怪談・洒落怖

【新作洒落怖】ありがとう

投稿日:2020年6月29日 更新日:

本文

29 :もつお ◆2.80omBY0c :03/07/18 12:11「ありがとう」

俺がまだ学生時代の話です。友達のAは、凄く怖がりなヤツでした。
夜に仲間で集まって遊ぶときなどは、よく怖い話などをしてAをからかって
遊んでたものです。

で、ある日、学校も休みで暇だったので、Aの家にでも遊びにいこうかと思い、
昼過ぎくらいにAの家に遊びにいったのです。2人ともレゲーが好きで、
ファミコンやスーパーファミコンなどに熱中して「これ懐かしいなぁ~」
とか言いつつ盛り上がってました。んで、ふと気がつくともう午後7時過ぎて
たんですよ。とりあえず飯でも食うかぁ~って事になって、弁当屋に飯を買いに
いき、またAの家に戻ってきて、TV見ながら晩飯食ってました。

丁度その時、TVで心霊特集みたいなのやってたんですよ。怖がりのAは、
「チャンネル変えようやぁ~」とか言ってたのですが、Aの怖がってる反応が
面白く、また俺もオカルト番組好きだったので、無理矢理チャンネルそのままで
見てました。番組も終わりかけてた頃、ふと俺は、あるイタズラを思いつき
ました。ベタなイタズラですが「あっ!!お前の後ろに霊が見えるぞ!!」
ってな感じで怖がらせようと思ったのです。今思い返せば、その他愛のない
イタズラが恐怖の始まりだったのです。

31 :もつお ◆2.80omBY0c :03/07/18 12:29「ありがとう」続き

俺は、頃合いを見計らって、Aの左肩の上の一点を凝視し始めたのです。
もちろん、いかにも「そこになにかいる!!」とAに思わせる為の芝居
です。やがて、Aはそれに気付きました。不思議そうな顔をして
「何?何見てんの?」
と聞いてきましたが、俺はそれに答えずに無言で、ただAの左肩の一点を
見つめます。小刻みに震えてみたり、驚愕の表情を浮かべたりしながら。
我ながら、かなりの演技力だったと思います。それを見て、Aもかなり
不安になったらしく、後ろを振り向こうとしました。その時、
「振り向くな!!」
俺は叫びました。Aはかなりビビッて俺の顔を見ています。
もちろん、俺は心の中では「しめしめ」と思ってましたけど。
「いいか、何があっても絶対振り向くなよ。お前の左肩の上に、白目
むいて大口を開けて、狂ったように笑ってる女がいるんだよ」
と、俺が言ったあと、Aは暫く固まってました。しかし、いくら怖がりと
いっても、それを鵜呑みに信じるはずもなく、
「・・・お前なぁ、また俺を怖がらせようとしてんだろ・・・」
と、疑いの目を向けてきたのです。俺はヤバいと思い、
「馬鹿野郎!マジなんだよマジ!とにかくここから出るぞ!!」
と焦って芝居を続けましたが、Aは完全に俺を疑っています。
その時です。

34 :もつお ◆2.80omBY0c :03/07/18 12:53「ありがとう」続き

「はははははははははははははははははははははは!!!!!!」
と絶妙のタイミングで、女の狂ったような笑い声が聞こえたのです。
俺も想像してなかった出来事にビビリましたが、何の事はない、
つけっぱなしにしてたTVの、例の心霊特集の再現VTRの声だった
のです。しかし、Aは気が動転してるのか、俺の顔を見ながら震えて
います。「これはイケる!!」と思った俺は、「逃げるぞ!!」と
叫び、玄関に走りました。Aも必死の表情でそれに続きます。
Aの家を飛び出して、100mくらい走ったでしょうか。俺は突然止まり
「あはははははははは!!」
と笑い出しました。もうタネあかしをしようかなと思って。
(しかし、思い返してみると、俺も相当イヤなヤツですね・・・)
Aは、きょとんとした表情です。
「ゴメン、全部ウソ!!さっきの女の声もTVの声!!」
そう言うと、流石にAも理解したらしく、怒りの表情で俺を睨んできます。
そして、Aの俺に対する小言が30分くらい続きました。そりゃ、怒って
当然だと思います。結局、Aを完全になだめるのに1時間くらいかかり
ました。「Aに昼飯を1週間おごる」という条件で・・・

んで、それから3日くらいたった(もちろん昼飯は毎日おごりました)
学校での昼休みの時、Aが真剣な表情で俺に聞いてきたのです。
「なぁ、この前の件、ホントに冗談だったんだよな?」
俺は、こいつホントに怖がりなんだなぁと呆れつつも、
「当たり前じゃん。全部俺の芝居だって。アレか?まさか本物の幽霊
でも見たのか?」
と、からかいつつ聞くとAは、
「ヤッパそうだよな。・・・イヤ、いいんだ。気にせんでくれ」
と沈んだ表情で言いました。俺はちょっとやりすぎたかなと罪悪感を
感じていました。

36 :もつお ◆2.80omBY0c :03/07/18 13:39

その次の日からです。Aが学校にこなくなりました。
丁度インフルエンザが流行ってた時期だったので、風邪でも引いたのかな
と思い、その時は別に気にしませんでした。しかし、それからさらに3日
たってもAは学校に来ませんでした。携帯にも出ません。流石に心配になり
明日の学校帰りにでもAの家に行こう、と思いました。

その日の晩の事です。俺の携帯に着信が来ました。Aからです。
「おう、どうした?風邪でも引いたか?お陰でこっちは昼飯おごらずに
すんだけどなーハハハ」
と冗談混じりに言ったのですが、Aは無言です。ちょっと心配になり
「具合でも悪いんか?どーした?」
と聞くと、かすれるような声でAが言いました。
「・・・なぁ。この前の事、ホントに冗談だったよな?俺を怖がらせる
為のウソだったんだよな?」
俺は、まだそんな事気にしてんのかこいつと思い、
「だから、全部ウソだって!この前も聞いたけど、本物の幽霊でも
見たのかよ!?」
と聞くと、Aは暫く無言になり、こう呟きました。
「見た」
それを聞いて、俺も一瞬ビビッたんですが、もしかしたらAは、この前
驚かされた仕返しを俺にしようと、ウソを言ってるんじゃないかとも
思ったのです。
「またまた。今度は俺を怖がらせようとしてんだろ?それか、神経過敏に
なりすぎて幻覚でもみたんじゃねーの?それか悪夢とか」
「・・・俺も最初はそう思ったよ。だけど、あれから毎晩出るんだよ。
最初は、夢の中だった。白目むいて、アゴがはずれんばかりの大口
開けながら狂ったように笑う女が。・・・最初は夢見るだけだった
けど、ここ2~3日、いつも深夜に目が覚めるんだよ。で、何か気配
を感じて横を見ると、その女が隣に寝てんだよ・・・アッアッ!!
アッアッ!!って狂ったように笑いながら!!もしかしたら、それも
夢の一部かもしんないけど・・・お前、ホントに何も見てないんだよ
な!?俺もう、耐えられねーよ・・・」

37 :もつお ◆2.80omBY0c :03/07/18 14:00「ありがとう」続き

俺は暫くの間、何も言葉が出ませんでした。半分は、俺に仕返しをする
為にウソを言ってるのだと思い、半分はあまりにも真剣にAが話している
ので、本当の事ではないのかと・・・でも、あの女は俺が想像で作りだし
たモノなので、実在するわけがないのです。
「・・・とりあえず、明日学校出て来いよ」
そう言って、俺は電話を切りました。

次の日、Aは学校に来ました。思いのほか顔色も良く、沈んだ感じもない
ので、「あ~こいつやっぱり仕返しでウソついたんだなぁ~」と俺は思い
ました。Aは俺の姿を見つけると、笑いながら駆け寄って来ました。
「よう!」
「よう、じゃねーよお前。やっぱり昨日の話はデタラメだったんだな?」
そう俺が笑いながら言うと、Aは真剣な表情になり、こう言いました。
「いや、あれはウソじゃない。でも、俺はアイツにもう苦しめられなくて
すむ。やっと解放されたよ」
「ハイハイ、もういいって。お前も大した役者だよな。でも、解放された
って何だよ?」
と俺が聞くと、Aがニヤリと笑いながらこう言いました。
「次はパパの所へ行く。そうあの女が言ってたから。んじゃ、気をつけろ
よな」
そう言いながら、Aは教室に入っていきました。「一本とられた」。俺は
そう思いました。Aの話だと、俺の想像が作り上げたバケモノが、Aの所へ
現れ、次に創造主である俺の所へ現れる、と言う事なんでしょう。
「Aもなかなか、味な仕返しの仕方するじゃないか」と、俺は感心して
しまいました。実際、俺は少しゾッとしてしまったのですから。
しかし、恐怖はこれだけでは終わらなかったのです。

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yoshida3

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