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633 :1/7:2009/09/10(木) 10:27:27 ID:hinMIqEV0
以前、伯母が京丹波に住んでた時の話。
俺の母親の年の離れてた姉で、子供がいなかったのもあって
半分孫みたいに可愛がってもらった伯母なんで、孝行せんといかんと思ってたんで
そんなに面倒がらずに行ってた。
まあだいたいは何か持っていく物があったり、伯母の体調が悪かったり、
何か用事があるときなんだが。
母も一緒に乗ってたこともあったが、仕事もあるし、なかなか俺の予定と
合わなかったりして大抵一人ドライブだった。
こちらは大阪北部、京丹波までは一旦京都に出て縦貫道に乗り換えると
ずっと高速で行けるんだけど、ぐるっと遠回りになるし金もかかる。
で、いつも亀岡の山を越えていた。
だいたい午後に行って夕飯を一緒に食って帰ってくるから
山を越えるのは暗くなってからだ。
真っ暗だし、車もあまり通らない。
30分ほどの間に3~4台もすれ違えばいい方、見える範囲に同じ方向に
進む車がいれば心強かった。
だが、夜は大阪側から帰ってくる車の方が圧倒的に多い。
1台だけポツーンとくねくね走ってることが多かった。
634 :2/7:2009/09/10(木) 10:28:12 ID:hinMIqEV0
ある時、山道にさしかかったところで、ふとルームミラーにチラッと
何か映った気がした。
気になったもんで、ちょっと停まってよく見てみた。
白っぽい何かが後ろの方に見える。
ふらふら動いてる。
人間?
有り得ないことはない。
すぐ後ろはまだ人家やコンビニもある町だ。
でも、この先はひたすら山の中、次の集落まで徒歩なら相当ある。
女性っぽく見えるし、危なくないのか?とは思ったが、
ふらふらと歩く様子が何となく薄気味悪いし・・・
でも、認知症の老人か、精神に病を抱えた人なら大変かも・・・と
いろいろ迷った挙句、警察に連絡して俺はスルーさせてもらうことにした。
とりあえず110番して「もしかして見間違いかもしれませんが、念のため・・・」
と、通報してその場を去った。
再び走りだした時もう一度見てみたら、やはりまだ歩いている。
さっきより若干近付いてて、若い女性のように見えた。
因みに、古式ゆかしい白装束でもなければ貞子風なワンピースでもない
普通の格好だった。
ちょっと急ぎ気味に走ってるうちにすぐに見えなくなった。
あの町に交番があるか駐在が居るか、とにかくそんなに忙しくもないだろうし、
保護してもらえるだろうと楽観していた。
相変わらず真っ暗な道をハイビームで照らしながら急いだ。
どうせほとんど対向車も来ない。
CDをガンガンにかけながら、ガンガンに歌いながら。
そのうち集落に出た。
田舎の人の夜は早く、どの家も暗い。
小さな小さな集落なんで、すぐに通り抜けてまた山道に入る。
そのとき、ミラーの中のずっとずっと後ろの方に信じられないものを見た。
635 :3/7:2009/09/10(木) 10:29:01 ID:hinMIqEV0
さっきの女。
「なんでやねん!!」本気でつっこんだのは初めてだった。
さっきと同じフラフラした歩き方、あのペースで追いつけるわけがない。
だって!今だって全然近付いてこない!
「カンベンしてくれよ!!」
1人で声に出して怒鳴った。
そこからめちゃくちゃに急いだ。
とにかくアイツから離れたい。
ただそれだけで走り続けた。
もうミラーは見れなくなっていた。
しばらく走ってるうちに少し落ち着いてきた。
待て、俺、これは死亡フラグやないか・・・
焦って運転誤ってあぼーんパターンやんか・・・
落ち着け落ち着け・・・と、少しアクセルを抜いた。
タバコに火をつけて窓を開ける。
木々がざわざわ鳴ってるのがどうしても人の声に聞こえて
ソッコーでタバコを灰皿にねじ込んで窓を閉めた。
そして、よせばいいのにミラーを見てしまった。
居る・・・ずっと後ろに・・・でもさっきよりは近い・・・
636 :4/7:2009/09/10(木) 10:29:51 ID:hinMIqEV0
とにかくカーブの続く山道なんで、後ろの女も見え隠れする。
長いこと見えない時もあった。
だが、次に見えたときには必ず距離を縮めていた。
少しずつ少しずつ近付いてくる。
追いつかれる前に山を抜けたい。
誰かに電話を・・・でも、携帯は圏外。
「くっそ!」携帯をリアシートに放り投げた。
精神的余裕がどんどん失われる。
ところどころにちょっと直線の道に出てくる。
その度に確実に近付いてる。
なんで!?あんなにスローモーやのに!
チラッとミラーを確認すると・・・
近い!もう5mも無い・・・
顔も見える。
霊って長い髪で隠しとくもんちゃうんかい!
顔出すな!ヴォケ!
すました無表情で歩いてくる。
プツンとCDが止まった。
ガチャガチャにボタンを押しまくったがうんともすんともいわない。
ミラーを捻じ曲げ、もう二度と振り返るまいと前を見据えてひたすら車を走らせた。
カーブの度にキーキーと音をたてる。
生コンの作業場のあるところに出た。
緩やかな左カーブ、暗いドアミラーの中に白く浮かび上がる影、
半泣きではなく、全泣きで走った。
この先右手は深い崖、落ちたら死ぬ・・・落ち着け!
今思えばちょっとおかしくなってたのかもしれない。
しょうもないことを思いついてしまった。