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駅のホームにいる霊がどう見てもウルトラマンにしか見えない件(朗読会用)

投稿日:2020年2月29日 更新日:

136さんこんにちは。
初めてDMいたします。

僕が見たモノがなんだったのか、136さんならわかるかもしれないと思って、ご連絡させて頂きました。

数年前、僕が学生だった頃のこと。
通学に使っていたJR立川駅での出来事です。

僕は昔から人には見えないモノが見えてきました。
オバケだと思うんですが、人の形をしているわけではなく、白っぽいモヤのような感じで見えるんです。
動き回らず、風が吹いても飛ばされるわけでもなく、ただそこに突っ立っている感じです。

子供の頃はそれが怖くて親に聞いたりしたんですが、親には見えていないので、バカなこと言うなと叱られていました。

今でも見えていますが、それを人に話すことはありません。
変な奴だと思われるのがわかってますから。

大学を出て医療系の専門学校に入り直した頃、通学のために毎日 立川駅を使っていました。
立川駅の青梅線(おうめせん)ホームにヤツはいました。

街中で見かけるモヤは当然ながら駅にもいるわけで、毎日それらを眺めながら通学していたんですが、ある時それらのモヤが減っているのに気づいたんです。
「あれ?今日はいつもよりモヤ少ないなー」という感じです。

それから毎日数えたんですが、明らかにモヤの数が減ってきている。
日に日に減っているモヤの数を気にしながらさらに1ヶ月ほど経った頃、ヤツを見つけました。

煙っぽいというかモヤっとしていて輪郭のないモヤ達の中に、明らかに人の形をしているモヤが混じっているのが見えたんです。
顔らしき輪郭があって、胴長で手足もしっかり生えている。
細身でヒョロ長い人間らしい形をしたモヤでした。

質感というか 白くてモヤっとした見た目は 他のモヤ達と一緒です。
初めて見る人型のモヤが気になってずっと目で追いかけていました。

動いている。
他のモヤ達と違ってソレは自由に動き回っていました。
歩くというよりはスススーと滑るように移動して、他のモヤ達のそばに移動する。
そして腕に該当する部分を持ち上げて胸の前で交差するのが見えました。

体の前でバッテンを作った人型モヤ。
その腕からプシューッと霧吹きのようなモヤが飛び出して、そばにいたモヤに降りかかりました。
その霧のようなものを吹きかけられたモヤは、空気に溶けるように消えたんです。

何が起きたのか分からず見ていると、人型モヤは交差していた腕を下ろして、またスススーッと他のモヤに近寄って行きます。
そして腕を交差させてプシューッと霧吹きのようなモヤを吹きかけて、それを浴びたモヤは溶けるように消えていく。
あれよあれよという間にモヤの数はどんどん減っていき、そしてその人型モヤ自身もフッと薄くなって消えました。

消している。
あの人型モヤは他のモヤ達を消して回っているんだ。
僕は興奮していました。

それから毎日、立川駅を使うたびに人型モヤを探しました。
そして結構な確率でヤツは現れました。
唐突にフッと現れて、他のモヤ達のそばに寄っていき、交差させた腕から霧状のモヤを発射して、浴びせられたモヤは消滅し、ある程度の時間が経つと人型モヤも消える。

そんな光景を何度も見るうちに僕は、「どう見てもウルトラマンだろ」と思うようになっていました。
腕からプシューッと出していたのはスペシウム光線だと。
なんらかの理由で現世にとどまる可哀想な霊達を彼は助けているんだと思って、僕は彼の活躍を楽しみに見守るようになりました。

完全に誤解していたんです。

卒業を目前に控えたある日、僕はとうとう人型モヤに近づいてみることにしました。
卒業したらこのホームは使わなくなるので、その前に彼の勇姿を目に焼き付けておこうと思ったんです。

人型モヤがスペシウム光線で他のモヤを消しているすぐ真後ろに近寄り、ヤツの背中側からその様子を観察する。
それまでどんなモヤにも触れることはできなかったし、向こうから僕を認識したこともなかったので、大丈夫だと思い込んでいました。

「写真撮れないかな」と思って、スマホを取り出して人型モヤに向けます。
その瞬間、人型モヤの顔の部分がグルンと勢いよく振り返って僕を見ました。

目が合ったとわかって心臓が止まりそうになりました。
今までモヤだと思っていた人型モヤの顔には目と口があったんです。

ムンクの『叫び』みたいな印象。
つるりとした輪郭に、二つのまん丸な目と大きく開いた口。
目と口に該当する部分には、何やら黒くて小さなウネウネしたものが蠢いていて、それが集まって目と口のように見えているのがわかりました。

目が合った状態で僕は固まっていました。
2メートルも離れていない距離で僕とヤツは見つめ合っています。
真っ白な頭のまま、僕は人型モヤの身体がねじれていくのを見ました。

スマホを向けようとした僕に、頭の部分だけをグルンと180度回転して顔を向けた人型モヤ。
その頭部を追うように上半身がギギギと僕の方に向きました。
両手を交差させた状態、スペシウム光線を打っていた姿勢のままで。
ムンクみたいなまん丸の目と口が、縦長に変形していくのが見えました。
怒ってる?
消されるの?
そう思った瞬間すぐそばのスピーカーから、「1番ホームに到着の電車は〜」というアナウンスが大音量で聞こえてビクッと体が跳ねました。

おかげで身体が動くようになったので、到着していた電車に駆け込みました。
振り返るとさっきまで僕がいた場所に向かって、人型モヤがプシューッとスペシウム光線を吹きかけているのが見えました。

あれを浴びたら消えていたのかも。
そう思うと怖くて仕方がありませんでした。
ドアが閉まって電車が走り出すまで僕は人型モヤがこっちに来ないか警戒していましたが、ヤツはフッと消えて僕を追いかけてくることはありませんでした。

以上が僕の体験です。
あれ以来立川駅は使っていません。
たぶんヤツは今でも立川駅の青梅線ホームで、他のモヤ達を消して回ってるんだと思います。

悪い霊、可哀想な霊達を消して回っているウルトラマン的な存在だと思っていましたが、あの顔を見てしまってはとてもじゃないけどまともな存在には思えません。

136さんやリスナーの皆さんで、アレがなんなのかわかる人がいたら教えて頂きたいです。

  • この記事を書いた人

やこう

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