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373 :1:2009/09/08(火) 19:45:59 ID:PG+tx3z6O
前に友達から聞いた話。
その友達は心霊スポット巡りが好きで、彼女を引き連れて2人で色んな心霊スポットを徘徊していた。
これは、とあるダムに行った時の話。
仮に友達をA、彼女をMとします。
そのダムは山奥にあって、周りには民家もないし、灯りひとつない真っ暗な場所。
ダムの前まで車で行き、二人とも下車。車のライトを消すと、下車するのを戸惑うくらい真っ暗。しかも物音ひとつなかった。あまりの静寂に耳が痛くなったらしい。
ダム自体の上面は、橋みたいな造りで、向こう岸まで続いている。向こう岸までの距離は50メートル以上。
とりあえず、その橋を渡って、向こう岸まで行ってみようって事になった。
AとMは、寄り添いながら、ゆっくりその橋を渡る。
375 :2:2009/09/08(火) 19:47:11 ID:PG+tx3z6O
やがで橋の真ん中辺りまで来た時に、見てしまったらしい。
Aの視界の右隅に人が立っている。
橋の手すりの上に立っているようだ。距離にして3メートルくらい先。
恐ろしくて直視できないし表情も分からないけど、髪の長い女だと分かった。
驚いてピタッと立ち止まる。
どうしたの?とM。聞かれた瞬間、彼女には見えていない事が分かった。自分にしか見えていない。
「もう戻ろうか?」とMに言って、引き返す事になった。
引き返す途中も、後ろに気配を感じた。
あの女は、手すりの上を歩いて、Aたちの後を付いて来ているのが分かった。
Aは、走って逃げてしまいたいくらい怖かったが、気付かない振り、何も見えていない振りを通したかった。
それは、熊と対峙した人間が、死んだ振りをする心理に似てるんだと思う。まぁ死んだ振りしても食われちゃうんだけど。
しばらく震えながら歩くと、後ろから女の声が聞こえる。
「見えてるの?」
Aは悲鳴をあげそうになるが、何も聞こえなかった振りをした。Mには実際に何も聞こえなかったようだ。
「ねぇ」
また女の声。
後ろからの呼びかけを完全に無視して歩く。いつしかその女は、Aの真横の手すりまで迫っていた。
しばらく歩くと、女は立ち止まり、もう付いて来なくなった。
Aは少しホッとしながら歩き続ける。見て見ぬ振りをして正解だったと思った。しかし予想もしない事が起きる。
376 :3:2009/09/08(火) 19:48:29 ID:PG+tx3z6O
静寂の中、背後で大きな音が響いた。ドボーンって音。プールに飛び込むような音だった。
Aは一瞬にして、思った。あの女が橋の上から、水面に飛び降り込んだのではないか?と。
「今の音、何?」とM。Mは手すりから下を覗き込んでいる。
Mにも聞こえた?って事は、あの女じゃない??
そんな事をぼんやり考えつつ、Aも恐る恐る下を覗き込む。
あの女がいた。
水面から上半身を出した状態で、目を見開き、こっちを見上げている。
そして目が合った。
その瞬間、女はニヤリと微笑んだ気がした。
その時Aは思ったらしい。騙された。罠にはまった。と。
きっと、あの女は認識したに違いない。「見えている」と。
やはりMにはあの女が見えないようで、水面を見回しながら、さっきの音の主を探し続けている。
Aは「Mは本当に見えないのか?」と半切れ気味に問いかける。
Aの剣幕に、何も見えないMも怯え始めた。
水面に目線を戻すと、あの女は、まだこっちを見上げていた。
女の体が少しだけ浮いた気がした。ふわっと。
その瞬間Aは、Mの手首を握って、死に物狂いで車まで走った。
女がふわっと浮いた瞬間、「来る」と思ったらしい。
それからドリフト族の如し山を下り、少しでも人の多い場所を求めて車を飛ばした。
377 :4:2009/09/08(火) 19:49:57 ID:PG+tx3z6O
Aはそれ以来、心霊スポット巡りをしていないみたいだが、夜の海やプールはトラウマになり、気配を感じる時は、風呂にも入れないらしい。