怪談・洒落怖

【新作洒落怖】わけあり物件

投稿日:2021年12月25日 更新日:

本文

858 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:54:03 ID:L2HU3A4n0
(1/10) 
あれは、5年くらい前かな。おれは就職のため東京に引っ越した。
なかなか部屋はなかったけど、最後に不動産屋が渋々紹介してくれ
た部屋でさ。北向きでも新しい物件で5万円、1LSDKって間取り
の、広めの部屋。場所も○天宮の脇で、もろ都心。「都心もそれ程
家賃高くないな。掘り出し物かな。」程度に思った。気がついたの
は、異変が起こってからだったよ。この部屋は洗濯機等の家具付き
だった。あとテレビデオ(死語)、冷暖房、電気(照明)。あと、珍し
いものでは、収納室(SDKのS)に、赤い自転車を置いてくれてた。
丈夫な造りの建物だし、ほんと満足だった。しかし、最初の晩から
ブキミなことが起こったんだ。夜、風呂に入っていたら、部屋の方
から、何か聞こえてきた。「ズル・・ズズズ・・・」と、ひきずる様
な、低い声の女性の喉が詰まったような音が。俺は驚いて、「えっ!
??」って声を出した。同時に音がやんだ。気のせいと思ったけど、
ひとりで風呂に入ってるのが怖くなった。出た時、異変に気づいた。
ひっそりと静まり返るおれの部屋。リビングの電気もついていない。
比較的強気な俺だけど、びびった。「電気はつけてたはずなのに。。。」

859 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:55:08 ID:L2HU3A4n0
(2/10)
おれは、混乱した。脱衣所から外に出るのが怖かった。幽霊なんて信
じちゃいない。でも、脱衣所の外に広がる暗闇・静寂はどう考えても
まともじゃない。気を静めるため、とにかく体を拭いた。でも湿気が
とれない。冷や汗が止まらなかったんだ。服を着た。何か護身用にと、
姉がくれたドライヤーと、ヘアスプレーを持った。とにかく怖くて、
歯がガチガチ震えるんだよ。脱衣所の扉をゆっくりと開くと、そこに
は、何も見えない暗闇が広がってた。街灯の多い通りに面してるのが
おかしい位、何も見えない。ごくり。おれが生唾を飲む音が、いやに
そらぞらしく、耳に響いた。「ズズズ・・・」突然、あの音が、うつ
ろな闇の奥から湧き上がってきた!!おれは急いで電気をつけようと
した。でも、スイッチを押してもつかない!「ズズズズ!!」音が
いきなり大きくなった。近づいてくる!暗闇の中、おれは咄嗟に、
夜中だってことも忘れて「ぎゃぁ」っと叫び、脱衣所に逃げ込んだ
ね。そのまま脱衣所の扉を固く握り、朝が来るのを祈ったよ。

861 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:55:50 ID:L2HU3A4n0
(3/10)
おれの祈りは、通じなかった。「ズル・ズル・・ズズズ・・!!」お
れの握ったドアノブが、いきなりグイグイと下げられた!おれは力
の限り、抵抗した。必死で腕に力を込めた。「やめろぉ!」叫び声が
家中に響いた。それでもドアノブはグイグイと腕を押し下げてきた。
もうだめだと思った。今度は、扉が引っ張られた。俺の腕は、素早
く、扉を引き寄せた。無我夢中だった。「やめてくれぇ!!」届くは
ずのない願いを、俺は連呼した。その刹那。「ドン!ドン!ドン」お
れの心臓は、ドクッと大きく動いた。玄関の扉をたたく音だ。「こん
な時間に、何を騒いでるんですか!!」玄関だ。脱衣所の扉じゃな
い。「助けてくれ!」俺は叫ぼうとした。そのとき、俺の押さえる扉
から、すっと圧力が抜けた。ほっとした次の瞬間「ドカン!!」俺の
心臓は冷たくなった。扉に何かが突進し、ついで、それがつぶれた気
配があった。「助けてください!!」俺は、力の限り叫んだ。

863 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:57:23 ID:L2HU3A4n0
(4/10)
たすけに来てくれたのは、下の階の夫婦だった。その二人によると、
まえの住人も夜中に騒ぐことがあったので、何度か注意をしていた
んだそうだ。部屋の外で、おれは部屋の電気がつないこと、部屋の
なかで起こったことを話した。夫婦は、意外にも、俺の頭がおかし
いとは思わない様子で、黙って話を聞いてくれた。そして、二人は
「夜中だから、今日は私たちの家に泊まって、明日電気屋を呼ぼう
ね。分かった?」って言ってくれた。涙があふれた。東京なんて、
高いビルばかりの冷たい街だと思ってた。でも、夫婦は本当に優し
い人たちだった。その夜は、夫婦の家に泊まった・・・・「またこの
物件かぁ。」翌朝、管理人と電気屋が溜息混じりに言った。「この物
件ね、よく停電するんだよ。しかも、何でもないのに、電気がつ
ながらなくなっちゃうんだよね。」とにかく、俺は鍵を開け、部屋
の扉をそっと開いた。すぐに、異常な物が目に映った。脱衣所の扉
に、べったりと、赤い液体がこびりついていた。あまりの恐ろし
さに、俺は、気が動転し、息ができなくなった。

865 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:58:19 ID:L2HU3A4n0
(5/10)
「またかぁ。」扉を拭きながら、管理人が、ひとりごちた。「いま
さらで悪いんですけどね。」ばつが悪そうに管理人が続ける。「前
にも、何度か同じようなことがあったんですよ。ここは元々、建
売のマンションだったんですけどね、なぜかこの部屋だけは、持
主の意向で賃貸にしたんですよ。日当たりも悪いんですけど、こ
の部屋は、異様に暗くて、買手がつかなかった。持主は、設計上
瑕疵があるに違いないので、とても人様には売れない、この瑕
疵の分、割安価格で、賃貸にしようって言いました。私は管理を
担うだけだから、従いました。」管理人は言葉をとめた。平静を
保つためか、タバコをすった。しばらくすると管理人は「私を
責めないでくださいね。」ポツリと呟いた。「最初の住人。。責
任は彼らにあるんですから。」そこで、管理人は口を閉ざした。

866 :Teddy ◆38avq92H7U :2005/11/27(日) 00:59:11 ID:L2HU3A4n0
(6/10)
自分の部屋が怖い。この事実に、俺は耐えられなかったが、自
分の荷物が全部この部屋にあることがそれ以上に恐ろしかった。
「勝手で申し訳ないですが、引っ越してください。」管理人が
手を床につき言葉を繋げた。「引越しに必要な費用は、こちら
に負担させてください。」俺は本当に救われた。昨晩のことで
破けてしまった心が、再びつながった気がした。すぐに、不動
産屋に連絡した。持主にも。両者とも、素直に納得し、解約の
申し出はこの電話のみで良いといってくれた。引越屋の手配も
請負ってくれた。幸い、引越し初晩で、荷物の大半は開いて
はいなかった。片付けはあまりないけれど、俺の精神状態を
酷く心配した夫婦が、手伝ってくれた。片付けも終わり、
いよいよ引越屋を待つだけ、となった時だった。旦那さんが、
余計なものを見つけた。「このビデオテープは君の?」

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