怪談・洒落怖

【新作洒落怖】池さらいのバイト

投稿日:2022年3月1日 更新日:

本文

897 :本当にあった怖い名無し:2015/12/05(土) 21:30:14.34 ID:87hiRPoC0

俺はある大学に6年いたんだが、これはその5年目の話。
授業はほとんどなくてね。就職活動が嫌でダラダラしてたんだが、
ずっと金欠なのにはまいった。バイトはしてたよ。便利屋の下請けみたいなこと。
そこの便利屋は退職したジイサン3人でやってたんだが、体力のいる仕事の場合は、
俺を含め、つてのある大学生に回してきた。不定期だったが時間だけはあった。
で、そのときのバイトというのが、ある田舎家の清掃だったんだ。
それと池さらい。これがすごいバイト料がよくて、2日間で5万。
ちょっと考えられないような額だろ。このときに少し疑ってかかればよかったんだが・・・
メンバーは俺を含め3人、それと便利屋のジイサンが一人監督でついてきた。
その人がハイエースを3時間運転して現地まで行ったんだよ。
時期は8月の終わりで、大学はまだ夏休み中だった。

着いた先は、まあ簡単にいえば廃村だな。過疎が進んで人の住まなくなった村。
住所は言うのはひかえておくよ。廃村といっても、
実際は年寄りが何世帯かはいたみたいだった。話をする機会とかはなかったがね。
その村の小高い丘の上にある典型的な豪農の屋敷。
世が世なら庄屋とか名主の家柄なんだろう。平屋だが20部屋近くあった。
庭も広くてな。手入れされてない植木が雑草に埋まってたよ。
9時に向そこに着いて、まず最初にやったのが池さらいだった。
家の縁側にそってくの字に曲がった池があったんだ。
水は緑色に濁ってて、生き物が住めそうには見えなかったな。
ジイサンは、「ここは水抜き穴もあるし、ポンプも持ってきてるけど、
このままだと詰まってしまってどうにもならないから、これで大きなゴミをさらい出して」

898 :本当にあった怖い名無し:2015/12/05(土) 21:32:12.37 ID:87hiRPoC0

そう言って、かなり頑丈な柄つきの網を3本取り出した。
それで、さらったゴミは木箱に詰めて持ち帰るっていう。
ジイサンの一人が、夕方頃に木箱を別の車に積んで持ってくるってことだったんで、
それまでさらったものは、池の脇の草の上に積み上げておくことにした。
でな、2人と1人にわかれて両端から池をさらい始めると、
上がってくるのは全部骨だったんだよ。犬といっても、大型犬はなかった。
小型犬やら猫、あるいはイタチとか山の野生の動物の骨。
まあ俺にその区別がつくわけじゃないが、頭蓋骨の形で人間のものでないことはわかった。
1回網を入れると、ずっしりという感じで藻で緑に染まった骨が上がってくるんだ。
それをザラザラと池の脇に積み上げていく。
まだ暑い時期だったから大汗をかいたよ。骨はいくらでも出てきたんだ。

何十体、いや百体近い小動物の死骸が投げ込まれてたってことだな。
これをさらうだけで、コンビニ弁当の昼飯をはさんで4時間はかかった。
ある程度までさらったところで、水抜き栓を開け、さらにポンプを使って水を草むらに流した。
底が見えてきたが、泥がたまってて、その中にも何本も大小の骨が沈んでたな。
そういうのも泥と一緒に全部拾い上げてるうち、
2台めのハイエースが大きな木箱を2つ持ってきた。
それにさらった骨を入れてると、さすがにあたりが暗くなってきた。
この日は泊まりだったんだよ。昼よりは少し豪華なコンビニ弁当が配られて、
それが夕飯。その後は屋敷の一番庭に近い部屋に入って俺たち3人が泊まる。
ジイサンら2人はそれぞれ車で帰ることになってた。
夜の間に、さらった池に水を入れるって言ってたな。

899 :本当にあった怖い名無し:2015/12/05(土) 21:33:45.72 ID:87hiRPoC0

その部屋は掃除されてなおらず、まずホコリをぬぐって寝場所を確保するところから始めた。
布団はなしで、それぞれ1枚ずつタオルケットを渡されただけ。
それで寒いということはないし、むしろ暑いので雨戸はもちろん、ガラス戸も少しずつ開けてた。
蚊が嫌だったし、蚊取り線香も渡されていたが、これがほとんどいなかったんだ。
電気はついたけどテレビがあるわけでなし、ラジオも持っては来てない。
これもジイサンたちから差し入れのウイスキーを飲みながら雑談してたが、
10時ころには半ば腐った畳の上に寝た。昼の作業で、体が疲れきっていたんだよ。
バイトは数々やったが、その池さらいはかなりの重労働だったんだな。
でな、部屋の電気を消したとたん、ギィー、ギィーという音が頭の上から聞こえてきた。
屋敷は広いけど平屋だから、上階からの音じゃない。
「なんだよこれ。うるせえな」仲間の一人が言った。

「家鳴りだろ、でなきゃ屋根の上に野生動物がいるとか」
「家鳴りって、さっきまで聞こえてなかっただろ。風もないし」
「猫がさかる季節じゃないけど、俺らの知らない山の動物かもしれん」
「赤ん坊の泣き声みたいで気味わりいな」こんなことを言い合ったのを覚えてる。
けど、その音は5分ほど続いてやんだんだ。それと同時に、俺はことっと寝入ってしまった。
それから何時間ぐらいたったか、仲間の「うわーっ」という叫び声で目が覚めた。
そしてすぐ電気がついた。「なんだよ。何かあったのか」俺が立ってるやつに声をかけると、
「今、顔の上を何か踏んでった。小さいものだ」こう言った。
「あー、やっぱ戸を開けてるから動物が入りこんだのか」
「いや、動物・・・そうかもしらんけど、どうもなあ・・・」
そいつは何だか煮え切らない返事をした。部屋の中を見渡しても何かがいる様子はなかった。

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