453 :5:2009/08/27(木) 02:35:12 ID:qAzyC9Vy0
なぜかというと、俺達は確かにあちこちを録画して回ったはずでその記憶もあるし、逃げ出したときの記憶もある、
当然3人とも記憶に不一致は無い。
しかし動画内で俺達はなぜかずっと車の中におり、ビデオカメラは後部座席に固定されている。
動画が流れ始めて20分くらい、なぜか俺達が無言のまま座席に座っているところが映し出されていた。
動画が20分を過ぎた頃、後部座席にいたOがドアを開け、やはり無言のまま外に出ると姿が見えなくなった。
そしてそこから5分ほど過ぎた頃、俺とTもドアを開けると外に出て、動画には誰もいない映像がそこから
10分ほど映されていた。
動画の中で、俺達は一言も会話をしていなかった、聞こえてきていたのはドアを開ける音や外からかすかに聞こえて
来る虫の声のみだった。
そこで一端Oが動画を止め、俺とTに「どう思う?」と聞いてきた。
俺は「どう思うと聞かれても…なんだよこれ…」と答えるしかなかった、動画の中で俺とTとOは俺達の中にある
記憶とは全く違う行動をしている、そんなものどう答えたら良いのかなんて解らない。
Tも当然同じ意見だった。
Oは「そうだよな…でさ、この後の映像も変なんだよ…」と言い、停止していた動画を再生し始めた。
暫らく誰もいない車内とフロントガラス越しに見える外の景色が映っていたのだが、更に4~5分すると
車の前方の方に人影が見えた。
その人影はどんどん車の方へと向かってきており、暫らくするとそれがぼさぼさの髪のおばあさんである事が解った。
Oはそこで「こいつだよ、こいつ!俺の腕掴んで引っ張ったの!」と少し興奮気味に言い出した。
そのお婆さんは、暫らく車のボンネットに手を着くと、にやにやと笑いながら車内を見ていたが、すぐに
もと来た道へと戻っていった。
454 :6:2009/08/27(木) 02:36:11 ID:qAzyC9Vy0
おばあさんが見えなくなった直後頃、動画に変化があった。
急に俺達が騒いでいる声が聞こえ始め、やばいやばい!と叫ぶOと何が起きたか解らないまま動揺している俺とT
が映し出された、それは本当に唐突で、まるで車の付近にずっと待機していて、急に慌てる演技をし始めたかのような
不自然さだった。
そこからの映像は車を発進するまでしか録画されていなかったが、間違いなく俺達の記憶にある映像だった。
しかし一つ不思議な事があった、Oは録画直前に女装したはずで、元の服に着替えたのはドライブインについてからだ。
しかし、なぜか動画内のOは普通の服のままだった。
一体Oはどこで服を着替えたのか…
何もかもが不自然でおかしい、俺達の記憶と全く違う内容の動画に、3人とも完全に混乱してしまっていた。
動画を全て見終わってから、Oは「でさ、今日のことなんだが…」と話し始めた。
Oは「昨日の夜に寝てさ、今日気が付いたらなぜか○○川(地元の比較的大きな川)の橋のところで、お盆の上に
水の入ったコップを乗せて立っていたんだよ。俺そんなことした記憶全く無いのに…」という。
俺は今朝の出来事を思い出し、TとOにその話をした。
Oに話しかけたが全く気付く様子がなかったという事を。
それからOはこう続けた。
「それでさ、わけわからないまま家に帰ってきたら、急に“あの動画を見なければいけない”という気持ちになって、
それで見たらあの状態だったからさ…少し悩んだけどお前達にも見せたほうが良いと思って呼んだ訳」という。
そこでTがこう言った「この動画のフラッシュメモリーさ、このままにしておくのヤバくね?お払いとかしてもらった
ほうがいいんじゃないか?」と。
俺とOもそれには同意見で、早速近所のお寺にビデオカメラと問題の動画の記録されたフラッシュメモリーを
持ち込み、和尚さんに事情を話した。
和尚さんは半信半疑で俺達の話を聞いていたが、動画を見せると暫らく考え込み、「このカード暫らくあずからせて
くれないか?」と言って来た。
俺達はこんな気味の悪い物をもう手元に置いておきたくなかったので、二つ返事で同意するとフラッシュメモリーを
和尚さんにあずけ、携帯の連絡先を伝えるとお寺を後にしてその日は解散した。
456 :7:2009/08/27(木) 02:36:57 ID:qAzyC9Vy0
翌朝、俺は混乱していた。
朝目がさめると、昨日のOと同じようにお盆の上に水の入ったコップを乗せ、○○川の橋の上に立っていたから。
そして、その横には放心状態のTもいた。
Tは何度か呼びかけても返事がなかったが、肩をゆするとハッとした顔をして俺の方を振り向き、「俺今何してた?
ここどこ?????」と言い出した。
俺は昨晩家の布団の中で寝て、それから今まで起きていなかったはず、Tも同じ状況だったにも関わらず、
気が付いたらここにいたらしい。
俺は気味が悪くなり、ひとまずOに電話をした。
Oは寝起きで最初寝ぼけていたが、事情を話すと俺の家まで来てくれた。
そして、3人で相談してもう一度昨日のお寺へ行って事情を話す事にした。
お寺に着くと事情を解っていたからか、和尚さんはすぐにあってくれた。
3人に起きた事を和尚さんに話すと、和尚さんは腕組みをして暫らく考え込んでいたが、何か思い出したかのように
暫らく席を外すと、お守り袋を3つもって戻ってきた。
そして俺達にこう言った「3人とも、もうこの事は忘れなさい、そしてこのお守りを1年間肌身離さずもっていなさい、
そうすれば今日あったようなことはもう無いはずだから」と。
そして、「フラッシュメモリーだっけ?これは引き続きうちであずからせて欲しい、それでいいか?」と聞いてきた。
和尚さんは何か俺達の身の上に起きた事情が何なのか、何となく解っていそうだったが、結局俺達にはなにも
教えてはくれなかった。
俺達もその事を深くは追求しなかった、とううよりしないほうが良いと感じた。
それから俺達は高校を卒業し、進路もばららばとなり、俺は都内の大学に進学した。
TとOとは今でも連絡を取り合っているが、あの人の事は話題に上がることは殆ど無い。
和尚さんに言われたとおり、お守り袋は今でも肌身離さずもっているせいか、あれ以来俺達に記憶の喪失や
おかしな出来事は起きていない。