『怖い』を楽しむオカルト総合ブログ

怪談夜行列車

第六作 闇の鳴動

第四部 一話 老師(仮題) プレビュー

翌日、ハオさんから指定された場所の前で笠根さんと待ち合わせた。 渋谷の駅から少し離れた住宅街にあるヨガスタジオ。 お洒落なママさん達が好むような外観にしつらえられたきらびやかな一軒家を前に俺達はたじろいでいた。 「…………」 閑静な住宅地の風景にとけこむお洒落なスタジオの前に男が2人。 顔はイケメンとはいえ垢抜けているわけでもない地味な服装の笠根さん。 アウトドア仕様の無骨なカメラバッグと三脚を担いだ俺。 なんという場違い感だろうか。 別に悪いことをしているわけでもないのに気後れしてしまう。 「ここ…です ...

第三部 五話 呪者の影 5 エピローグ

霊安室の扉が閉まってから1時間近く経っただろうか。 開閉スイッチの赤いランプが点滅したかと思ったら、鉄の自動扉がゆっくりと開き始めた。 10分ほど前に由香里が、霊安室から滲み出ていたドス黒い気配が消えたと言っていたが、それでも思わず身を固くして扉を見つめる。 「…………」 霊安室の中は扉が閉まる前と違って明るい。 若干疲れた顔の笠根さんと困惑気味の篠宮さん、そして何故かやけに堂々とした伊賀野さんが部屋から出てくる。 なにやらテンションの違う3人の表情に引っ掛かりを覚えるも、とりあえず無事に出てきてくれたこ ...

第三部 四話 呪者の影 4

薄暗い霊安室の中、笠根さんと和美さんが読経する声が響く。 扉が閉まる直前、前田さんが叫んだようだったが、こちらが反応する前に扉は完全に閉まってしまった。 おそらくこの場にいる霊が何かして脅かしたのだろう。 前田さんには後でフォローを入れておいた方が良いかもしれない。 勧請院さんのように、この場で霊を祓ったと思っても、実は前田さんに憑りついていて…なんてことがあってはいけない。 慎重に過ぎることはない。 読経が始まってすぐ、霊安室の中に霊の気配が満ちた。 それは読経によってもたらされる清浄な空間を闇で塗りつ ...

第三部 三話 呪者の影 3

翌日、笠根さん指定の時間まで俺と由香里は病院の前の喫茶店で時間を潰していた。 時刻はお昼前。 今日は仕事が休みの由香里は、普段よりもカジュアルな格好でいるらしく、時折すれちがう同僚の看護師さんに茶化されていた。 隣にいる俺をネタに談笑する同僚なんかとはそれなりに仲が良いのだろう。 皆とても怪奇現象に悩まされているとは思えないほどに気楽な雰囲気だ。 そう指摘すると由香里は苦笑して言った。 「病院から外に出るだけで気持ちが楽になるのよね。私もそうだもん。職場に戻るとまたあの嫌な空気になるから、休憩の時はほんと ...

第三部 二話 呪者の影 2

ハオさんのおごりで本場仕様の四川料理を堪能して、俺と笠根さんはハオさんと別れた。 水煮牛肉(スイジューニュールー)という激辛煮込みを食べたために口の中がビリビリしている。 「もうちょっと飲んで行きませんか?」 そう笠根さんに聞いたら笠根さんもそのつもりだったらしく、手近な居酒屋に移動することにした。 ヴヴヴとスマホが鳴ったので画面を見ると由香里からの着信だった。 時間から考えて、仕事が終わったタイミングで電話をかけてきたのだろう。 笠根さんに軽く手をあげて電話に出る。 「もしもし斎藤さん、今晩は」 わざと ...

第三部 一話 呪者の影 1

笠根さんからの久々の呼び出しを受けた俺は池袋の北口にある中華料理店に来ていた。 北口を出てすぐの、プチ中華街とも呼べるエリア。 なんの食材かわららない中国語表記の食材が所狭しと並んだ食材店の隣、地下へと降りる階段の先にある本場仕様の中華料理店。 およそ9割の客が中国人という異国情緒あふれる店内には、やはり中国語のBGMが流れ、ジャッキーチェンが振り回してそうな椅子が丸いテーブルを囲むように配置されている。 笠根さんの姿は見えない。 約束の18時まではまだ少しある。 忙しなく働く店員さんを捕まえて、席を予約 ...

第二部 四話 ジサツオフ エピローグ

ヨミは勧請院さんではなかった。 私は夜のニュースでそれを知った。 東京で3件、大阪で1件の集団飛び降り自殺を引き起こしたヨミが西新宿に現れた。 今度はビルの上ではなく人が行き交う路上に、ビルとビルの間からフラフラと現れたのだという。 初めは誰も気付いていなかった。 誰かがヨミだ!と叫んでも、ほとんどの通行人は怪訝な顔をするだけだったという。 しかし間近にいた人から悲鳴があがり始め、通行人の一人が車道に飛び出して車に跳ねられた。 それでパニックになった通行人は我先にとヨミの近くから逃げ出した。 そうこうして ...

第二部 三話 ジサツオフ 3

タツヤさんがやってきたのは集団自殺が起きた翌日だった。 ピンポンが鳴ったと思うと、返事を待たずにタツヤさんが部屋に入ってきた。 いつものようにお酒の入ったレジ袋をぶら下げている。 「おかえりなさい」 レジ袋を受け取ってお酒を冷蔵庫にしまう。 タツヤさんを出迎える時は「おかえり」と声をかけるのが習慣になっている。 別に同棲してる訳じゃないのだが、週の半分はこの部屋に泊まっていくので、いつのまにかそうなっていた。 作り置きしていたおつまみを小皿に盛り付けてテーブルに並べ、簡単に作れるものはチャチャっと作ってそ ...

第二部 二話 ジサツオフ 2

目が覚めたのは真っ白な部屋だった。 何が何やら分からずボーっとしていたら、ガチャっと音がして数人が部屋に入ってきた。 白衣を着た医師風の男2人と、女性の看護師さん。 どうやらここは病院のようだ。 医師が私の状態をチェックし、看護師さんが水を飲ませてくれる。 どうしようもなくダルくて頭痛も酷かったが、健康状態には異常がないと言われた。 喉がカラカラだったので水を立て続けに飲んでいたら、次は尿意に襲われた。 部屋に備え付けてあるトイレに行くにも、体が言うことを聞かない。 看護師さんに支えてもらいながらどうにか ...

第二部 一話 ジサツオフ 1

「苦しくない楽しい方法ありますよ。よかったら何人かでジサツオフしませんか?興味あればDMください」 そのリプライが来たのはついさっき。 いつもネガティブなツイートばかりを呟いているお気に入りアカウントのツイートを見ていたら、変なタグを見つけた。 何人かが♯ジサツオフというハッシュタグをリツイートしているらしい。 大元の呟きは30分ほど前だ。 「♯ジサツオフ開催します!参加希望者はタグ付けてリツイートしてください。すぐに消されると思うので短期決戦いきます(^^)v」 その呟きに「本当だったら興味ある」とリツ ...

第一部 三話 魔女

池袋、渋谷と続いた集団での飛び降りは結局その後、新宿でも発生した。 1日に3カ所で集団が飛び降りたという衝撃は、当日翌日のニュースを独占するだけでなく、事件から2週間経った今でも必ずと言っていいほどワイドショーの話題を独占し続けた。 一体なんのために、飛び降りた人達にはどのようなつながりがあるのか、自殺ではなく殺人の可能性は………。 憶測は尽きなかったがその中でも最も話題に上っているのは、謎の女についてだ。 あの日、池袋の映像で飛び降りを思いとどまってビルの屋上に消えたように見えた女性。 その女性は渋谷の ...

第一部 二話 霊能者インタビュー 嘉納康明 2

―――まずは嘉納さんのお仕事についてお聞かせください。職種でも肩書きでもなんでもいいので。 「ふむ。職種は霊能者でいいでしょうな。肩書きだと当研究所の所長です。あとはいくつかの企業や団体の相談役という名刺もあります」 ―――相談役ですか。 「ええ。多少は占いもできますから、企業や政治家の相談に乗ったり吉凶を占ったり、顧問弁護士みたいなもんです」 ―――なるほど。 「あとは過去に解決した案件で恩義に思ってくれて、相談役ということでお給料を出してくれる会社さんもありますな」 ―――それは心霊関係の? 「そうで ...

第一部 一話 霊能者インタビュー 嘉納康明 1

月刊OH!カルト創刊30周年記念企画である「歴史ミステリー徹底検証!幻のオーパーツ大特集!!」という編集長キモ入りの一大プロジェクトはじつに無残な結果となった。 カラー写真満載でこれでもかと世界各地のオーパーツを紹介したものの、読者から帰ってくる反響は「ふーん」程度のものしかなく、私をはじめとした編集部の面々も、ああやっぱりねという顔で結果をスルーすることにした。 苦虫どころかイナゴの佃煮が歯にはさまったような顔でオフィシャルサイトのアクセス数をチェックしていた同僚がため息をついてノートパソコンを閉じた。 ...

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