怪談・洒落怖

【新作洒落怖】退職金とは思えないほどの大金

投稿日:2021年2月13日 更新日:

727 :本当にあった怖い名無し:2010/02/16(火) 22:02:39 ID:HNPuCY3C0

部長が車を止めたようだ。「Sさん、タオルを外してください」
私がタオルを外すと、車の目の前には大きいスギノキ。その横に和服を着た女性
が。どうやらここは森の中のようだ。
私はいきなり視界が自由になったのと緊張でふらふらしてなかなか車から降りら
れなかった。部長がドアを開けてくれて肩を貸してくれた。
そのまま和服の女性に近づく。女性はY部長とアイコンタクトらしきものを取っ
ていた。どうやら初対面じゃないらしい。「この子が例の…」とY部長が話しか
けたら女性は話を遮り、「話は後で。大体把握出来ていますから。それより急ぎ
ましょう」と森の奥へ奥へとどんどん歩いて行く。私と部長はその後を着いて行
った。
すると、お寺みたいな建物が見えてきた。
その建物を見たとき、今更になって「あーきっと会社で見た女性は霊的なものだ
ったんだろうなー」って思った。
私たちはその建物のの横にある、小さな古屋みたいなところに通された。
しばらくして、ご住職みたいな人が現れた。

728 :本当にあった怖い名無し:2010/02/16(火) 22:04:09 ID:HNPuCY3C0

「こんにちは。Yさん、お久しぶりですね。そちらのお嬢さんがSさんか。初め
まして。私はここの住職でございます。」みたいな挨拶をしてたと思う。
そして、住職はY部長に「Sさんにはあの事は話していたのですか?」と質問し
ていた。Y部長は「いえ…それが…」と俯いている。住職は一瞬怖い顔をしたが、
すぐに優しい顔になり「まぁ話は後です。準備は出来ています。どうぞこちらへ。
」と6畳ほどの暗い和室に私のみが通された。そこには経文やら数珠やら太鼓や
ら蝋燭やら、いかにもこれから除霊しますよというようなものが置いてあった。
その中でも一番気になったのが小さなビンだ。暗くて何が入ってるかはわからな
いが、なにかが詰めてあった。
「さぁ、どうぞこちらへ。」と座布団を差し出され、私はそこに正座した。
「これからなにがあっても目を開けてはいけません。」と住職が言う。
私はもう言われたとおりするしかなかった。
「では目を閉じてください」
ここからは何が起こっているか、住職が何をしていたか分からない。
ただやたらと大きいお経とまたそれとは別の声がしていたように思う。私の意識
はそこで途絶えた。
気がつくと私は崩れるようにその場で横になっていた。
「気がつきましたか?」どうやら住職に起こされたようだった。
「今日は疲れたでしょう。泊まって行くと良い。」と私を抱えて立たせてくれた。
聞きたい事はいっぱいあるのに上手く喋れない。声が出ない。
別室に移され、そこにはお布団が用意してあり、住職は私を横に寝かせてくれた
のだ。

729 :本当にあった怖い名無し:2010/02/16(火) 22:05:09 ID:HNPuCY3C0

もう外は暗い。住職は「もう大丈夫ですよ。ゆっくり休んでください」とにっこ
り。私は自然と涙がこぼれ、止まらなくなっていた。
住職は「一人じゃ心細いでしょう。一人、ここに居させますので」と外で見た和
服の女性を呼んでくれた。
気がついたら外が明るくなっていた。横には和服の女性が。ずっと付いていてく
れたのだろうか。

「おきましたか?丸一日眠っていたんですよ。まぁ詳しく言うと丸一日半ですけ
ど」と笑いながら「ではご住職を呼んできます」と部屋を出て行った。

寝すぎたせいか頭が回らない。何も考えられない。ぼーっとしてるとふすまが開
いて住職が入ってきた。「おはようございます。体調はいかがですか?食事の用
意が出来ていますがどうしますか?」と聞いてきたので私は「食欲がありません
ので…それより…」と事情を聞こうとしたら住職に「忘れましょう。すべて悪い夢
だったのです。もう大丈夫」と話を遮られてしまった。気になることはいっぱい
あった。でももう何も考えたくなかった。
それにこれ以上聞いてもきっと住職は教えてくれないだろと思い、私は住職の言
うことを受け入れた

730 :本当にあった怖い名無し:2010/02/16(火) 22:06:42 ID:HNPuCY3C0

それから半日ほどそこで過ごしただろうか。和服の女性が「お迎えが来ましたよ」
と部屋に入って来た。身支度を整え、外に出ると社長とY部長が立っていた。
社長もY部長も泣いていた。「ごめんなごめんな」と何度も言っていた気がする。
私は何も喋りたくなかった。一刻も早く家に帰りたかった。帰りの車中では私も
社長もY部長も終始無言だった。
家では、両親が私の帰りを待っていた。しかし私はすぐに部屋に篭った。
リビングでは社長とY部長が何かを話しているようだった。
社長たちが帰ったあと、私はリビングに行った。両親は私の顔を見ると泣き出し
た。
そして「大丈夫か?もう何も心配するな。会社ももう辞めていいから」と言って
くれた。
机の上には退職金とは思えないほどの札束が置いてあった。

あれから会社には行ってないし、本当の事情も聞いていない。
あれはなんだったのだろうか。会社を辞めてしまった今では何も分からない。

今は無職で家事手伝いをやっている。

長文スマソ

結構端折ったけど最近の私の実体験でした

出典http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1264751456/

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yoshida3

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