426 :オツキサン:2011/08/06(土) 10:50:24.42 ID:MFEMaJmK0
途中、Bが転んでバッグを落としたが、俺はBを抱え起こしたがバッグを取るまでの余裕までは無かった。
ふと後ろを見ると、必死に走っているにも関わらず、影との距離があんまり離れていないことに気付いたので、さらに必死になって道を下った。
そのまま麓まで下り、境内の掃き掃除をしていたであろう神主さんが、呆気にとられてこっちを見ているのが分かったので、
すぐに神主さんに泣きつき、黒い影の事を話したら凄い剣幕で3人とも怒られ、本堂に入るように言われた。
お祓いに使う時のあのモサモサで色々やられたり、詔みたいなのを聞かされたりして、暫くの間、本堂から出られなかった。
そのあともちろん、親には叩かれるし、説教されるし泣かれるし、
夏休み中であるにもかかわらず、学校に行って先生から説教されるし、俺とAは神主さんから「良いと言うまで山に近づくな」と言われるし、
色々と周りに迷惑を掛けたことが分かった。
しかしBだけは、今後はこの山だけでなく、近くの神社にも近づくなと言われていた。
俺とAは神社まで出禁にはならなかったため、次の日にもお祓いに行ったときに聞いたんだけど、内容はこんな感じだった。
427 :オツキサン:2011/08/06(土) 10:50:55.90 ID:MFEMaJmK0
何百年か前、突然この近辺に得体のしれないものが現れた。
土地神なのかどうかさえわからないが、神主さんでも今もって正体は分からない。
見た目は俺たちが見たような黒い影。
そいつは山を登り始めると後ろから時々ついてきて、その人と変わらない速度でついてくるけど、
そいつに追いつかれると祟り殺されてしまう、ということだった。
後ろから付いてくるから、大人内ではオツキサンと呼ばれてるそうだ。
つまり、オツキサンがいる山を山登り中になまじ休憩していると、オツキサンに追いつかれて祟り殺されるってことだ。
この話にはまだ続きがあり、
オツキサンは、元はもっと大きい山にいたらしいが、いつのまにか今の山に来ていた。
大きい山にいたときは少なからず被害が出ていたが、
今の山に来てからは、標高が低いことから、人が途中で休憩することもあまりないため、被害が出なかった
しかし、それを知らずにこの山で遊んでいた小さい子供が突然死んでしまったため(理由は不明だがおそらく…)、
他の山にオツキサンが移動して、これ以上被害が拡大しないためにも、この山からオツキサンを動けなくするように、周りを神社で取り囲んだ、というわけだ。
そして子供が立ち入り禁止になっている理由は、
山が一本道とはいえ体力のない子供は、途中で休まざるを得ず、その結果オツキサンに追いつかれる可能性があったこと
あとは単純に、前の例で子供が死んでしまったため、らしい
428 :オツキサン:2011/08/06(土) 10:51:27.46 ID:MFEMaJmK0
俺とAがその山に近づくな、と言われた理由は、オツキサンは普段は何もしゃべらず、ただ後ろからついてくるだけのものらしいが
俺が何か喋っているのを聞いた、ということは、視覚だけでなく聴覚による接触もあるため、通常の遭遇者よりも強い「縁」が出来てしまったこと、
このままではオツキサンの寄り代になる可能性が高く、
またその山に入った後に別の山に行くと、最悪そっちの山にオツキサンが移動してしまう可能性がある、とのことだった
そして、何より俺たちの中で、オツキサンと最も強い縁で結ばれたのはBだ。
Bの落としたバッグは、Bを抱え起こすときに、確かに俺たちの後ろに転がっていたのを俺は見たのに、
結局見つかることはなかった。
今は、時々しか地元に帰ることは無いし、そのことを話すとAもBも笑い話になるが、結局その影の正体は分からないままだった。
そして、俺たち3人の中で一番のビビリBは、あの一件以来、山恐怖症になるかと思いきや、現在大学に進学した今は登山部に入部している。
お前、他の山に影を持って行ってるんじゃないか?