オリジナル作品

第三部 三話 呪者の影 3

翌日、笠根さん指定の時間まで俺と由香里は病院の前の喫茶店で時間を潰していた。 時刻はお昼前。 今日は仕事が休みの由香里は、普段よりもカジュアルな格好でいるらしく、時折すれちがう同僚の看護師さんに茶化されていた。 隣にいる俺をネタに談笑する同僚なんかとはそれなりに仲が良いのだろう。 皆とても怪奇現象に悩まされているとは思えないほどに気楽な雰囲気だ。 そう指摘すると由香里は苦笑して言った。 「病院から外に出るだけで気持ちが楽になるのよね。私もそうだもん。職場に戻るとまたあの嫌な空気になるから、休憩の時はほんと ...

第三部 二話 呪者の影 2

ハオさんのおごりで本場仕様の四川料理を堪能して、俺と笠根さんはハオさんと別れた。 水煮牛肉(スイジューニュールー)という激辛煮込みを食べたために口の中がビリビリしている。 「もうちょっと飲んで行きませんか?」 そう笠根さんに聞いたら笠根さんもそのつもりだったらしく、手近な居酒屋に移動することにした。 ヴヴヴとスマホが鳴ったので画面を見ると由香里からの着信だった。 時間から考えて、仕事が終わったタイミングで電話をかけてきたのだろう。 笠根さんに軽く手をあげて電話に出る。 「もしもし斎藤さん、今晩は」 わざと ...

第三部 一話 呪者の影 1

笠根さんからの久々の呼び出しを受けた俺は池袋の北口にある中華料理店に来ていた。 北口を出てすぐの、プチ中華街とも呼べるエリア。 なんの食材かわららない中国語表記の食材が所狭しと並んだ食材店の隣、地下へと降りる階段の先にある本場仕様の中華料理店。 およそ9割の客が中国人という異国情緒あふれる店内には、やはり中国語のBGMが流れ、ジャッキーチェンが振り回してそうな椅子が丸いテーブルを囲むように配置されている。 笠根さんの姿は見えない。 約束の18時まではまだ少しある。 忙しなく働く店員さんを捕まえて、席を予約 ...

【ありがたすぎてシェア】「拝啓タラチヒメ様」に対する台湾の皆さんの反応

Unlin やこうさん、こんにちは。 今回もPTTのコメントを翻訳しました。色々な意見があって良かったですね!是非ブログにシェアしてください! いつも怖くて面白い話を書いてありがとうございます。 「拝啓タラチヒメ様」に対するコメント ha**: まさか続きがあるなんて! gd**: 待っていました! IB**: このシリーズは本当に面白いですねXD ea**: ツンデレなタラチヒメ様~ ru**: なんか前田さんは長生きできそうな気がしますね……(ずっとついていない意味 ka**: 更新した! ly**: ...

第二部 四話 ジサツオフ エピローグ

ヨミは勧請院さんではなかった。 私は夜のニュースでそれを知った。 東京で3件、大阪で1件の集団飛び降り自殺を引き起こしたヨミが西新宿に現れた。 今度はビルの上ではなく人が行き交う路上に、ビルとビルの間からフラフラと現れたのだという。 初めは誰も気付いていなかった。 誰かがヨミだ!と叫んでも、ほとんどの通行人は怪訝な顔をするだけだったという。 しかし間近にいた人から悲鳴があがり始め、通行人の一人が車道に飛び出して車に跳ねられた。 それでパニックになった通行人は我先にとヨミの近くから逃げ出した。 そうこうして ...

第二部 三話 ジサツオフ 3

タツヤさんがやってきたのは集団自殺が起きた翌日だった。 ピンポンが鳴ったと思うと、返事を待たずにタツヤさんが部屋に入ってきた。 いつものようにお酒の入ったレジ袋をぶら下げている。 「おかえりなさい」 レジ袋を受け取ってお酒を冷蔵庫にしまう。 タツヤさんを出迎える時は「おかえり」と声をかけるのが習慣になっている。 別に同棲してる訳じゃないのだが、週の半分はこの部屋に泊まっていくので、いつのまにかそうなっていた。 作り置きしていたおつまみを小皿に盛り付けてテーブルに並べ、簡単に作れるものはチャチャっと作ってそ ...

第二部 二話 ジサツオフ 2

目が覚めたのは真っ白な部屋だった。 何が何やら分からずボーっとしていたら、ガチャっと音がして数人が部屋に入ってきた。 白衣を着た医師風の男2人と、女性の看護師さん。 どうやらここは病院のようだ。 医師が私の状態をチェックし、看護師さんが水を飲ませてくれる。 どうしようもなくダルくて頭痛も酷かったが、健康状態には異常がないと言われた。 喉がカラカラだったので水を立て続けに飲んでいたら、次は尿意に襲われた。 部屋に備え付けてあるトイレに行くにも、体が言うことを聞かない。 看護師さんに支えてもらいながらどうにか ...

第二部 一話 ジサツオフ 1

「苦しくない楽しい方法ありますよ。よかったら何人かでジサツオフしませんか?興味あればDMください」 そのリプライが来たのはついさっき。 いつもネガティブなツイートばかりを呟いているお気に入りアカウントのツイートを見ていたら、変なタグを見つけた。 何人かが♯ジサツオフというハッシュタグをリツイートしているらしい。 大元の呟きは30分ほど前だ。 「♯ジサツオフ開催します!参加希望者はタグ付けてリツイートしてください。すぐに消されると思うので短期決戦いきます(^^)v」 その呟きに「本当だったら興味ある」とリツ ...

第一部 三話 魔女

池袋、渋谷と続いた集団での飛び降りは結局その後、新宿でも発生した。 1日に3カ所で集団が飛び降りたという衝撃は、当日翌日のニュースを独占するだけでなく、事件から2週間経った今でも必ずと言っていいほどワイドショーの話題を独占し続けた。 一体なんのために、飛び降りた人達にはどのようなつながりがあるのか、自殺ではなく殺人の可能性は………。 憶測は尽きなかったがその中でも最も話題に上っているのは、謎の女についてだ。 あの日、池袋の映像で飛び降りを思いとどまってビルの屋上に消えたように見えた女性。 その女性は渋谷の ...

第一部 二話 霊能者インタビュー 嘉納康明 2

―――まずは嘉納さんのお仕事についてお聞かせください。職種でも肩書きでもなんでもいいので。 「ふむ。職種は霊能者でいいでしょうな。肩書きだと当研究所の所長です。あとはいくつかの企業や団体の相談役という名刺もあります」 ―――相談役ですか。 「ええ。多少は占いもできますから、企業や政治家の相談に乗ったり吉凶を占ったり、顧問弁護士みたいなもんです」 ―――なるほど。 「あとは過去に解決した案件で恩義に思ってくれて、相談役ということでお給料を出してくれる会社さんもありますな」 ―――それは心霊関係の? 「そうで ...

第一部 一話 霊能者インタビュー 嘉納康明 1

月刊OH!カルト創刊30周年記念企画である「歴史ミステリー徹底検証!幻のオーパーツ大特集!!」という編集長キモ入りの一大プロジェクトはじつに無残な結果となった。 カラー写真満載でこれでもかと世界各地のオーパーツを紹介したものの、読者から帰ってくる反響は「ふーん」程度のものしかなく、私をはじめとした編集部の面々も、ああやっぱりねという顔で結果をスルーすることにした。 苦虫どころかイナゴの佃煮が歯にはさまったような顔でオフィシャルサイトのアクセス数をチェックしていた同僚がため息をついてノートパソコンを閉じた。 ...

【ありがたすぎてシェア】「外国人労働者」に対する台湾の皆さんの反応

Unlinやこう様、こんにちは。unlinです。 今度の《外国人労働者》の翻訳もまた台湾の皆から沢山の意見をもらいました。その一部を翻訳します。 「外国人労働者」に対するコメント 01、02から sさん:この作者の作品が大好きです! cさん:ニーハオ!ところで、笠根さんは「はい/いいえ」だけで答えられる問題で洪さんに尋ねればいいのになぁ。 yさん:おお!これからの翻訳も楽しみにしています!作者さんにも、受賞おめでとうございます! Mさん:今回はまさかの格闘系XD sさん:死んだ後でも第二外国語が必要なんで ...

【ありがたすぎてシェア】「山に入れなくなった話」に対する台湾の皆さんの反応

台湾の皆さんはじめまして!ユウと申します。 台湾のPTTから来ました! ある方がやこうさんの文章を訳してくれ、 とても怖くて面白かったです。 続きが気になって、原文を読んだ。 とても良いです。 特に神さまは良くも悪くも恐ろしい御存在って、 鳥肌が立ちます。 とても良い話です。 下手な日本語がごめんなさい。 感動しました。 ユウさんへ。 コメントありがとうございます(^^) お話を楽しんでいただけたようで嬉しいです。 台湾の神様はどんな御方なのでしょうか? 気になります。 良かったら教えてくださいね。 次の ...

【ありがたすぎてシェア】「深夜ラジオ」に対する台湾の皆さんの反応

Unlinやこう様、ご無沙汰しております。 年が明けてから仕事が増えて、そして新型コロナの影響も大きいため、なかなか時間が見つかりません。 ここから、深夜ラジオの台湾読者のコメント翻訳を貼りますね。 (01と02は第一部前半と後半で、03と04は第二部前半と後半です。05、06と07は第三部で、08は第四部です。) 01「深夜ラジオ」「悪ノリ」に対するコメント dg**:臨場感あふれる>._< dr**:たくさんの写真で蠱毒を行なうということでしょうか? ru**:緊張感がみなぎっています! ...

拝啓 タラチヒメ様 04

なんだこれは。 何が起こった? 「…………」 俺は事態が飲み込めず、周りの景色を見回す。 見渡す限りどこまでも木々が広がっている。 足場は悪く太い木の根が血管のようにうねっている。 薄暗く、湿気が強く、濃密な木と土の匂いが辺りに満ちている。 人の手の入っていない原生林。 かつて少年期に迷い込み、2年前にも不思議な力で呼び込まれた、故郷の山。 あの恐るべき神様がうろつく、神の庭だ。   「…………」 なんだこれ。 心臓が早鐘を打ち始める。 冷や汗が頬を伝う。 やばいぞ。   その言葉が頭 ...

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