怪談・洒落怖

【新作洒落怖】大広間

投稿日:2021年12月9日 更新日:

本文

279 :1/2:2006/07/09(日) 19:02:06 ID:/VSsGM1K0

父方の叔母から聞いた話です。

父の実家(田舎です)は代々裕福な家だったものの、
大正ごろにすっかり勢いが失せてしまったそうで。
けれども、古い大きな日本家屋だけは栄えていた当時の面影を残していました。

幼い頃の叔母は、そんな大きな家が大好きで、
中でも「大広間」を気に入っていたそうです。
「大広間」は何十畳もある広い和室で、冠婚葬祭のときには沢山の人がずらりと並び、
それはそれは壮観だったとのこと。
そんな部屋を独り占めにして、昼寝をするのが叔母は好きだったそうです。

ある日のこと、いつものように昼寝をしようと叔母が「大広間」の襖を開けようとすると、
襖の向こうに人の気配を感じたそうです。
誰も居ない筈なのにと不気味に思い、襖を少し開け、叔母はこっそり中を窺うことにしました。

中は薄暗く、よく様子をつかむことが出来ないものの、
最も上座のところに見知らぬお婆さんが一人チョコンと座っており、
そのお婆さんの前に、とても大きな柱時計が棺のように寝かされている様が叔母に見えました。
あまりの奇妙さに叔母がポカンとしていると、ふいにお婆さんがこちらを向き叔母と目を合わせ、
なんともいえない笑みを浮かべたそうです。

280 :2/2:2006/07/09(日) 19:03:36 ID:/VSsGM1K0

何故だか物凄い悪寒に襲われた叔母は、数秒硬直した後に我に返り、
息もつかずに「大広間」を走って離れ、曾祖母に泣きついたそうです。

叔母が曾祖母に自分が見たもののことを話すと、
曾祖母は険しい顔をして、曽祖父と何か深刻そうに相談を始めました。
相談が終わると曾祖母は叔母に、
「これから四日間、外に出たり『大広間』に近づいてはいけない。
それから、大声を上げたり、バタバタと足音を立ててはいけない」
と言いつけたそうです。

四日間、曾祖母の言いつけを守り叔母は静かに過ごしました。
曾祖母には「もう『大広間』に入っても良いよ」と言われたものの、
あのときのことが忘れられず、独りではもう「大広間」には入りませんでした。

それから、叔母(ついでに父)の育ったその家は、老朽化の為に二十数年前に改装されました。
「大広間」はその際に、半分程に縮小され内装もすっかり変えられてしまったそうです。
私は幼い頃にその家に何度か遊びに行きましたが、そのときには既に改装されていたので、
昔の「大広間」は目にしたことがありません。

少し前に叔母と話をしたときにこの話を聞き、
「曾祖母の叔母への言いつけ」の意味について伺ったところ、
叔母もそのことはさっぱりわからないとのこと。
曾祖母から家の言い伝えや習しを聞いたことは一度も無く、
不思議な言いつけをされたのはそのとき限りだったそうです。

出典http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1152269321/

 

  • この記事を書いた人

yoshida3

RECOMMEND

1

概要 2ちゃんねる・5ちゃんねる発祥の名作怪談「リョウメンスクナ」をアーカイブ&考察。 くねくね・八尺様・コトリバコなどと並んで洒落怖をジャンルとして確立した名作だと思います。 両面宿儺(りょうめんす ...

2

カルト 先日の【映画評】来る ※気持ち悪い人間関係+超絶エンタメに続き日本の除霊エンターテイメント作品をレビュー。低予算ながらしっかり除霊エンタメしてるので、オカルト好きなら必見の作品ですぞ。※知らな ...

3

オー・マイ・ゼット! 2016年制作。 東京03の角田晃広さん主演。 なんだかなあという序盤。 登場人物達の人となりや背景が描写されるも全員うさんくさいしどうでもいい感じで進行します。 後半15分ぐら ...

4

私とあの人は、世に言うところの幼馴染ってやつでした。 とは言っても、幼稚園から一緒で小学校中学校と同じクラスで……なんていう甘酸っぱいもんじゃなくて、病院でね。 私もあの人も、生まれた時から体が弱くて ...

-怪談・洒落怖

Translate »

Copyright© 怪談夜行列車 , 2024 All Rights Reserved.