957 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 18:27:58.39 ID:UVkn4pYzI
…クレヨ…
遠くで叫んでいる。
少なくとも、今は身に危害はないみたいだ。
少し落ち着いてから、俺はとにかくふもとへ下り始めた。
しばらくすると、小さな集落が見えてきた。
よし。助けてもらおう。
ドンドンドン 誰かいらっしゃいませんか~?
誰か~?
そういえば今何時だ?
時計は外したままだった。
こんな時間に起きてる人はそうそういないだろう。
958 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 18:36:55.93 ID:UVkn4pYzI
諦めて違うところへ行ってみよう
そう決心した時、
「ア、イタヨ」
え?
さっきまで叩いていた家の入り口から村人らしきひとが白目をむいて、手には『そいつ』を持っていた。
俺は自分がおかしくなるんじゃないかと思う位泣き叫びながらまた山林に逃げ込んだ。多分そう。
気づいた時、俺は木に寄りかかって寝ていた。
太陽のひかりが差し込んでいた。
959 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 18:45:11.65 ID:UVkn4pYzI
夢なんだ。俺は夢遊病か何かでここにいるんだ。
自分にそう言い聞かせながら立ち上がった。
しかし、流石に診療所に戻る気は起きず、車は捨てる決心でとにかく下ろう、
そう思って辺りを見まわした。
斎藤さんがいた。
斎藤さんがニコニコしながら上の方から
「そんなとこで何してるんだ?」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ」
気づけば俺は大学病院のベッドで寝ていた。
961 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 18:58:42.50 ID:UVkn4pYzI
「おい、しっかりしろ!!」
先輩の声で目が覚めた。
「あれ?俺どうなってたんですか?」
「今朝、斎藤って人がお前を運んできたんだ。体のどこにも異常がないのにお前ずっとうなされてたから心配したんだぞ!」
マジかよ…
「…斎藤さん、何か言ってませんでしたか?」
「そうなんだよ。“かわいそうに。もう逃げられないね”だとよ。どういう意味だ?お前薬でもやったのか?」
「そんなんじゃありませんよ。あ、そういえば車山奥の診療所に置いてきちゃったので、とりに行ってもらえませんか?」
962 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 19:03:38.85 ID:UVkn4pYzI
「俺も暇じゃねぇんだ。元気になったらお前が取りに行け。今日はゆっくり休んで…」
「俺一人じゃあんなとこ…」
俺泣いちまったw
そしたらさすがの先輩も気遣ってくれて、
「なんかあったな。仕方ねぇ。行ってやるか。だが、お前も来いよ。」
「はい…」
次の日、教授には相当無理を言って休みをもらって診療所まで行ってきたんだ。
963 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 19:10:56.70 ID:UVkn4pYzI
「こっちです。」
「は?こっちだろ。そっち行き止まりだぞ?」
そんなはずない。
山奥までいくバイトだったから、道順間違えて遭難なんかしたらやばいと思って頭に叩き込んだはずだ。
「こっちですよ。二日間通ったから間違いありません。」
「間違いねぇって…俺この辺詳しいから知ってるけどそっちは行き止まり。そんなに信じらんないなら行ってみるか。」
「はい。」
本当に行き止まりだった。目の前崖。
先輩の言ってた方に行ったらあった。診療所が。
964 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 19:17:43.79 ID:UVkn4pYzI
先輩が声を張る。
「斎藤さ~ん!いらっしゃいますか~?」
「はいはーい」
違った。
俺の知ってる斎藤さんじゃなかった。別人だった。ってか女の人だし。
先輩も驚いている。
「あの…斎藤さんですよね?」
「えぇ。でもなぜ?」
「昨日、この馬鹿を運んで来てなんていませんよね?」
「馬鹿って…」
「えぇ。初めましてよね?」
「ご主人とかいらっしゃいますか?」
「あの人は死にました。」
965 :本当にあった怖い名無し:2014/02/19(水) 19:24:49.85 ID:UVkn4pYzI
「し、写真とかないんですか!?」
「こっちよ。」
あぁ。マジかよ。俺の知ってる斎藤さんじゃねぇか…
「そ、そういえば、俺の車…」
「車?そんなものあったかしら。」
後日、車は見つかった。崖のしたで。
以上です。最後ですが、この話は俺が狂っていない限り本当にあった話です。