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0800 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:35:11.76ID:vNwO2gi/0(1/12)
山でヘンテコな鳴き声の生物に襲われた話
子供の頃の不思議な体験。
俺ん家のすぐそこに山があるんだけど、今の時代だとグーグルマップで見ればどのくらい広い山だったか簡単に確認できるのな。
子供ながら結構低い山だなーって思ってたんだけど、調べたら俺の地元の町が三つか四つくらい入るほど広大で驚いた。
子供の頃は、その山に入って栗とかどんぐりなんか拾ってたし、友達と一緒の時は山の中で鬼ごっこやかくれんぼなんかしてよく遊んでたんだけど、今思えばよく遭難しなかったななんて当時の俺を褒めてあげたい。
実際は、中腹くらいからでも意外と見晴らしがいい場所があるし、木々の隙間から町並みが見えるから遭難することはなかったんだけどな。
でも、実は一度だけ俺はその山で遭難っていうのか、迷子になった事があるんだ。
当時はその事を親に言っても信じてもらえなかったけど。
子供の俺はその日も山で一人で探検ごっこして遊んでたんだけど、拾った木の枝なんか振り回して蜘蛛の巣もおかまないなしに山道を突き進んでたんだ。
すると、何か奥の方から『クゥ、クゥ、クゥ』なんて鳥か小動物っぽい鳴き声が聞こえて来たから「なんだろう」って思い、声のする方へ登ってみた。
最初は全然鳴き声との距離感が縮まらなくて不安になってきたんだけど、もう十分以上くらい声を頼りに奥深くまで入ると、ちょっと平らな場所に抜け出た。
0801 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:36:54.24ID:vNwO2gi/0(2/12)
で、その平らな場所に隠れ家みたいな小さな小屋があった。
小屋か納屋か知らんけど、廃屋みたいな古びた外観だった。
でも、森林に囲まれて苔や蔦が生えた退廃的な感じが妙に神秘的で「ほえ〜」なんて見とれて圧倒されてた。
でも『クゥ、クゥ』という小さな鳴き声はそこから聞こえてるようだった。
俺は今にも崩れ落ちそうな風化したドアをノックした。
「だれかいますかー?」
勿論、返事なんかある筈がないと思ってたんだけど、何かドタドタと音が鳴ったと思ったらドアが『バン』と勢いよく開いた。
そのせいで俺はドアと一緒に吹き飛ばされて後ろに転げたんだけど、「いってー!」と声を出して見上げれば目の前に変な動物?が居て困惑した。
というのも、小屋から出てきたのは、人間みたいな体型に口だけ土竜みたいなヘンテコな見た目をした動物。
大きさは子供の俺と変わらないくらいなんだけど、腕は胴体の左右じゃなくて、胸と背の前後に生えてた。
0802 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:38:07.23ID:vNwO2gi/0(3/12)
そして、両足は膝下あたりまで水掻きみたいな膜がついてて、基本的にはケンケンするように歩いてる。
その体の作りのせいか、姿勢は横から見ると「く」の字を描いてた。
そんな感じの見たことが無い動物みたいな奴が『クフー』なんて口から息を撒きながら俺を覗き込んでた。
胸元の腕がこっちに伸びてくると、俺は咄嗟に「うわっ」って慌てて手にしていた木の枝で払い除けた。
枝先がソイツの手に当たったのが不快だったのか、ソイツは『キィーーーーーッ』と猿みたいな金切り声を発して、土竜の口を大きく開口した。
口の中は気持ち悪いくらいに糸を引いてて、鮫みたいな歯が奥まで生えてた。
それを見て、俺は「あ、喰われる」と思って翻って逃げ出した。
俺が背中を向けて逃げ出した時、猿の金切り声が重なって聞こえた。
走りながらだけど気になってちょっとだけ振り返ってみると、小屋の中から同じ見た目の生物が二体、三体と出てくるのが見えた。
「やば」と呑気に口にしつつも、俺は本気でその場から離脱を始めてた。
枝木なんか関係無しに風を切るようにして下へ下へ向かって走った。
何度も転びそうになってはぶっとい木に衝突しかけたが、幸い大きな怪我も無く、衝突は回避できたし、たぶん人生で一番早く走れた気がするほどその時の俺の足は速かった。
0803 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:40:08.97ID:vNwO2gi/0(4/12)
でも、そんな猛スピードで下山してるのに一向に町並みは見えてこなかった。
いつもなら斜面が下る方を向けば、うっすらと町の輪郭というか、木々の向こう側に建物の影が肉眼でも見る事ができる。
それなのに、どれだけ下っても建物一つ見えてこなかった。
不思議なことに枝木の先にはひたすら山道が広がってた。
町が見えてこないせいで急激に疲労が襲ってきた。
さっきまではアドレナリンが分泌されてたのか、全然疲れなかったんだが、一気に心臓にきた。
足を止めて近くの大木に寄り掛かり息を整えるついでに後ろを振り返る。
あのヘンテコな生物は追ってきていないようだった。
逃げきれた。
そう思った矢先、遠くの方から『ホオオオオン』と遠吠えみたいな叫び声が聞こえた。
0804 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:41:20.69ID:vNwO2gi/0(5/12)
聞いたことが無い鳴き声だったけど、すぐにアレの声だと思い到った。
アレが追いかけてきていると思い、俺は息をつく暇もなく再び下山を始めた。
それから何時間下山をしているのか分からないくらい山道を下っていたと思う。
最早疲労困憊で走ると言うより足を引きずるように小走りだった。
日は既に傾いていて夕暮れになり、一向に山を抜け出せないから半泣きで鼻をすすっていた。
変な鳴き声は遠くの方からだがずっと後方から聞こえてくる。
終わりの見えない鬼ごっこをさせられている気分だった。
夜になったら何も見えなくてまともに歩けなくなると不安だったが、ちょうど巨木が倒れて屋根になった穴倉もどきを見つけた俺は、ひとまずそこに身を潜めた。
夜になれば当然気温が下がり肌寒くなってくるし、疲れ果てたせいかお腹が空いていた。
今頃両親は俺を心配して探しているだろうか。
0805 本当にあった怖い名無し 2024/03/07(木) 14:42:26.85ID:vNwO2gi/0(6/12)
今日の晩御飯は何だったんだろう。
そんな事を考えれば考える程、お腹は空くし、涙が出てきた。
どのくらいその場に居たか分からないが、いつの間にか俺は体育座りした状態で眠っていた。
それでハッと飛び起きて周囲を見渡したら既に朝になってて、昨日の変な生物がいないか倒木の穴倉から身を乗り出して確認したが、どうやら気配はないっぽい。
下山するなら今しかないと思った俺は、寝起きすぐに立ち上がって、立ち眩みと戦いながら山を下り始めた。
だが、数分もしないくらいかな。
また遠くの方だが『ホオオオン』って遠吠えが聞こえたからかなりビビった。
続けて風なのか分からないが、何か周辺の草木がガザガザガザっと揺れ始めるもんだから、いよいよ生きた心地がしなかった。
それでも必死に山を降り続けたんだけど、茂みを抜けたところで俺は愕然とした。
俺が飛び出した所は、昨日変な生物が出て来た小屋がある場所と瓜二つだった。