『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

オリジナル作品

外国人労働者07

部屋の真ん中に立って小刻みに頭を動かす女の霊。 部屋の中に渦巻いていた靄はすっかり消え失せている。 女の霊の「あ゛っあ゛っ」という不快な声が部屋に響いている。   老師がお札と鈴を手にゆっくりと歩み寄る。 女の霊は動かない。 ただ立ち尽くして頭を振っている。   「△△!□◯◯△◯」 老師が何事かを唱えながら、女の霊の胸のあたりにお札を貼り付ける。 空いた手で印を結んで、貼り付けたお札にさらに何かを書き付ける動作をする。 女の霊が頭をガクンとうなだれた。 動けないようにしたのだろうか。 ...

外国人労働者06

「…………」 思わず息を飲む。 改めて見るとやはり異様な光景だった。 ボロボロに傷つけられ首から血を流している女性の霊。 前後左右に小刻みに頭を揺らしながら「あ゛っ…あ゛っ…」と呟いている。 あ、と、だ、の中間のような「あ゛っ」という声に不快感と恐ろしさを覚える。 その言葉?声?の中に感情や意思が含まれていない、爬虫類あるいは昆虫のような、意思疎通の絶対不可能な断絶を感じる。   老師はお経を終えて女の霊を見る。 と同時に女の霊がまた、揺れながらリーさんの方へと歩き出す。 老師は動かない。 何事 ...

外国人労働者05

「お茶……買ってきましたけど……あれ?」 雪村君は何が何だかという顔で部屋の中を見回している。 部屋の中には倒れて動かないハオさんと、血を吐いて気絶しているリーさん、そして並んで正座して額にびっしょり汗をかいている俺と伊賀野さんがいる。 「笠根さん?……どうしたんすか?」 雪村君がおずおずという様子で聞いてくる。   ブハー!と大きく息をつく。 「いやあヤバかった!雪村君、助かったよ、ありがとう」 「え?……はあ…まあ……え?」 「ホンさんの他にとんでもないオバケが出てきてね。雪村君がピンポン押 ...

外国人労働者04

「先生からOKと言われました。先生が来るまで私がホンさんの相手をします」 相手をする、とはどういうことだろう。   ハオさんはスーツ姿のまま床にあぐらをかいて、クローゼットから出してきたアタッシュケースの中から何かを取り出して目の前に並べていく。 綺麗な刺繍の入った布を広げ、その上にお札、鈴、線香、蓋のついた線香立て、木彫りの飾りのようなもの、その他よくわからない物を並べて、胸の前で手を合わせた。 線香に火をつけて消し、煙をたなびかせる。 その線香を両手で持ち、お経のようなものを呟く。 しばらく ...

外国人労働者03

中野の工事現場で彼と雪村君を広い、伊賀野さんに指定された場所へと向かう。 先方との面会場所は横浜のとあるホテルの一室だった。 中華街からそこそこ離れた場所にある控えめなホテル。 安宿とまではいかないが、お世辞にも豪華とは言えない一般的なホテルだった。   「…………」 伊賀野さんは有名な霊能者と言ってた気がするが、お金持ちではないのかもしれないな。 なんとなく中華街で円卓を囲んでるイメージをしていたから調子が外れた気がする。   「…………」 そんなこと考えていても仕方ないので受付を素 ...

外国人労働者02

その日は雪村君に彼を連れて帰ってもらった。 仲間のところに連れて行くのか、雪村君の家に泊めるのか知らないが、とりあえず今日のところは何も起きないだろうと言っておいた。 確証はないけども。   「…………」 さて困った。 一方通行の意思疎通はできるものの、それで除霊なんかできるはずもない。 あの父親の霊が何を訴えているのか、それが分からなければ始まらない。 「…………」 通訳だ。 何はともあれ通訳が必要だ。 中国語と日本語が理解できる人で、さらに霊のことを見たり聞いたりできる人物。 「…………」 ...

外国人労働者01

一昔前に、外国人労働者が酷い環境で働かされているというニュースを目にしたことがあった。   主に中国から密入国した労働者が多額の借金をカタに奴隷のような労働を強いられているというもので、現地のブローカーに騙されて日本に来たが最後、言葉も分からず友人も親戚もいない異国の土地で労働力を搾取され、タコ部屋にすし詰めにされて酷い環境で働かされながら貧困に喘いでいる、というような内容だった気がする。   そういったタコ部屋なんかがガサ入れされ、悪徳業者が摘発されるニュースなんかをしょっちゅう見た ...

月明り ~稲川淳二風怪談~

本編:月明かり 私とあの人は、世に言うところの幼馴染ってやつでした。 とは言っても、幼稚園から一緒で小学校中学校と同じクラスで……なんていう甘酸っぱいもんじゃなくて、病院でね。 私もあの人も、生まれた時から体が弱くて、物心ついた時にゃ病院で、入院したり退院したり入院したり退院したり、そんなことを繰り返してましてね。 学校なんかろくに行けやしない。 それでも病院に行けば大抵の場合あの人と会えるんで、私は病院に行くのが嫌いじゃなかった。   あの人は脳みその腫瘍かなんかの病気で、私は心臓が弱っちくて ...

山に入れなくなった話  第6話 後日談

振り返ってみれば一連の怪現象に悩まされたのはたった四日間の出来事だった。 あのビデオ編集の仕事をした日から数えると結構な日数になるのだが、伊賀野いがのトク子の死を知り、寺社を巡って御守りやお札を集め始めたのはつい六日前のことだ。   「…………」 凄まじい四日間だった。 あの霊に翻弄ほんろうされ続けた四日間。 特に最期の二日間はキツかった。 木崎美佳の姿をしたアレにつきまとわれ、最悪なことに死人まで出てしまった。 「……………」 タッキーと伊賀野さんのお弟子さん達。 取り返しのつかない犠牲を思う ...

山に入れなくなった話  第5話 最終話

夕方まであてどもなく渋谷の街を歩いた。 腹が減ったらファーストフードで飯めしを食い、店から出たらまた歩き続けた。 途中何度も木崎美佳の姿をしたモノがちょっかいをかけてきた。 背中の後ろで気味悪く笑ったかと思うと、交差点の向こう側でこっちを見ていたり、ファーストフードの店内で机の下から俺を見上げていたり、トイレを終えて手を洗う時に鏡の中から俺を見ていたり、もうありとあらゆるタイミングで存在をアピールしてきやがる。 「くそったれ」 木崎美佳がちょっかいをかけてくるたびに罵倒ばとうの言葉を吐はいたが、木崎美佳は ...

山に入れなくなった話  第4話

目を覚ますと俺はまた病院にいた。 あの時と同じ病院のようだ。 病室に入ってきた斎藤さんが、俺の意識があるのを見て怯えた顔をしたあと、ベッドの側に来て「よかった……今、先生を呼んで来ますね」と言った。   医師の検診を受けしばらくボーッとしていると笠根さんが入ってきた。 「やあ前田さん、どうも」 そう言って笠根さんはベッド脇の椅子に腰かけた。 「無事……とは言えないけど、とりあえず元気そうでよかった」 さっきまでと服装が違う。 俺はつい今まで笠根さんのお寺にいたはずだが、まさかぶっ倒れたのだろうか ...

山に入れなくなった話  第3話

※登場人物が多くなったので名前を公開することにしました。 俺…前田浩二 看護師さん…斎藤さん ビデオに出ていた女の子…木崎美佳 霊媒師のおばさん…伊賀野トク子 「わかりました。ちょっと待っててくださいね」 そう言って斎藤さんは部屋を出て行った。 あたりは静まり返っている。 カーテンの隙間から窓が見えて目をそらす。 いるのか? 何が? あの映像に映っていた木崎美佳なのか? それとも木崎美佳の格好をした何かなのか? わからない。考えたくもない。でも何か考えていないと怖くて叫び出しそうだ。 目が、合ったからだろ ...

山に入れなくなった話  第2話

高校を卒業した俺は大学に進学せず映像系の専門学校に進んだ。 その学校の卒業生が立ち上げた代々木の小さな映像制作会社に就職したのだが、この選択がまずかった。 なんせ零細企業のため人がいない。 社長を含め5人しかいない会社なので、打ち合わせから撮影、編集に至るまで全てこなせないと仕事が回らないのだ。 当初は全ての制作過程に携われるのが楽しかったが、入社して3年も経った頃には段々と苦痛になっていった。 特に営業が辛かった。 先方の要望を聞き、おおよその予算を伝え、企画を取捨選択して実現可能なプロジェクトに落とし ...

山に入れなくなった話  第1話

子供の頃、俺は山で遭難したことがあった。 俺の地元は結構な田舎で小学校は人数が少なく、同学年は2、3人しかいない。 1~6年生全て合わせても20人ちょっとという有様で、それなりの校舎はあるものの全生徒が1つの教室で授業を受け、他の教室は無用の長物という扱いだった。 教室は1つで先生も1人。 まあ見事に過疎った町だったわけだが、当時の俺にはそれが普通でその町が世界の全てだった。   その日、俺は友達のAとBを連れて山に入ってみることにした。 普段から山には入るな、山に入るとモノノケに食われるぞ~と ...

首くくりの町  第11話 最終話

  それからは皐月も私も大変でした。 もちろん皐月の方が何百倍も苦しいのですが、私の方も寝るたびに皐月が怨霊に殺される様子を見るので全く体が休まらず、睡眠による疲労の回復などができないまま日々が過ぎていきました。 皐月がシズ婆さんのお役目を夢で見ているときは数日に一度という頻度でしたが、私と皐月のお役目コンビは毎日必ず怨霊に向き合っていました。 皐月の体は眠り続けたまま病院のサポートにより栄養が保たれているので大した変化はありませんでしたが、私の方はみるみる痩せていき、半年たった頃には自分でもオ ...

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