」
やっと声を放つ私。
439 :本当にあった怖い名無し:2012/04/22(日) 00:47:00.53 ID:w9wb6nmw0
>>438
「なんだよ、○○ビビったのか?」とA
「そうじゃないよ、先輩、ここどこですか?周り真っ暗、街頭ひとつない、何時になったら高速に出るんですか?」
恐怖でほとんど涙声になっていました。
叫んでいるうちに気が付きましたが、この車、一度も止まっていません。
いや、よくよく考えてみると曲がった気配すらないのです。
周りは真っ暗、いや、ヘッドライトすらついて居なのです。
前方も真っ暗な闇です。
『なぜ今頃気が付いているんだ!!』
自分に毒づきましたが、このまま先輩の話し続けさせたら、危ない、いや、そんな生易しいものですらなくなる。
なんと言うのか、そんな言いようのない、本能的な恐怖に駆られ、私は、パニックと恐怖で、涙声になりながらもつづけました。
「よく考えろよ。なんでこんな周り真っ暗なんだよ!!
99話怪談話したんろ?いったい何時間たっているんだよ?
なのに、なぜ、何処にもつかないんだよ!!」
「もうすぐ着く。いいから黙ってろ。」抑揚と感情のない、なんというのか、先輩の声ですが、先輩でない誰かが話している、そんな感じの声でした。
「その前に車止めてください!!とにかく!!」
ここで黙ったらおしまいだ。
とにかく先輩にこれ以上話をさせてはいけない。
そんな感じで、絶叫に近い声で、先輩に言いました。
「せ、先輩、とにかく車止めましょうよ。」とB
やっと現状に気が付いたのか、Bも少々あわてた声で先輩に言います。
「話しが終わったら着くから黙って聞けって。」相変わらず抑揚のない声で話す先輩。
440 :本当にあった怖い名無し:2012/04/22(日) 00:48:15.67 ID:w9wb6nmw0
>>439
「B、ブレーキ踏め、ブレーキ」完全にパニック状態の私。
「先輩、話の前に止めて、ドア開けてください。そうしたら、聞いてもいいですから、先輩の話」Aもすでにパニック状態なのか、大声で叫んでいます。
「この山で、100物語を・・・・」完全にパニック状態の我々三人をしり目に、先輩が、抑揚と感情のない声で続けます。
「先輩、すみません!!」
そういって、Bが先輩の横っ面を殴りました。
キキキー
急ブレーキの甲高い悲鳴とともに車が止まりました。
シートベルトは着けていましたが、前席に頭をぶつけました。
「ああ、すまんみんな、大丈夫か?」と、先輩
周りを見ると、遠くですが、民家の明かりが見え、道の先にある街頭も見えます。
何よりも、ヘッドライトの明かりが見えます。
『も、戻れた』
なぜそう思ったかは知りませんが、安堵感と、恐怖から解放された感覚で、全身の力が抜けていくのを感じました。
先輩は、車から降りて、車の前の方を確認していました。
「すまん、目の前を横切った、白い影が見えたもんで。って、どうしたんだ、お前ら?」
車内3人の尋常ならざる雰囲気に、先輩が、質問します。
少なくとも、先ほどの先輩ではなく、何時もの先輩であることに間違えはないようです。
我々3人も外の空気を吸うため車外に出て、落ち着いた後、今までの経緯を先輩に話します。
441 :本当にあった怖い名無し:2012/04/22(日) 00:49:34.65 ID:w9wb6nmw0
>>440
「お前ら、俺担いでいるのか?」
先輩の話だと、山道に入って、「この辺りに神隠しの伝説がある」って話した時、黒い靄のようなものがかかった感覚があったので、
『眠気に襲われたか?』と思ったら、なんか、白い影が見えたので、急ブレーキを踏んだとのこと。
そう、その後の話は、先輩の記憶にはないのです。
先輩のはなしだと、確かに、この辺で、明治時代、昭和30年代に、神隠し事件があったこと。
この辺りの伝承だと、夜中に、屋外で、夜が更けてから、夜明けまでの間、百話怪談をすると、異界に行ける。
という伝承があること。
地元の郷土史研究家とかは、戦国や、江戸時代、まだまだ過酷で、飢饉とかに結構頻繁に見舞われていた時代。
(しかも、この辺りは、土地が痩せていて、貧しい地域だったのだとか)
そういう『苦しい浮世を捨て、別世界に行きたい』的な信仰があったから、そんな伝承が生まれたのではないか?と、言っているのだとか。
で、明治時代の教授(と、その助手たちもいたのだとか)、30年代の大学院生は、それを実行したといわれているのだとか。
「確かに俺も、その話聞いたときは、やってみたいな、って思った事はあったけど・・・」
先輩もさすがに青い顔をしていました。
時間を見ると、1時30分過ぎ、山道の入り口は、すぐではありませんが、下に見えました。
そして、車の横には、小さな、石造りの祠が見えました。
皆黙って、その祠にお祈りをした後車に乗りました。
不可思議な体験の後でしたが、なんと言うのか、もう大丈夫という、妙な安堵感があり、恐怖はあまり感じませんでした。
「わり、左の頬が少し痛むんで高速の入り口で運転変わってくれ。」
「あ、ああ、いいですよ、俺が運転しますんで」とB
その後は何事もなく無事東京につきました。
442 :本当にあった怖い名無し:2012/04/22(日) 00:51:08.50 ID:w9wb6nmw0
>>442
長文申し訳ありませんでした。これで最後です。
が、その後、いくら思い出そうとしても、30話近い怪談話は思い出せません。
最初に話した数話は確かに覚えているのですが、その後、どんな話をしたのかが、まったく思い出せないのです。
が、その不可思議な体験、何よりも、あの真っ暗な光景は、今でもありありと覚えています。
最近部のOB会で久しぶりに、先輩、A、Bと会いました。
話題になったのは、やはりあの時の不可思議な経験です。
「まあ、ハイウェイヒュプノシスとか、集団催眠みたいな状態だったのかも?」
不可思議な体験を、無理やり説明づけようとするわれわれ。
そんな私たち三人に対し、少々ためらったってから、先輩が
「実はな、あの道で、最近、失踪事件が起こったんだ。」
何でも、地元の若者たちの乗った車があの道に入ったのを目撃されたのを最後に、
その後行方不明になっている人たちがいるのだとか。