第三部 二話 大霊障・後編
天道宗の集大成、大霊障と思われる同時多発の心霊テロ。 東京や大阪の人が多く行き交う場所に置かれた箱。 その周囲で人がバタバタと倒れていき、ネットで拡散した映像や画像にはどう見ても心霊としか思えないナニかが映り込んでいる。 そして人々の面前で行われたヨミによる集団入水自殺のパフォーマンス。 結局横浜で海に飛び込んだ人間で助かったのは2人しかいなかった。 その2人も病院に搬送されたということ以外の情報はない。 篠宮さんとの電話を終えた俺は阿部ちゃんと共に民明放送から最も近い現場に急行した。 駅構内は現場付近こ ...
第三部 一話 大霊障・前編
前回のあらすじ 天道宗とのインタビューで彼らの目的が『この国に破壊と混乱をもたらすこと』であると確信した水無月達。 インタビュー中に起きた同時多発の自殺テロによって、一連のヨミ騒動で最大級の衝撃を受けた日本社会は自殺のニュースに過剰反応するようになる。 伊賀野和美と丸山理恵の友情によって天道宗本部の場所が特定され、連雀と興信所の活躍によって天道宗の本山・道厳寺の場所が特定される。 水無月達が一歩ずつ進んでいく一方、天道宗もまた着実に状況を進めていた。 平将門ゆかりの神社関連施設が放火され、役目を終えた逆北 ...
第二部 四話 それぞれの覚悟
平将門を封じた結界が破壊されてから2週間。 この間に私たちは実に6回のデモを行った。 最初のデモが成功したことを受けて私はまずジローさんに相談して、天道宗による解体工事が終わるまでなるべくデモを続けようと決めた。 すでに鎮しずめ物が掘り出されてしまった解体現場を除く全ての現場で連日デモを行う。 OH!カルトや怪談ナイトの公式Twitterで参加を呼びかけ、平日だろうがなんだろうが構わず集まってシュプレヒコールを上げる。 2回目以降のデモではマイクを握るのはジローさんの役目となった。 もともと芸能人として活 ...
第二部 三話 魔法陣喪失
「ミルキーウェイ?」 和美さんからの電話に出ると、開口一番にその名前を言われた。 「天道宗の本部の場所がわかったわ。NPO法人ミルキーウェイ。ネットで調べたけど横浜にある会社ね。最上階がオフィスになっていて、そこが天道宗の本部みたいなの」 和美さんは興奮しているようで早口にそう言った。 「ちょっ…ちょっと待って。どうやってわかったの?」 「理恵さんがようやく話してくれたのよ。あの子はそこでヨミの霊を取り憑かされた。地下にすごい数の箱が保管してあるらしいから、すぐにでも乗り込むべきだと思う」 これから乗り込 ...
第二部 二話 壊された日常
前回のあらすじ 天道宗のインタビューを受け入れた水無月達。 インタビューを続ける中で天道宗の思惑を見抜いて、彼らの望みが『この国の破壊と混乱である』と断ずる水無月。 そんなさなかテレビをつけてくれと申し出る天道宗。 画面に映し出されたのは国内4か所で同時多発したヨミによる集団自殺テロの映像だった。 再び現れたヨミという恐怖にさらされたこの国は…。 土曜日の昼過ぎ。 朝から自宅のパソコンでネットゲームをやっていたら携帯がヴヴヴッと震えた。 画面を見ると由香里からのLINEが来ている。 ちょうど手が離せるタイ ...
第二部 一話 繰り返される悪意
前回のあらすじ 天道宗によるヨミ騒動や大規模な呪術結界の存在をOH!カルトで告発した水無月。 出演したラジオ番組「怪談ナイト」生放送中に天道宗から取材の申し込みが届く。 恐怖を抱きつつもまたとない機会に取材を受けることに決める。 水無月、神宮寺、伊賀野、ジロー、阿部の5人が民明書房の会議室で天道宗を待つ。 内線電話で私宛の来客が到着した旨を聞いてわずかに逡巡する。 受付のスタッフに、そのまま来客を会議室に連れてきてもらうよう頼んだ。 本来なら私が取材相手をロビーまで迎えにいくのが礼儀だが、たとえその数分間 ...
第一部 四話 恐れを乗り越えて
「てことはここも天道宗の結界の内側になるわけか」 神宮寺さんがフムと息をついて腕を組んだ。 私は泰雲堂の応接セットで神宮寺さんと向かい合っている。 宗方くんはカウンターに座っているがこちらに顔を向けて話を聞いている。 三谷建設でのヒアリングで天道宗の敷いたレイラインのことを知り、特殊な鎮物をした箇所をマーキングした地図をコピーさせてもらって、すぐに泰雲堂へと戻って神宮寺さんに報告をした。 「陣じんがあるならどこかに傷をつけて破綻させるのが結界破りの定番だが、ビルの地下に埋められちまったものはすぐにどうこう ...
第一部 三話 見え始めた影
天道宗を告発する記事を書いて1週間ほど経ったある日、私は東京駅の近くにある喫茶店に呼び出されていた。 呼び出しをかけたのは姉。 昔から頭の上がらない数少ない相手である。 篠宮神社の長女として最も神様の近くに置かれ、何をするにも拝殿や本殿が目に入る位置で行うよう躾けられて来た神様の許嫁。 母にしてみれば「神様がしーちゃんを直接見守りたいから、おそばに置かせて頂いてるだけよ」ということだが、本人にとってはたまったものではなかったらしく、高校卒業と同時に姉は東京へ出た。 両親の教育方針としてはただ「何をするにも ...
第一部 二話 望まぬ再会
前回のあらすじ 天道宗によるヨミ騒動や邪悪な箱の呪術を受け団結する霊能者達。 月刊OH!カルトでの特集をラジオでも拡散するべくジローに依頼する水無月。 リスナーから相談を受け呪術の施された箱を回収し、伊賀野庵で除霊を行う。 伊賀野和美の除霊に感銘を受けたジローは、伊賀野・笠根・水無月に出演を依頼する。 「はい。今夜も始まりました。毎週金曜の夜にお届けする怪奇な番組『怪談ナイト』のお時間です」 阿部ちゃんのキューに合わせていつも通りの言葉で喋り始める。 いつもは小林さんと2人きりなので、5人もいると放送ブー ...
第一部 一話 反撃開始
月刊OH!カルト8月号 特集ページより一部抜粋。 『ヨミの騒動を覚えている読者は非常に多いことと思われる。 つい先日の出来事であったし、近年稀に見る大規模テロであったことも要因だろう。 ヨミという女が現れて、数十人が自殺した。 自殺という極めてプライベートな事柄でありながら、それが数名あるいは十数名同時に行われたこと、さらに複数の場所で複数回行われたことから、政府や報道機関は組織犯罪ではないかという見解を発表しているが、テロとの明言までは避けている。 弊誌でも繰返しお伝えしてきたヨミ騒動であるのだが、この ...