856 :ドライブイン 5/9:2013/02/04(月) 21:52:11.92 ID:LwJ4NBth0
明らかにこのドライブインは何かがおかしい、現実離れしているというかなんというか…
とりあえずAとCにこちらの事情を全て話して、いったん外に出ようと話していると、休憩室のほうを見ていた女の子が
「ちょっとちょっと!あれ!」とかなり動揺した声で、俺の肩をゆすりながら休憩室の方を指差した。
指差した方を見て俺も含め全員絶句してしまった。
さっきプリクラの所にいた女の人が出てきてこちらに向かって歩いてきているのだが、その女の人『上半身がない』
のだ、厳密には下半身から上の部分が漏斗を逆さにしたように収束していて上半身というかなんというか、その
部分は棒とも紐ともつかないものが真っ直ぐ上へ伸びている、それが歩くたびにユラユラと揺れながらこちらへと向かってくる。
姿からしてどう見ても人間ではない。
俺たちはその異様な姿に完全に思考が停止してしまい、パニックになって全員外へと逃げ出した。
そして外へ出て振り返ると、その『物体』は俺たちを気にする事もなく、そのままトイレのほうへと消えていった。
一体ここはなんなのか、当時の俺たちはあまりの事に思考が追いつかず、ただただ動揺しまくっていた。
とにかくここを出よう。
そう考えた俺たちは、カーナビ通りならこの先へ進めば群馬か埼玉の街中へ抜けれる事を確認し、女の子たちには
そんなにスピードを出さないからついて来れば大丈夫と話していると、突然後ろの方、駐車場の奥の林からかなりの人数の
人影(目測でも50~60人くらい)が下りてきてこちらへと向かってくるのが見えた。
更に、人影以外に林のほうから何かがこちらに向かってジャンプして突っ込んできて、俺たちの車の隣に駐車していた
トラックに衝突した。
街灯の明かりに照らされたそれは信じられない事だが、それは1m以上ある巨大な蛆としか言い様のない物体で、
衝突した衝撃でトラックのガラスが割れ、蛆のほうは地面に落ちて黄色い体液のような物を流しながらうねうねと
動いている。
しかもそれ1匹だけではなく、少なくとも目で見える範囲だけであと7~8匹が飛び跳ねている、何匹かはこちらに
向かってきそうだ。
このままだと自分たちの車にも突っ込んできて壊されるかもしれない。
859 :ドライブイン 6/9:2013/02/04(月) 21:54:26.59 ID:LwJ4NBth0
身の危険を感じた俺たちは、女の子たちにも早く車に乗るように指示しようとしたのだが、何を思ったか彼女たちは
駐車場の反対側の方へと駆けて行き、「そっちじゃなくて車で逃げないと!」と慌てて追いかけた俺たちに
向かって「この中に入って隠れてやり過ごそうよ」と、駐車場の隅にあるプレハブの倉庫らしい小屋を指差した。
俺は彼女たちが明らかにパニックになって冷静な判断が出来なくなっていると思い、「いいから車に乗れ!」と
怒鳴って4人で腕を引っ張って無理矢理連れ戻し、かなり近くまで来ていた人影の集団と飛び跳ねる巨大な
蛆を尻目に無理矢理彼女たちを車に乗せると、パニックになった女の子たちだけでは不安だからとBとCが
彼女達の車に乗り、彼女たちの車のほうはBの運転でドライブインから逃げ出した。
道路に出て後ろを見ると、付いてきている女の子たちの車の後ろにジャンプする蛆が見えたが、流石に車の
スピードには追いつけないのか、そのうち見えなくなった。
それから1時間くらい走っただろうか(今から考えると、距離的に麓までそんなに時間がかかるとは思えないのだが)
下のほうに街の明かりが見えてきた。すると、後ろの車に乗っているCから女の子たちがトイレに行きたいと言っている
から、どこか公衆トイレかコンビニのある場所に一端停まろうと電話がかかってきた。
そして暫らく車を走らせると、公園か何かの施設の駐車場らしき場所があったので、そこで一端車を停める事に
すると、流石にあんな事があったのでトイレには俺たちも付いていこうか?と聞いてみた、すると彼女たちは流石
にもう大丈夫そうだから3人で行って来ると言い、さっさと行ってしまった。
860 :ドライブイン 7/9:2013/02/04(月) 21:56:26.53 ID:LwJ4NBth0
まあもう殆ど街中みたいなものだし、流石に大丈夫だよなとそのまま行かせて、さて警察に行くかどうするかとか、
この後どうしようかとかちょっと色々期待もしながら話をしていたのだが、いつまで待っても3人とも戻ってこない。
10分くらい経っても帰ってこないので、流石におかしいと駐車場脇にある公衆トイレへと向かい声をかけたのだが返事がない。
中を確認しようにも、いくらなんでも女子トイレに入るのは問題があるし、もしかしたらすれ違いで戻っている可能性
もあるんじゃないかと車に戻ったのだが、車にも戻っている気配がない。
ちょっとこれはヤバイかもしれない…
ひとまずすれ違いになるといけないので、俺だけ車の前に残り、A,B、Cでもう一度トイレに探しに行く事にした。
待っている間、俺は何となくだが彼女たちの車を見ると、一箇所ドアが開いているのが見えた。
あれ?帰ってきた?と思い車内をみたのだが誰もいない。
「おかしいな?さっきからドア開いていたっけ?」となんとなく車内を見ると、座席のところから3人のうち誰かの物らしい
バッグが地面に落ちかかっていて、何となく奥に戻そうと手を触れたところ、バッグが地面に落ちて中身が
ぶちまけられてしまった。
しかも口紅かリップクリームか何からしきものがコロコロと転がって行ってしまっている。
「これ戻しておかないとヤバクね?」と、転がっていったものを拾い振り返ると、トイレに向かったA,B、C達が戻ってきた。
Aが言うには、流石におかしいのでトイレの中に入ってみたのだが誰おらず、きっとすれ違いになって
しまったのだと戻ってきたのだという。
ちょっと洒落にならん事になってしまったと感じた俺たちは、ドライブインでの出来事を信じてもらえるかどうか不安
ではあったが、彼女たちの事が心配なので110番通報する事にした。
警察が来るまでの間、交代であちこち探しにいったりもしたのだが、結局見付からず15分ほどで警察がやってきた。
863 :ドライブイン 8/9:2013/02/04(月) 21:58:29.37 ID:LwJ4NBth0
警官がパトカーから降りてきたので、これまでの事情を話していると、警官が変なことを言ってきた。
「それで、その女の子たちの車ってどれのこと?」という。
俺が「いや、俺たちの車の横に停まってる…」と後ろを振り向いて呆然としてしまった、警察が来るまで間違い
なくそこにあった彼女たちの車がない…
そんな馬鹿なと4人であちこち探したのだが、そもそも駐車場には俺たちの車しかない。
明らかに不信そうに俺たちを見る警官、かなり気まずい状況になってしまったのだが、ふとさっきぶちまけたバッグを、
車に戻し忘れてそのまま俺たちの車の屋根に置きっぱなしだったことを思い出した、屋根の上を見るとバッグはある。
警官にこれが証拠だとバッグを見せて、とにかくどういう事なのか解らないけど探してほしいと頼んだ。
が、一応証拠品としてバッグは受け取ってくれたが、話自体は荒唐無稽すぎてまるで信じてもらえず、
俺たちは住所と連絡先を聞かれ、後日話を聞くかもしれないからとそのまま帰された。
この後、実はちょっと面倒な事になった。
俺たちが警官に渡したバッグ、手帳と携帯から身元がわかり、もう10年以上前に失踪届けの出ていた短大生の
ものだったらしく、俺たちは事件に関係があるのではと疑われ事情聴取を受けた。
が、そもそも10年前といえば俺たちはまだ子供である事、俺たち4人とも進学で都内にやってきただけで、そもそも
長野も群馬も地元ですらないうえに、当然失踪した短大生とも何の関係もないことはすぐにわかり疑いは簡単に晴れた。
ただ、バッグの入手先だけはかなり詳しく聞かれた。
警官が言うには、俺たちが通ってきた道に証言にあるようなドライブインなど無いのだという事で、現場検証もかねて
パトカーで来た道を逆に辿ったりもしたのだが、例のドライブインどころか『あまり整備されていない荒れた道』すら
結局みつからなかった。
ただ、事情聴取のときに見せられた短大生の写真は、3人組のうち1人で間違いはなかった。