怪談・洒落怖

【新作洒落怖】小さな祠

投稿日:2023年1月6日 更新日:

本文

255 :1/7:2012/05/03(木) 01:44:34.64 ID:HPNJqzKn0

高校2年の頃の実体験を書きます。

夏休み中のある日、俺と友人A、B、Cは唐突にキャンプに行こうと思いつき、
以前渓流釣り好きのCの親戚から聞いたキャンプに最適そうな山の中の
河原の場所を聞き出し、そこへと向かった。

しかしどうも途中で道を間違えてしまったらしく、Cの親戚が言うのとは別の
河原に到着してしまった。ただし、そこも十分キャンプできそうな立地で、
対岸は森だがこちら側は小石が沢山あり雑草も殆ど無い開けた場所で
ジメジメ感もなく非常に快適そうだった。

夕方までにはある程度準備が出来、その辺をぶらぶらしていたAとCが
「おい、なんかちょっと先の対岸に変な祠みたいなのがあるぞ」と言いな
がら戻ってきた。俺とBが2人に連れられてその場所に行ってみると、たしかに
対岸に石造りの小さな祠があるのだが、何か変だ。

普通祠って手前に鳥居とかがあると思うのだがそういうものは何も無いし、
通常祠といえば四角形で横か正面から見ると三角の屋根だと思うのだが、
それは円柱形で屋根は丸く、かなり奇妙な形をしていて、遠目には祠に
見えたのだが近くで見るとなんか違うもののようにも見える。
そして更に注視してみると、祠の根元にまだ萎れていない花が供えられていて、
どうも最近誰か来たような痕跡がある。

祠はかなり苔むしていて相当な年代物のようで、掃除とかされている様子
もないのに変だなとは思ったが、誰もそれ以上興味を示す事も無く、とりあえず
晩飯の準備をしようという事でキャンプ場所に戻る事にした。

256 :2/7:2012/05/03(木) 01:45:19.64 ID:HPNJqzKn0

晩飯を食い終わりそろそろあたりが暗くなり始めた頃、晩飯の後片付けを
しているとどこかから「てー…」と声が聞こえてきた。
俺の隣にいたAに「お前なんか言った?」というとBは「いや?なにも言ってないけど」
と言い、少しはなれたところにいたBとCにも同じように聞いてみたのだが、どちら
も何も言っていないという。

変だな?気のせいかな?などと考えていると、またどこからか「てー…」と
という声が聞こえてきた。
今度はA、B、Cにも聞こえたらしく、Bが「今の何?」と聞いてきた直後、Cが「おい、
あそこに誰かいるぞ」とちょうど祠のあった辺りのこちら側の岸を指差した。

そこには着物を着た10歳から12歳くらい?の女の子らしき人影がおり、
両手で顔を覆い時々「てー…」と喋っている。
するとAが「なんだあれ気持ちわりりーな、親はどこだよ」と言いながら
女の子に近付き「こんな所で何しているんだ?そろそろ暗くなるから親のところ
に帰った方が良いぞというと、女の子は両手で顔を隠したままAに「見たい?
見たい?」とケラケラ笑いながら聞いてきた。

Aはちょっとムカついたのか「ふざけてないで親のところに帰れよ!」とちょっと
強い口調で言いながら女の子の手を掴んで顔から離した瞬間、俺たちはAの
陰になって見えなかったのだが、女の子の顔を見たらしいAが突然
叫び声をあげその場に倒れ痙攣し始めた。

そして女の子はまた両手で自分の顔を覆い、今度は俺たちのところへ歩いてきて
またケラケラと笑いながら「見たい?見たい?」と言っている。
俺とBとCはかなり混乱したが、それよりもAがヤバそうでAのところに向かい
「おいA大丈夫か?声聞こえるか?」と呼びかけたのだが、Aは呼びかけても
反応が無く、まだ僅かに痙攣している。

257 :3/7:2012/05/03(木) 01:46:37.68 ID:HPNJqzKn0

Cが「おいなんかAやべーよ、それにあの子供なんだよ!わけわかんねーよ!」と
いうと、女の子に掴みかかろうとしたので、俺はさっきの事もあってCもAのように
なったらやばいと考え、Cに「やめろって、それよりAだ、あいつをまずテントに運び込もう」
と説得し3人でまだ意識の戻らないAをテントに運び込んだ。
その間も女の子は俺たちのほうを向き「見たい?見たい?」とケラケラ笑いながら
質問し続けていた。

テントの中に運び込んだ頃にはAは痙攣こそしなくなっていたが、まだ意識は戻らず
呼びかけにも答えない、仕方なく3人でこれからどうするべきかを考えたのだが、
もう既にかなり暗くなってきているのでAを連れて夜の山道を歩くのは危険と判断し、
携帯で警察に電話をして助けてもらう事にした。
その間、女の子はテントのすぐ横にやってきて、今度はまた最初の頃のように
「てー…」と声を発している。

女の子の方も気になるし怖いが、それよりも全く意識を取り戻さないAが心配だった
俺たちは、警察に連絡しようと携帯を取り出したのだが、昼間確認したときには
通じていたはずなのに、今見てみると圏外になっている、BとCも同じで、Aの携帯も
確認してみたのだがやはり圏外だ。

かなりやばい状況になってしまった。
Aがこんな状態では下手に出歩けないし、何より外にはなんかやばそうな女の子が
いる、かといってAをこのままにはしておけない。
外からはまだ「てー…」という声がすぐ近くから聞こえてくる、どうやら俺たちを諦める
気はやつには無いらしい。

258 :4/7:2012/05/03(木) 01:48:18.67 ID:HPNJqzKn0

するとBがかなり落ち着いた口調で外の女の子に対して「お前何なんだ?Aに何したんだ?」
「俺たち何かお前の気に触るような事をしたのか?そうなら謝るから許してくれよ」と説得する
ように呼びかけたのだが、まるでそんな事は意に介さないのかまた「見たい?見たい?」とケラケラ
笑いながら質問してくるだけだった。

このままこうしていても埒があかない、そう考えた俺が「俺が走るの結構早いのみんな知ってる
よな?このままこうしていても何も進展しない、たしか結構広めの道から林道に入ってここに
来るまで30分くらいだったよな。なら長めに見積もっても2kmないはずだ、夜道とはいえ走れば
7~8分、長くても10分もあれば舗装された道路に出るはず、そこまで出れば携帯が繋がるだろうし、
繋がらなくても通った車に助けを求めれるはず、だから行って来る」と提案した。

BもCも危険だからやめろと最初は反対したのだが、このままだとAがどうなるかわからないし、
今は夜の8時過ぎ、これから日の出まではゆうに7~8時間ある、それまで薄いテントのビニール1枚
隔てて正体不明の相手に対して篭城するなど明らかに無茶だし、俺自身そんな状態に精神的に
耐えられそうに無い。そのことはBもCも解っていたのだろう、1時間以内に戻ってくる、戻ってこない
場合にはCとBで探しに行くという条件付で納得してくれた。

外からは相変わらず「てー…」という声が聞こえてくる。
かなり怖くて足がすくんだが、俺は勇気を振り絞って外に出た。
するとすぐ横から「見たい?見たい?」と声が聞こえてきて、ビビりまくった俺が声のする方向に
懐中電灯を向けると、懐中電灯に照らされて俺の真横1mもないくらいの近くにやつがいる。
そして、ケラケラと笑いながら顔から手を離そうとした。

俺は大慌てでやつから視線を逸らし、そのまま来た道を懐中電灯の明かりを頼りに全力疾走した。
舗装されていない道路なので走りにくいと思ったが、車も通れるくらいの林道で轍もあり、結構
踏み固められているらしくそれほど走りにくくも無い、これなら予想よりも早く道路に出れるかもしれない、
そんな事を考えながら走っていると、突然道の先のほうに人影が見えた。

259 :5/7:2012/05/03(木) 01:49:55.66 ID:HPNJqzKn0

「え?」と俺が懐中電灯で照らすと、それは例の女の子だった…
「そんなばかな、ありえない!」、もう500mくらいは走ったはずだし追いつける訳がないのだが、
現実に目の前に女の子は存在している。
そしてまたケラケラと笑いながら俺に「見たい?見たい?」と言いながら顔から手を離そうとしている。
俺は視線をそらすと女の子を見ないように避けながらまた走り出した。
ついてこようがこまいが、道路にさえ出てしまえばこっちのものだ、という自信があったからだ。

それからどれくらい走っただろうか、少し先のほうに車のヘッドライトが通り過ぎていくのが見えた、
もうすぐ道路に出れるようだ。
少しほっとした直後、何かに足をつかまれ俺は転んでしまった。
わけが解らず足元を見てみると、ありえないことだが何も無い、何も無いはずなのだが、明らかに
俺の足は何かにしっかりと掴まれている感触がある。

しかもその「見えない手」はかなり力が強く、振りほどこうにも解けない。
俺が何とか脱出しようともがいていると、少し遠くから「てー…」と聞き覚えのあるあの声がしてきた。
「やばい、この状況でやつに来られるのはかなりやばい…」何とか振りほどこうともがくのだが、たちの
悪い事に見えないだけでなくその手はこっちからは触る事もできず、何度か手のあるだろう場所を
蹴ったのだが全てスカってしまった。

そんな事をしているうちに女の子は既に俺の背後にまで来たらしく、真後ろから「見たい?見たい?」
という声が聞こえてくる。
俺はもう死に物狂いで無理矢理立ち上がり、足をつかまれたまま強引に歩き出した。
そして何度も何度も転びながら、少しずつ前へと進んでいたのだが、ふと顔をあげたときに女の子が
顔から手を離し素顔を見せるところをほんの一瞬だが見てしまった。

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yoshida3

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