やこう

ご乗車ありがとうございます。 車掌は怪談や奇談、洒落怖、ホラーなど、『怖いモノ』をジャンル問わず収集しているオカルトマニアです。 皆様も「この世発、あの世行き」の夜の寝台特急の旅をごゆっくりお楽しみください。

第三部 十一話 怪異の正体

民明放送で起きた心霊現象は日本に戻ってからも続いていた。 南米数カ国を巡る取材旅行に行くことになったのは、雑誌創刊30周年を記念した大特集のテーマに、オーパーツという今更なコンテンツを特集したいと編集長が言い出したからだ。 オーパーツなんて私が子供の頃にはすでに研究本やオカルト本は出尽くしているわけで、何を今更と思いながらも、会社のお金で南米旅行に行かせてもらえるのは素直に嬉しく、雑誌社に勤めてよかったと思える出来事でもあった。 騒ぎになった怪談ナイトのライブ中継が放送されている頃、私のいたメキシコは朝だ ...

第二部 十話 暗闇の惨劇

京都から帰った翌日、仕事の合間にツイッターやLINEやメールで各種の問い合わせや苦情に対応しつつも、俺はすっかり油断しきっていた。 民明放送の会議室で番組を継続するかどうか揉めた時も、解決したのだからこのまま続けたいという意見を、阿部ちゃんと一緒になって思いきり主張した。 ありがたいことに訴訟を起こされなかったことも番組継続の後押しになった。 あの放送から一週間。 今夜のラジオでこちらが把握している全てをありのままに発表するつもりだった。 もちろん立花さんのことなどは言わない予定だが、勧請院さんが現在も目 ...

第二部 九話 専門機関・高頼寺

高頼寺には30分ほどで到着した。 境内は広く、駐車場も20台ほど停められるスペースがある大きな寺だった。 相楽氏達が乗る高頼寺のワンボックスに並んで車を停める。 僧侶達が慎重に箱を境内へと運んでいく。 相楽氏が俺達に向かってこちらへどうぞというジェスチャーをする。 「まずは本堂で皆さんのお祓いをしましょう。本格的なお祓いは元凶の箱をなんとかしてからになりますが、取り急ぎ皆さんの体についた障りを祓います」 そう言って建物の方へ歩き始めた。 否応無しに着いて行く。 建物の中に入ると線香の香りが強くなり、自然と ...

第二部 八話 それでも進まなければ

気がつくと車は停止していた。 後頭部の痛みで現実に引き戻される。 阿部ちゃんはハンドルにもたれかかって肩を震わせている。 「うぅ……」 「痛てて……すいません」 後部座席の皆も生きてるようだ。 まだ少しぼーっとしていた頭がだんだん冴えてきた。 目の前には崖側に大きくひしゃげたガードレールが見える。 …………クソ! 一気に覚醒して車から飛び出す。 壊れたガードレールから崖下を覗くと、100メートルほど下に立花さんの車が見えた。 爆発炎上ということはなさそうだが明らかに大破している。 「…………」 助けなけれ ...

第二部 七話 つきまとう怪異

快調に高速を飛ばして昼過ぎには名古屋を通過。 高速を降りて国道へ入り、しばらくして山の中へと進んでいく。 だんだんとカーブが多くなっていき、人里離れた山道をひた走る。 山に遮られて日の光が届かない山道は薄暗く、ヘッドライトをつけても充分に注意しなければならない。 のだが、後ろからついてくる立花さんの車間距離がやけに短い。 煽っているようにぴったりとついてくる。 カーブに差し掛かるたびにブレーキを踏む阿部ちゃん。 当然だ。 しかしその度に立花さんの車と接触するんじゃないかとヒヤヒヤする。 「くっ……」 阿部 ...

第二部 六話 ネット炎上。救いを求めて京都へ。

「現状わかっている範囲で、友達や家族が自殺あるいは自殺未遂という書き込みが数件。番組あてに報告してきてる数なんで実際にはそれ以上いると思われます。本当に死んじゃった人の数は不明ですが、まあ……ゼロってことはないと思います」 「…………」 阿部ちゃんが淡々と読み上げる報告書の内容に言葉が出ない。 「自殺や未遂の他にも、体調を崩した書き込みは山のようにあります。無言電話とかポルターガイストとか窓の外に人影なんていうのはもう数えきれないぐらいなんで、途中で数えるのやめました」 「…………」 「炎上…って言ってい ...

第二部 五話 この悪夢は現実です

一体何がどうなっているのか。 予定より少し遅れて開始した生放送は1時間も持たずに中止となった。 派手にぶっ倒れた勧請院さんの容体を確かめる。 机にぶつけた拍子だろうか、結構な量の鼻血が出ている。 倒れ込んだまま動かない勧請院さんの肩を揺する。 右京さんは何もせずに見ているだけだ。 こういう時はどうしたら……。 小林アナが勧請院さんを手早く抱き起こして上を向かせている。 反応早いね。 その対応であってると思うよ。 などとたわいもない考えが頭をよぎる。 突然の事態に思考停止しているのが自分でもわかる。 「救急 ...

第一部 四話 恐怖の拡散

右京「じゃあ続きいきます?」 ジロー「お願いします」 そうしてまたすごい勢いで右京さんが写真を鑑定していく。 右京「これは抜け殻、これも抜け殻、こっちは本物、これはそもそも偽物、これは抜け殻、これは本物……ていうかなんだこれ……」 不意に右京さんが手を止めた。 霊能者さんの前に写真を並べようとした手を引っ込めて、まじまじと写真を見つめる。 小林「右京さん?」 右京さんは写真をゆっくりとジローさんに手渡した。 霊能者さんは目の前に並べられた写真から目を逸らさない。 小林「えっ?…これ?……なんですかこれ…… ...

第一部 三話 心霊写真鑑定ライブ配信

画面には白い部屋が映し出されている。 会議室のような白い壁の部屋に大きな机が置かれて、その向こうからこちらを向く形でジローさんを含めて4人の人物が座っている。 左から小林アナ、ジローさん、右側にいる長髪サングラスの男性が右京さんだろうか。 そしてその隣の黒髪の女性が霊能者の人だろう。 普段のラジオでは顔が見えないので、こんな風にジローさんを見るのは新鮮だ。 画面の中のジローさんが画面の外に向かって話しかけている。 音声は聞こえない。 まだ準備中のようだ。 程なくして音声が聞こえてきて、OK?OK?というや ...

第一部 二話 悪ノリ

ラジオがCMに変わり、地元の中古車販売店の広告が流れてくる。 「…………」 ジローさん、自由だな。 ジローさんはたまに思いつきで番組内容を変更して小林アナを困らせることがある。 ラジオを聴いている側としては楽しくていいのだが、小林アナの苦労人ぶりが伺えて少し可哀想に思う。 過去に何度か、ジローさんのあまりにも無茶な提案に小林アナが本気で怒っている放送回があって、明らかにテンションの低くなった小林アナを尻目にジローさんがマイペースに放送を続けるという、聞いているこちらがドキドキしてしまうことがあった。 そう ...

第一部 一話 深夜ラジオ

窓を叩く雨音が強くなってきた気がする。 時刻は深夜1時に近づこうとしている。 夕方からポツポツと降り出した雨は、今ではサーサーという雨音が室内まで聞こえるほどになり、さらに先程から風も強くなってきたようで、時折バタバタッと窓に雨が打ちつけてくる。 四月に入ったというのに最近やけに冷えることが多い。 寒の戻りというのだろうか。 「…………」 モニターに目を戻し、BGMとして再生していたYouTube動画を停止して、ラジオアプリを起動する。 お気に入り登録の一番上にあるラジオ番組のタイトルをクリックする。 深 ...

【洒落怖殿堂入り】裏S区・異聞【考察】

概要 737本当にあった怖い名無し2018/08/22(水) 22:18:27.54ID:GFD/dKU50>>738>>739 結構みんなが食いつくおもしろい話を飲み屋で聞いたので投稿したいと思う。 書き溜めてあるから連投になるが、ちょっと長いけどいい? という書き込みで始まった投稿。 これははたして裏S区のことなのだろうか。。。? 名作洒落怖【裏S区・異聞】本文 739本当にあった怖い名無し2018/08/22(水) 22:25:39.61ID:GFD/dKU50 >&g ...

【洒落怖殿堂入り】裏S区・後編【考察】

概要 コチラのお話の続き。 投稿主が友人から聞いた裏S区での体験談を語っています。 怪異そのものよりも、裏S区の大人達の異様さにじんわりと恐怖が滲んできます。 名作洒落怖【裏S区・後編】本文 836 :763 ◆MOBqqkAfh6 :2007/03/15(木) 05:34:27 ID:nyVgvoIt0 アクマで聞いた話の為本当かどうかは不明。(俺の体験だと本当と言い切れるが人の体験なので) 自分の体験をS区出身の友人に話したところ彼が(仮にKとする)俺に酷似するような体験があると言い出したので聞いた話 ...

【洒落怖殿堂入り】裏S区【考察】

概要 九州のある地域に伝わる風習・民間信仰・呪術・霊への対処などなど。。。 完成された世界観と実体験だからこその意味不明な恐怖の数々。 映像化絶対不可能なリアルな心霊体験をお楽しみください。 名作洒落怖【裏S区】本文 763 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/03/14(水) 04:54:54 ID:Xss+iCNa0 [1/24] 長文です。 九州のある地域の話。 仮だがS区という地域の山を越えた地域の裏S区って呼ばれてる地域の話。 現在では裏とは言わずに「新S区」って呼ばれて ...

事故物件【首くくりの町・外伝】

年の瀬も押し迫った12月のある日、姉からの指令を受けた俺は大手町にある賃貸マンションの一室のドアの前にいた。 不動産を手広く扱う姉の会社が管理する物件で、今は借主のいない空室である。 預かっていた鍵を使って玄関を開ける。 まだ14時だというのに早くも日は傾き始め、雑居ビルに囲まれた部屋の中は薄暗かった。 玄関から中を見通すも部屋の中に差し込む光はなく昼間という感じがしない。 「ふむ」 溜息ともいえる頷きをひとつ。 俺は意を決して靴を脱いで部屋の中に入った。 いるのだろうか。 この部屋に。 首を吊って死んで ...

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