48 :本当にあった怖い名無し:2007/09/05(水) 00:05:40 ID:769ARtY90
私もやってみる」Tの衝撃発言にびっくりして止めるより早く、Yがこちらに気がついて駆け寄って来た。その目の下は相変わらず暗い紫色だ。
「Tもやる?」「うん」誘われるがままに件の遊びを始めるT。Yが手をぐるぐるすると、Tの両腕がゆっくりと持ち上がる。
一通りの作業を終えたTと武道場を出た。恐る恐る聞いてみる。
「どうだった?」「うーん、白い手が後ろから私の手を掴んで押し上げてきた」
Tはけろりと応えたが、もうこっちは大パニックである。それが本当なら、けっこう大変なことじゃないのか。
「何それどうしよう!」「あんまりいい遊びじゃないみたいだけど、やめれば平気だと思うよ?」
そう言うとTは武道場の入り口に立って勢い良く手を叩いた。「もう先生来るよ!着替えて稽古始めよう!」
Tの言葉に、つまらなそうにしぶしぶと部員達が更衣室に入っていく。
これで、もう大丈夫らしい。本当だろうか。更衣室に向かう部員達の中に、Yを見つけた。
「Yのクマは、その霊とかとは関係ないの?」心配になって聞くと、ああそうだったと呟いて、TはYを呼んだ。
「なぁに?やっぱりOもやるの?」しつこいY。その笑顔が妙に虚ろに見えて怖い。
そんなことは少しも気にしていない様子で、TはYに後ろを向くように言った。何か新しい遊びを始めるとでも思ったのか、
素直にYは自分達に背中を見せた。するとTは、Y首の付け根あたりを、ぽんぽんと二回程、軽く叩いた。はたいたと言う方が近いかもしれない。
「はいこっち向いて」Tにこちらを向かされたYの顔は、すっかりキレイになっていた。あんなに濃かったクマが、さっぱり消えている。
呆気にとられている自分をほっといて、Yを更衣室に押し込み戻ってきたTは、
「今のは誰にでもできる簡単なお祓いだから覚えとけ」みたいなことを言った。覚えるも何ももうそんなお祓いが必要になるような体験をしたくない。
でも、不思議な出来事はこれだけは終わらなかった。
すごい。これって、ほんとに心霊現象じゃないのか。初めて見た。どうしよう。
自分がぐるぐると無駄に考えを巡らせている横で、Tは別段いつもと変わらない調子で
「着替える前にトイレに行ってくる」と言う。興奮状態だった自分だが、今Tから離れるのは心細いのでついていった。
50 :本当にあった怖い名無し:2007/09/05(水) 00:12:37 ID:769ARtY90
武道場のトイレに入る。Tは個室に。自分は特に用はなかったので、手を洗って、鏡に向かって髪型を直したりしていた。
するといきなりTが個室で「うわ!!」と大声を上げた。さっきの今なので正直飛び上がる程びびった。
すぐによろよろとTが個室から出てくる。何だどうしたと歩み寄ると、
「今背中、押されたってゆーか、叩かれたってゆーか・・・すごい痛かった」と言う。
いやいやいや。
そんなに人を怖がらせて面白いかとビビリながらも笑い飛ばすと、「じゃあ見てみろ」とTが体操着の背中をめくりあげて見せた。
確かにその背中には、今ついたばかりにしか見えない真っ赤な両手のあとがついていた。
誰かが後ろから思い切り両手を叩き付けなければできない手の向き。Tの手よりもずっと大きい大人の手のあと。
自分は絶句した。なんだこれ。
「私が遊びを中断させたから、”邪魔するな”って言われたのかも」Tは溜め息一つで事を片付けた。
自分は幽霊の存在を信じるようになった。