673 :田所君11:2012/05/27(日) 02:03:42.57 ID:1HnKSW970
「小学生は、その金属板が何なのかとても気になったので、
蓋をはずそうと試みた。しかし、蓋と金属板はぴったり張り付いているようで
びくともしない。諦めた小学生は、せめて記録に取っておこうと思い、
金属板の裏側を写真に撮り、持ってきていたスケッチブックに写生した」
「その後、田舎から帰ってきて写真を現像に出したのだが、
肝心の金属板の写真がない。どういうことか現像屋に問い詰めると、
真っ黒の写真が何枚かあったそうだ。
撮影の順番からソレが金属板を写したものだと分かった。
小学生は無理に頼み込み、その真っ黒の写真も現像してもらった」
674 :田所君12:2012/05/27(日) 02:05:31.05 ID:1HnKSW970
「それから、小学生は夢に悩まされるようになった。
夢の中で彼は同じように金属板と蓋をはがそうとするのだが、
どうしても開かない。爪が剥がれるのも構わずに躍起になるが、
結局何もできずに夢から覚める。日を追うごとに小学生は、
あの金属板が何なのか気になって気になって仕方なくなっていった」
「その日も同じように蓋と格闘する夢を見るが、いつもと異なっていた。
蓋が、少しだけずれたのだ。小学生は歓喜した。
遂にこれが何か分かるときが来た、そう思っていっそう力を入れるが、
その日はそれ以上動かなかった」
「ところが、その日から夢を見るたびに少しずつ蓋が開いていった。
小学生ははやる気持ちを隠そうとせずに、毎晩毎晩蓋と格闘した。
夢から覚めても考えるのは蓋のことばかりで、
夏休みの宿題も自由研究も放り出していた。起きているあいだすることは、
真っ黒の写真を眺めるか、金属板の絵をひたすらスケッチすることだった」
675 :田所君13:2012/05/27(日) 02:06:45.93 ID:1HnKSW970
「そして遂に、蓋がされていた金属板の表側が現れた。
小学生は狂喜して思いっきり蓋を引いた。するとどうだろう、
あれほどびくともしなかった蓋が、いとも簡単に外れた。
小学生は、金属板の表側の全貌を見た」
「それは、ただただ真っ黒の金属板だった。
だが、まるで吸い込まれそうな黒だ。
小学生は、金属の表面に触れようとして手を伸ばした。
その時、彼の耳に何かが聞こえてきた。それはとても小さな声で、
ひたすら何かを呟いていた。どうやら金属板から聞こえてくるようで、
小学生はなんといっているのか確かめようと耳をつけた」
676 :田所君14:2012/05/27(日) 02:07:47.29 ID:1HnKSW970
「アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロ」
「ひたすら『アケロ』と呟く声が聞こえた。
びっくりして離れようとしたが、耳が離れない。
それどころか、さっきまで耳が感じていた
金属の冷たさがいつの間にか消えていた。
次の瞬間、真っ黒の表面から赤黒く爛れた2本の腕が出てきて、
彼の頭をわしづかみにした。抵抗する暇もなく、
小学生は真っ黒の金属板の中に引きずり込まれた。
そして、そこで夢から覚めた」
677 :田所君15:2012/05/27(日) 02:08:53.18 ID:1HnKSW970
「夢から覚めた小学生には、もはや恐怖心などかけらもなかった。
ただただ、夢だけでなく現実の金属板も確認したい、その一心だった。
彼は既に、あの金属板に取り憑かれていた。
小学生には確信があった。あの時はびくともしなかったが、今なら開けられる。
夢であけた自分だからこそ開けられる、そう信じて疑わなかった」
「もはや夢など待たずともよい、
すでに金属板以外のことなど考えられなくなっていた小学生は、
親に黙って再び神社に向かった。
そして、小学生はそのまま行方不明になった。
夢と同じように、金属板の中に引きずり込まれたのか、
あるいは別のことが起きたのか、それは定かではない。
結局あの金属板が何だったのか、それは誰も分からない。
知っているのは、小学生と、蓋をした『誰か』だけだ」