241 :本当にあった怖い名無し:2007/08/03(金) 00:11:13 ID:yP8vg/Fb0
彼女はベッドの上で、私に背中を向けるように体育座りしていた。
部屋の中はちらかっていた。
テーブルはひっくり返され、いつも綺麗にしてあった棚の小物は全て床に散っていた。
彼女は壁に向かって何かをしきりに呟いていた。
指を壁につけて、擦っているように見えた。
カリカリ、カリカリ。
彼女は爪で壁をひっかいていた。
私「○○ちゃん?大丈夫」
私はベッドの横に回りこんで彼女の顔を覗き込んだ。
生気を失い、深い隈をつけた目を、カッと見開いていた。
ゆっくりと彼女の首がこっちを向いた。
彼女「おばあちゃんの、狐が・・・」
私「キツネ・・・?」
彼女「あの音がする・・・カリカリって・・・憑かれてるの・・・」
彼女は正気をなくしているように見えた。
彼女「カリカリって・・・音が・・・ひぃぃ・・・」
彼女は膝に顔を埋めて、それきり黙りこんだ。
私は、彼女の言う音が、自分の爪で立てている音なのだろうと重い、彼女の腕を掴んで壁から離した。
彼女「・・・止んだ・・・」
それを言うと、彼女は座った姿勢のまま横に倒れこんだ。
246 :本当にあった怖い名無し:2007/08/03(金) 00:18:10 ID:yP8vg/Fb0
私が彼女を抱き起こすと、彼女は浅い寝息を立てていた。
わけのわからない私は、彼女の携帯から、近くにある彼女の実家へと電話した。
私「○○のお母さんですか?私□□です。」
母「あ、□□ちゃん?どうしたの○○の携帯から」
私「私もわからないんですが、○○ちゃんが変なんです。すぐ来てください」
彼女の母はすぐ行くと言って電話を切った。
その時、
何かが目の前の壁を這っていくような気配を感じた。
遅れて音が聞こえた。
カリカリ、カリカリ。
音は、目の前の壁を横に移動して、開けたドアの方へと向かっていくようだった。
少しずつ音が遠のき、やがて聞こえなくなった。
私は、彼女の母が来るまでの数10分間の間、金縛りにあったかのように動けなかった。
250 :本当にあった怖い名無し:2007/08/03(金) 00:28:25 ID:yP8vg/Fb0
大学が夏休みに入り、彼女はマンションを引き払い実家で暮らすようになった。
あれからも度々彼女の家を訪れ彼女と会うが、彼女は以前生気を失った顔のままいつも俯いている。
4日前、珍しく彼女の祖母が家に泊まっていたので、彼女について聞いてみた。
祖母「管狐にやられたのかもしれんね」
そう言って祖母は家の奥から一つの小さい筒を取ってきた。
祖母「これが狐を入れておく管でね、これを大事に置いておかないと狐様に祟られるんでね」
聞くと、祖母の家は代々管狐を扱う家なんだそうで、彼女も例外ではなかったそうだ。
彼女はマンションに筒を一つ持っていったが、無くしてしまって狐に憑かれたのではないか、と祖母は言う。
狐憑きになってしまった彼女が一体これからどうなってしまうのか、私にはわからない。