怪談・洒落怖 殿堂入り洒落怖

【洒落怖殿堂入り】おじゃま道草【名作】

投稿日:2019年8月20日 更新日:

概要

あまり有名ではない(?)が非常に魅力的なお話。
とても長いですが面白いのでぜひ読んでみてください。

名作洒落怖【おじゃま道草】本文

507 :おじゃま道草 <1> 1/2:02/05/26 13:58
7年前の6月、夜10時ごろ、自宅の電話がなりました。いつになく、どきっとする音だったのを覚えています。ミュージシャンの馬場君からでした。
-- どうもオカシイ、口では説明できない。夜分申し訳ないが、来てみてほしいとのこと。
馬場君はバンドの合宿所として、川越に近い、ある一軒家に引っ越したばかりでした。いつにない彼の深妙な声に、いやーな緊迫感を感じましたが、長い付き合いの彼の頼みなので、行ってみることにしました。
そして、出かけようと玄関にでた瞬間、目の前のドアを誰かがいきなりノック。
開けてみると、友人の茅野君が一升瓶をかかえて立っていました。
馬場君に呼ばれて出かける旨を話すと、
-- 馬場君とは面識も有るし、単独で行くべきではないと思うので同行すると言い出しました。

とりあえず車を出し、その車中で話し合いました。その日はたまたま暇で、急に私の顔を見たくなったのだそうです。茅野君はもともと感の鋭い人で、私の顔を見た瞬間、「何かあったな」とピンときたといいます。
馬場君はいくつかの因縁を抱えた人で、以前から問題を起こしやすいタイプの人でした。茅野君は、私を通して、馬場君の波乱万丈ぶりを知っていましたが、今回は今までとは違うように感じる、という点で、意見が私と一致しました。

508 :おじゃま道草 <1> 2/2:02/05/26 13:58
車で30分ほど走ったとき、茅野君が突然、
-- うわぁーーっ
と声をあげました。
話を聞くと、
-- 一瞬道路の前方に、身長50mはあろうかという真っ赤な仁王さんが、「来るな!」のポーズで立ちはだかったというのです。
彼はその当時、仏像の知識をほとんど持ち合せておらず、「仁王」と表現しましたが、後日写真集を見せて確認したところ、明王部の中でも不動明王の立像に一番似ていたそうです。

初めての訪問だったので、馬場君に最寄りの駅前まで迎えに出てもらいました。
馬場君を駅で拾い、車中で「何事か」と問うと
-- 格安で二階家、いい物件だと思ったが、どうもオカシイ、とにかく来て、見てから、意見を聞かしてくれ。
といいます。
到着すると、そこは目の前を高速道路が走り、雑木林に三方を囲まれた10戸ほどの分譲住宅の中にある一軒でした。囲まれていない開いた方の、道路に面した角にたっており、築10年位でした。
車を降りると、まず、私はその家に向けてカメラのシャッターをきりました。
梅雨の中休みといった気候で、蒸し暑い夜でした。

509 :おじゃま道草 <2> 1/3:02/05/26 13:59
「はまったな」、、、その場に立った時の素直な感想でした。

その家の外見で気になった点を挙げてみましょう。
・全ての敷地内の雑草が外側へ向かって伸びている。
・敷地内の南西の角に3本の木(高さは2階の軒とほぼ同じ)がある。
・3本の内、南よりの1本は立ち枯れになっている。
・分譲住宅なので、周囲の家屋と同時期の築のはずだが、それだけが傷みが大きい。

隣の住人が網戸ごしにこちらを覗いているのを気にかけながら、中へ。

-- むさ苦しいところだが、まあはいってくれ。
馬場君のさそいに、玄関へ一歩。
「く、くさい、何だ?」、、、というのが内部を見た第一印象でした。
茅野君は開口一番、
-- 猫、飼ってるのかな?
私もそれに相槌をうつと、馬場君は、
-- うちには居ないが、周りには何匹かいるよ。匂う? やっぱりなあ。
いくら掃除しても、抜けないんだよね。
玄関から上がってすぐ左が階段。玄関(西)から正面(東)へ真っ直ぐに廊下があり、突き当たり右(南東)がダイニングキッチンで、左(北東)が浴室。
私たちは、上がって右手(南西)のバンドの練習室に通されました。
-- す、涼しい、、いや、寒い、、エアコンは?、、な、ない!、。
窓は?、、閉じてる。
窓の外に妙に目立つものが、、、。よく見ると枯れ木でした。

510 :おじゃま道草 <2> 2/3:02/05/26 13:59
-- この部屋が1階では一番まともなんだ。
マネージャーの女の子が茶を入れている時、やっと馬場君が話を始めました。
馬場君の話の概要は、
・1階で寝るとうなされることがある。
・2階に全員が居る時、1階から話し声が聞こえる。
・1階から上がってくる足音がしたのに誰も来ない。
・引っ越してきた時、押入の中にケース入りのゴルフクラブ一式が残されていた。
・台所に行くのをみな嫌がる。
といった現象なのですが、猫について次の様な体験を話してくれました。

-- 昨日、2階に居たら1階で物音がしたんで、
「買物に行ってたヤツが戻ってきたかな?」と思って下へ降りてきたんだ。
そしたら、玄関のドアは開いてたんだけど、誰も居ない、、。
よく見ると、近所の猫が入り込んでたんだな。
ところがそいつがなかなかつかまらない。ちょっと掴むと、必死で引っ掻いて抵抗する。この引っ掻き傷、見てみなよ。
そこで、窓を開けてやったんだな。
ところが追い回したけど、猫は窓を無視するんだね。
そして、そのうち、猫が玄関へ走ったんだ。
「やった、出てくぞ、、、」
そう思ったら、猫が変な行動をとったんだ。玄関に降りるやいなや、ビタッと立ち止まって急に向きをかえたんだね。
そして俺の足下をぬけて階段上がって、2階の窓から屋根越しに逃げたんだ。
で、さぁ、、、。
その、玄関での行動なんだけど、本当に変なんだよね。何か、目の前に恐ろしいものでもいて、あわてて引き返した、、、という感じなんだ。俺に追いかけられるよりは、よほど怖そうだったよ。

511 :おじゃま道草 <2> 3/3:02/05/26 13:59
この話を聞いた茅野君は、
-- その猫、何かに操られてたんじゃないかなぁ。
と、コメント。
私は、その話の間も、廊下を猫が行ったり来たりしている様な感じがしていました。
-- その猫はたまたまそうなっただけで、
普段は生きていない猫がうろうろしているみたいだね。
私がそういうと、すかさず茅野君は、
-- うん、今も廊下をふっと影が通った様な気がしたよ。
と、意見が一致。
しかし、大切なのは、さっきの茅野君のコメントです。私は、茅野君の勘(感)を生かすつもりで、彼にたずねました。
-- でも、本体は猫じゃないな。台所へ行ってみる?
-- いいや、今はよすよ。明後日は休みだから、明るいうちに来よう。

この後、馬場君からもう少し話を聞き、新曲のデモを聞かせてもらい、台所には足を踏み入れず、午前2時ごろ帰途につきました。

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やこう

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