『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

オリジナル作品 第四作 深夜ラジオ

第一部 三話 心霊写真鑑定ライブ配信

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画面には白い部屋が映し出されている。
会議室のような白い壁の部屋に大きな机が置かれて、その向こうからこちらを向く形でジローさんを含めて4人の人物が座っている。
左から小林アナ、ジローさん、右側にいる長髪サングラスの男性が右京さんだろうか。
そしてその隣の黒髪の女性が霊能者の人だろう。
普段のラジオでは顔が見えないので、こんな風にジローさんを見るのは新鮮だ。
画面の中のジローさんが画面の外に向かって話しかけている。
音声は聞こえない。
まだ準備中のようだ。
程なくして音声が聞こえてきて、OK?OK?というやりとりの後、ジローさんがカメラ目線になった。

ジロー「えー、YouTubeをご覧の皆さんこんにちは。怪談ナイト特別ライブ配信が始まりました。怪談蒐集家の近藤ジローです」
小林「こんにちは!民明放送アナウンサーの小林明美です!そしてジローさんのお隣にいるのが美術品鑑定士の神楽坂右京さんと、そのお隣にいるのが霊能者の勧請院互秋さんです。お二方、今日はどうぞよろしくお願いします」
右京「よろしくお願いします」
互秋「よろしくお願いします」

画面の中で小林アナが、今回のライブ配信の経緯を説明している。
麦かぼちゃさんはいないみたいだ。
出演はしないのだろう。
私と日菜は机に並んで座り、たわいもないことを喋りながらパソコンのモニターを眺めている。
霊能者の人がお祓いのようなことをしている間、ジローさん達は霊能者の人に向かって軽く頭を下げた状態でじっとしている。
たっぷり数十秒かけて霊能者の人がお経を唱えたあと、画面の外から箱が持ち込まれた。
ジローさん達が座る机の上に、大きなスーツケース程の大きさの木の箱が置かれた。

ジロー「えー、こちらが、麦かぼちゃさんのお祖父さんが心霊写真を溜め込んでいたという箱です」
小林アナ「ずいぶん大きいですね」
ジロー「大きいね。いったい何枚入ってるやら」
小林「何か感じます?」
ジロー「いや、俺は全然。右京さんは?」
右京「いや俺も今のところは何も」
ジロー「勧請院さんも?」
互秋「そう…ですね…私も今のところは何も見えないですね。ただ…」
ジロー「ただ?何か感じますか?」
互秋「すごく嫌な気配がします。嫌な匂いというか」
ジロー「匂い?」
互秋「私、昔からそうなんですけど、こういうのって匂いの強さでヤバいかどうか何となくわかるというか、ヤバイ時は臭いですね」
ジロー「今は?」
互秋「結構…臭いですよ」
ジロー「どんな匂いとか、あるんですか?」
互秋「えーと…ですね、腐った水というか、ドブ川みたいな、生臭いんですよ。とにかく臭い」
右京「死臭ってやつですよね」
ジロー「なるほど。それがこの箱からすると」
互秋「しますね。少しですけど」
小林「大丈夫ですかね」
互秋「大丈夫……とは言いきれないですね。さっきからずっと鳥肌立ってるんですよ私」
ジロー「うーむ。でもまあ番組始まっちゃってるんで、これで終わりにするのはちょっとね」
右京「とりあえず見るだけ見てみますか」
ジロー「そうだね。一応何枚かだけでも見ないことには何も分かんないからね。いいですか?」
互秋「はい…まあ…じゃあどうぞ」

箱が開けられ、出演者全員が箱を覗き込んでいる。
おーとか、うわーとか言ってるけど画面越しには全然伝わらない。
箱の中がどうなってるのかわからない。
と思っていたらカメラが激しく揺れて、箱の中を映し出した。
手持ちでカメラを動かすとこんなに揺れるんだ。
と思いながら画面に集中する。
箱の中には本当に無造作に大量の写真が放り込まれていた。
古ぼけた色合いの写真が何枚も、表向きだったり裏返しだったり、とにかく凄い数だ。
画面の隅々まで見る間もなく、カメラの位置が元に戻される。

ジロー「えーとですね、安全かどうかも分からないので、箱の中はこんな感じですよというのを一瞬だけお見せしました。詳しいことはこれから右京さんに鑑定してもらいながら、お見せできるものは順次お見せしていきたいと思います。それでは右京さん」
右京「いっちゃいますか」
ジロー「お願いします」

右京さんが箱の中に手を伸ばして一枚の写真を手に取った。
ふーむと言いながらしげしげと眺めている。
裏返して、また表に戻して、数秒そうしたのち、
「なんもないですね」
と言った。

ジロー「何もない?」
右京「はい。この最初の一枚は何もないです。元々は何か取り憑いてたのかもしれないですけど、今は何もない。抜け殻ですね」

こんな感じです、と言ってカメラに写真を向ける。
最初の写真は海辺で撮られた古い写真だった。
家族を写したものだろう、母親と子供二人が並んで笑っている写真。
ただ、右側の男の子の足、その左足が太ももから下は写っていなかった。
体の一部分が消えているという、よくある心霊写真だった。

小林「だ、大丈夫なんですか?いきなりカメラに映しちゃって…」
右京「大丈夫大丈夫、さっき言ったとおり今は何もないから。完全に抜け殻の元心霊写真ね」
右京さんが写真をヒラヒラと振りながらジローさんに手渡す。
ジロー「左足が消えちゃってるけど、それは大丈夫なの?」
右京「わからない。そういうのって先祖の警告とか、怪我の予兆とか言われてるけど、もう古すぎて警告の意味ないよね。今更その写真で何かを警戒しても遅いでしょ。その彼がその後どうなったのか知らないけど、今となってはただの元心霊写真」
小林「いいんですかそんなことで?」
ジロー「いいも悪いもないよ。もしなんらかの警告だったとしても、麦かぼちゃさんのお祖父さんが写真をこの家族に渡してない以上、この彼に何かあったとしても俺達の責任じゃない」
小林「まあそうですけど……」

たしかに。
そういうのって写真屋さんが勝手に隠したりしてもいいのだろうか。
たとえ心霊写真でも、お客さんのものなんだから勝手に隠したり処分したりするのはどうかと思う。まあ今更の話だけど。
右京さんは次々に写真を取り上げては鑑定していく。
最初の1枚とは違って、写真をパッと見てすぐに判断しているようだ。
これは抜け殻、これも抜け殻、これは現役、これは抜け殻、これは現役でお祓いが必要、というように、まるで作業のように次々に写真を取り出して分類していく。
現役、というのが本物の心霊写真であるらしく、抜け殻と違って丁寧に霊能者さんの前に並べていく。
霊能者さんは並べられる写真をじっと見つめている。

小林「ちょ、ちょっとちょっと……早すぎません?」
右京「本物はしっかり見るのが嫌なの。俺だって怖いんだから。本物か偽物かはきっちり仕分けるんで、詳しいことはプロの人に見てもらってください」
小林「ええ?いや……いやいや…ちょっと……ちょっと一旦ストップで!」

小林アナが右京さんを止める。
ジローさんはニヤニヤしながらそれを見てる。
抜け殻、と放り投げるようにジローさんの目の前に重ねられた心霊写真を見てから、その写真をカメラに向けて差し出して私達に見えるようにする。
それらの写真は年代もシチュエーションも様々で、色鮮やかなものや白黒に近いものまである。

「…………」
大丈夫なのだろうか。
十数枚めくって、霊能者さんの前には3枚の心霊写真が並べられていた。

小林「勧請院さん…どうですか?」
互秋「そう……ですね…今のところは……大丈夫です」
ジロー「大丈夫というと?」
互秋「霊は憑いてますけど、それほど強い力は感じません。多分…年月によって弱まったのか、元々そういうものなのかわかりませんが、今のところ危険な感じの写真はありません。もちろんここにあるのは持ち帰ってお焚き上げしますけど、今すぐどうこう、というほどではないです」
ジロー「なるほど」
右京「でしょ?俺だって危険なやつだったら迂闊なことはしないって笑」
小林「はあ」
右京「じゃあ続けるよ?」
ジロー「いや、その前に。勧請院さん、その本物の心霊写真はどういった感じのやつなんですか?」
互秋「えーと…この1枚目。これは山で撮られた写真なんですけど、この右側に顔みたいなものが写ってますよね?」
そういってジローさんに写真を見せる。
ジロー「あーはいはい。顔ですね」
互秋「これは自然霊で特に害のないものです。未だにこの写真の中に留まっているのは不思議ですけど、別になんのつもりもなくただ写っちゃった、という程度のものです」
ジロー「なるほど。じゃあカメラに映しちゃってもいい?」
互秋「はい。特に害はないので」
ジローさんが本物と鑑定された心霊写真をカメラに向かって差し出す。
画面に大写しになった写真をよく見ると、たしかに写真の右上に渦巻きのような靄があって、中心に人か猿みたいな顔がボヤけている。
害はないと言われても本物と鑑定された心霊写真だ。
私も日菜もキャーキャー言いながら渦巻き状の顔を指差して興奮していた。

ジロー「他のは?」
互秋「この2枚目……これはちょっとカメラで写すのはやめたほうがいいですね」
そう言ってまた写真をジローさんに見せる。
互秋「この写真真ん中の女性。右肩に誰のものかわからない手が乗っかってるじゃないですか」
ジロー「あーこれは……うわー……乗ってるね……あー……」
互秋「これは人によってはちょっと危険です。波長が合っちゃうと霊障とか起きるかも」
ジロー「なるほど。じゃあその次は?」
互秋「これもカメラに映しても問題ないかと」
そう言ってジローさんに写真を手渡す。
互秋「これは生き霊が写り込んだ写真です。この男性に振られたのかなんなのか、とにかくこの男性に対してもの凄い恨みを持った女性の生き霊です。強い念が実体化したものですけど、怨念はこの男性に対して向けられているので、他の人間が見ても特に害はないかと」
ジロー「なるほど」

ジローさんが小林アナと写真を眺めてから、また写真をカメラに向かって差し出した。
クラブのような場所でサングラスをかけた男性が白い歯をニッとむき出して笑っている。
その男性を覆うように、赤い靄が写り込んでいた。
次々に映し出される本物の心霊写真に私達は最高に興奮していた。
YouTubeのコメント欄がもの凄い勢いで流れていく。

右京「じゃあ続きいきます?」
ジロー「お願いします」

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やこう

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