怪談・洒落怖 殿堂入り洒落怖

【洒落怖殿堂入り】おじゃま道草【名作】

投稿日:2019年8月20日 更新日:

524 :おじゃま道草 <5> 1/2:02/05/26 18:38
しばらくすると、うつ伏せの馬場君がうなされ始めました。なにやら、寝言で、うん、うんといっています。
-- あれ?
よーーく、馬場君の方を見ると、、、何か、気配があります。彼の上に、影の様なモノがのっているようです。
私は茅野君に、
-- どう思う?
と意見を求めました。
-- これ、金縛りじゃぁないの?
押さえ付けられてんのかな?
茅野君の直感は、当てになります。私は、確信しました。
-- 馬場君は、意思が強く、行動力もあり、覚醒時は強い、、
したがって、疲れてうとうとしている様な弱い時につけこんで憑依してくるんだ。

船井さんが、
-- 起こそうか、、、
と、馬場君の肩をゆすりました。
でも、起きません。相変わらずです。
-- あっ、ちょっと待って、もし、意識が飛んでいたらマズイ。
帰還に失敗するかも、、無理に起こさないで。
私は、強く揺すろうとした船井さんを制しました。

その時、茅野君が、、、
-- あれぇ、、、何か動いたよ。馬場君の背中の上、、、
と言い出しました。
そして馬場君の背中の上、30cmほどのところに、手をもって行こうとして、、、
-- おーーーっ。
彼は、あわてて手を引っ込めました。
-- ああ、ぞっとした、、、ちょっと、やってみなよ。
私にも促します。
なんと茅野君にも見えたのです。
-- やばいな。俺たちも影響をうけてるな、、。
私は、そう思いながらも、彼に倣いました。

525 :おじゃま道草 <5> 2/2:02/05/26 18:38
そおーっと手を出す。
動いている影の輪郭を抜け、突っ込む、、、、。
ひんやりとしています。冷蔵庫に手を入れたときのようです。
それでもヤツは動こうとしません。
そおーっと手をひっこめる。
冷たさは消えます。ヤツはうごきません。

-- ねっ、冷たいだろ?
と茅野君が同意を求めてきました。
-- 隙間風なんか通ってないよね、、
やっぱり居るんだね。
彼は、いつになく真顔です。私は、乗っているヤツが、いまだ退こうとしないので、除霊九字(※当ブログ注1)を切りました。
そしてそれが効いたのか、ヤツの気配は消えました。いや、一時的に退いただけですが、、、、。
切った後、馬場君を揺すると、彼はすぐに目を覚ましました。

起きるなり、彼は、
-- ああーーっ、疲れた。おれ、うなされてなかった?
揺すったでしょ。分ったんだけど、夢がさめないんだ。
これで4回目かな。同じ夢見たのは、、、
2階じゃ見たことなくって、いつもここで寝た時にだけ見るんだ。
おれ、何か寝言を言ってた?
と、目をこすりながら、一気に話しました。
-- うん、うん、、っていってたよ。
船井さんが答えると、、、、
-- そうか? おれ、うんう、、って、、、
自分では首を振ってたつもりなんだけどなぁ、、。
聞いてもらえる?
そう言って、馬場君は夢について語り始めました。

526 :おじゃま道草 <6> 1/2:02/05/26 18:39
馬場君が見た夢の要旨は次のとおりでした。

「気がつくと、座敷に座っている。
広い座敷で、30畳ほどはある。
電燈もなく、造りも古い。
時代劇のセットのようである。

しばらくすると、少女が現れる。
5・6才で、可愛らしい。
赤っぽい振り袖を着ている。
七五三参りに行く姿のよう。
髪もキチンと結ってある。
時代劇でなら、武家の娘という役がら。

少女が、『おにいちゃん、あそんで。』とせがむ。
遊んであげたいが、
<自分はここを動いてはならない。
動くと帰れなくなるかも知れない>
という不安感がある。
そこで、少女に、『外で遊んできなさい』と勧める。
しかし、聞き分けない。
『あそんで。あそんで。』と、繰り返しせがむ。
しかたがないので、
<少しだけ、この場所で、、>
と思うと、それを察したのか、少女はニコッとして、持っていたお手玉を差し出す。
<さて、どうしようかな。>
そう考えながら、受け取ろうとする。

527 :おじゃま道草 <6> 2/2:02/05/26 18:39
と、その時、座敷の奥の方から、
『遊んでいてはイケマセン』
という、母親らしき声が響く。
その途端、少女の笑顔は消える。
蒼白となり、自分(馬場君)の陰に隠れようとする。
『呼んでるよ。行かないと叱られるよ』
と言うと、少女は、おびえ始め、今にも泣き出しそうである。

そしてついに、母親が座敷のはずれから姿を現す。
和服を着込み、すらっとしている。
初めは、遠くではっきりしないが、近付くにつれ、綺麗な顔だちであることがわかる。

<優しそうな母親じゃないか>
そう思って、後を振り向くと、少女は消えている。
<あれ?>
不思議に思いながら、母親の方を向く、、、、先ほどの顔だちはかき消え、なんと般若になっている。

恐怖に捕らわれ、
<にげなきゃ、、>
そう思った時、夢からさめる」

馬場君が話を終えた時、バンドのメンバーが2階から降りてきました。
ライブの打ち合せに皆で出かけるそうです。
腰をあげて、私たちも帰る支度をはじめると、、天井から、、いや、2階から、タッタッタ・・・と誰かが走り回る様な足音がしました。
全員聞こえたようで、一瞬、皆動きを止め、顔を見合せました。
-- 聞こえた? これで2度目だな?
今、2階には誰もいないよなぁ。
馬場君が言うと、メンバー全員がうなずきました。茅野君がすかさず、
-- 大人だと、ドスッドスッという足音になるから、
あれは、子供だな。
実際、2階で子供が走り回ると、あんな足音になるよ。とコメント。
しばらく、皆沈黙し、次の音を待ちましたが、もう、足音は聞こえませんでした。

皆が出かけ、私たちも帰路につきました。

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