怪談・洒落怖

【新作洒落怖】『視線』

投稿日:2020年6月9日 更新日:

586 :5/6:2008/05/17(土) 18:11:36 ID:aM51ze7e0

あくる日。
俺といとこは家人のばたばたという慌てた足音で目を覚ました。
眠い眼をこすりながら部屋を出て母親に訳をたずねると、
近所に1人で住んでいた男が自殺しているのが見つかったと言う。

「自殺って・・・どこで?」
恐る恐る尋ねた俺に、母親は顔を曇らせ、声を低くして言った。

「昨日の夜、ご両親のお墓の横の木で首を括ったのよ」

現場は昨日行った墓場だった。
俺は泣き叫んだ上に吐いた。いとこは自分の親の部屋に駆け込んで号泣。
当然後で事情を聴かれ、2人揃って死ぬ程怒られた。

587 :6/6:2008/05/17(土) 18:13:12 ID:aM51ze7e0

後で知ったことだが、その男はこの村に住んでいたある夫婦の息子で
東京の会社に就職して出て行ったが、
慣れない都会暮らしがうまくいかず、仕事も行き詰まったために精神的に不安定になり
会社を辞めて村に帰ってきていた。
しかし年老いた両親は程なくして亡くなってしまった。
近所の助け合いがよくある地域ではあったが、男は家に引きこもって周囲と交流を持つこともなく
ますます孤独になっていったという。
そして昨日、盆に両親の弔いを終えた男は
遂に孤独に耐え兼ねて自らの命を絶ったそうだ。

この件があって、いとこ一家は東京に帰る日程を早めることになり
翌日の朝早くに出発していった。
残された俺や友達2人は、しばらくの間男の祟りを本気で恐れて脅えていたが、
小学校を卒業して引っ越して現在に至るまで、遂に何も起こることはなかった。
今後もどうかそうであってほしい。

だが、今にして思うことがひとつある。
あの時俺が感じた視線が「既に死んだ人間」からのものであった場合と、
すべてに絶望し、これから死を選ぼうとする「その時は、まだ生きていた人間」のものであった場合、
どちらのほうが本当に恐ろしいだろう、と。

588 :本当にあった怖い名無し:2008/05/17(土) 19:18:28 ID:VtVmPsVQ0いいねいいね

589 :本当にあった怖い名無し:2008/05/17(土) 19:58:18 ID:MHzk/jKE0締め括りが見事だな・・・、話の

590 :本当にあった怖い名無し:2008/05/17(土) 20:00:32 ID:WXP4TeSC0文の運びも締めも雰囲気伝わってきて面白かったです。ありがとう。
視線はどっちのものだったんだろうな。
男以外のものという可能性もあるな。

出典http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/occult/1208952712/

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yoshida3

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