怪談・洒落怖

【新作洒落怖】勾玉

投稿日:2022年4月26日 更新日:

本文

127 :本当にあった怖い名無し:2009/04/28(火) 21:01:36 ID:y/qzGtBo0

中学生の頃祖父から聞いた話(話自体は祖父の父=曽祖父から祖父が聞いた話)

俺の地元の山に神主もいない古びた神社があるんだが、そこに祀られている
神様は所謂「祟り神」というやつで、昔から色々な言い伝えがあった。

大半は粗末に扱うと災害が起きるとかそんな話なのだが、そのうちの一つに
こんな話があった。それは戦国時代、当時の領主の放蕩息子が祟りなど迷信だ
といって神社のご神体を持ち出し、あろうことか酔った勢いで御神体に向かって
小便をかけたらしい。

それから暫くは何事も無かったのだが、数年後から異変が起きた。
(古い話で詳しくは伝わっていないが、口伝として語り継がれているのは以下のようなもの)

・詳細は不明だがあちこちで説明の付かない怪異が多発
・村人が何人も理由不明で失踪
・領主の顔が倍近くに腫れあがる原因不明の病気にかかり、回復はしたが失明
・問題の放蕩息子以外の3人の息子達は戦で重症を負ったり病気にかかったり
・問題の放蕩息子は乱心し山に入ってそのまま帰らず
・祟りを恐れた村人達が色々と神様を鎮める試みをしたが全てうまくいかず、村人は次々と村を去り事実上の廃村に

こんなところなのだが、まあ古い話であり、文献として残っているわけでもなく、事件の結末
も解らない中途半端な話なうえに、口伝として語り継がれる程度のものだったのと、その後村
に住んでいる人たちは後になって移り住んだ人たちばかりなので、いわゆる噂程度のものだった。

そして時代は変わって祖父がまだ生まれる前、明治維新から数年後頃の話。
神社は当時から神主などはおらず、村の寄り合いで地域の有力者などが中心となって
掃除や神事などの管理し、たまに他所から神主さんを呼んで神事をしてもらっていた。
また、口伝として残されている話などから、「触らぬ神に祟り無し」ということで、御神体は
絶対に誰も触れることなくずっとそのまま存在し続けていた。

129 :本当にあった怖い名無し:2009/04/28(火) 21:02:27 ID:y/qzGtBo0

戦国時代の事件以降、ずっとそんな状態で神社も村も何ら大きな出来事も無く
続いてきたのだが、ある年ある事件が起きてしまった。
ある日村の若い人たちが集まって話をしているときに、ふと前記の祟りの話が話題に
なった。その時数人の若者がこんな事を言い出したらしい
「祟りなんてあるわけがない、日本は開国して文明国になったのだから、そういう
古い迷信に囚われるのは良くない」と。

そんなこんなで、その後どういう経緯でそうなったのかは解らないが、迷信を
取り去るためにその御神体とやらの正体を見に行こうという事になったらしい。
まあ気持ちとしては一種の肝試し的な軽い気持ちのものだったのだろうと祖父
は言っていた。

ただし、全員が全員その話に賛同したわけでは無く、やはり祟りは恐ろしいという
ことで実際に見に行ったのは10人ほどの集団で、やはり肝試し要素があったので
夜中に集まり神社へ向かった。
(神社での一連の話は一緒についていった人から曽祖父が聞いた話。)
神社の境内に入り、拝殿の扉を開け中に入るとこじんまりとした祭壇があり、
そこの台の裏に古ぼけた桐の箱が置いてあり紐で厳重に封がされていて、どうやら
御神体はその中に入っているらしかった。

みなそこまで来たところで少し怖気づいてしまい、また、何か妙な胸騒ぎが
したため箱に触れることが出来なかったらしいが、最初に「迷信だ」と言い出した
やつが意を決して箱を手に取り、箱を固定していた紐などを解くと蓋を開けた。
中には綺麗な石(どうも勾玉らしい)が3つ入っており、とくにそれだけで何事も無く、
急に緊張のほぐれたため逆に気が強くなり、御神体を元に戻しそのまま朝まで
拝殿の中で酒盛りをしたらしい。

130 :本当にあった怖い名無し:2009/04/28(火) 21:03:10 ID:y/qzGtBo0

翌朝、拝殿で御神体の箱を開け、更に中で朝まで酒盛りをしていた事が
村中にばれ、若者達はこっ酷く叱られたらしいが、特にその後なにもない
ため、村人達もその事をそれ以上追求しなかった。
一応その時神社で酒盛りをした連中を連れて、村の地主が神社へ謝罪しに
行ったらしいが。

3年後、村で妙な事件がおき始めた。
村の外れに猪や鹿や猿が木に串刺しにされて放置されていたり、夜中に人とも
獣ともつかない不気味な声を聞いたという人が何人も現れたり、あちこちの
家に大量の小石が投げ込まれたり、犬が何も無い空を見上げて狂ったように
吠え出したり、これは曽祖父も深夜に便所へ行った時にみかけたらしいが、
黒い人影が何十人も深夜に列を作って歩いているのをみかけたりと、
とにかく実害のある被害者はいないが気持ちの悪い事件が多発し始めた。

こういった事件が多発したため、流石に村でも「3年前の事件が原因ではないか」
と噂になり始めたのと、治安の面から不安なので、村人は村の駐在さんと相談し、近隣の
警察署に応援を頼み警備を厳重にしてもらう事と、村で自警団を作り夜中に巡回する事、
それと同時に、3年前の事件を引き起こしたものたちでもう一度神社へ謝罪しに行く事など
が決まった。

しかし、様々な策を講じても一向に怪現象はとまらず、それどころかとうとう被害者
まで出るようになってしまった。
山に入った村人が、何かに襲われボロボロの死体で発見された事件を
かわきりに、子供が遊びに行ったまま帰らない、自警団の見回りをしていた4人が
4人とも忽然と消えてしまう、夜中に突然起き出して何か喚きながら外に飛び出し、
そのまま失踪してしまう、女の人が何かに追われているかのように必死で逃げて行き、
自宅に戻ると包丁で自分の首を掻き切って自殺してしまうなど。

131 :本当にあった怖い名無し:2009/04/28(火) 21:04:30 ID:y/qzGtBo0

そういった事件が立て続けに1ヶ月ほどで起きたため、最早村人達には手に負えないと、
何か解決策は無いか話し合っていたところ、村のおじいさんが「山向こうの○○神社は、
山の神社の神事の代行を何度かおこなっていて、それなりに縁があるようなのでそちらを
尋ねてみたらどうか」との提案をした。
他に何か良い案があるわけでもなかったため、だめもとで明日○○神社へ向かう事
で話し合いは終った。

翌日、地主が3年前の事件の主犯格などを連れて○○神社へ向かい、神主さんに
取り次いでもらう事にした。
神主さんは、とにかくお互い落ち着いて話そうということとなり、社務所で一連の事件等
の事を詳しく話す事にした。
しかし、ある程度話が進むと、神主さんは「それはおかしい」と言い出した。
どうも山の神社の御神体は祭壇の上においてある平たい箱に入った銅鏡であって、
桐の箱の勾玉は違うらしい。
戦国時代の話にしても、領主の息子が粗相をしたのはその銅鏡であると○○神社に
伝わっているらしかった。
そもそも、○○神社は何代も前から山の神社の神事を代行してきた経緯があり、
自分も若い頃に一度代行した事があるが、桐の箱や勾玉の事は全く知らないらしい。
実は地主も若者達が開けたのはてっきり祭壇の上の箱の事だと思っていたらしく、その時は
かなり驚いたのと、地主も桐の箱に入った勾玉の事を今はじめて知ったようだった。

また神主さんは、これは悪霊や祟り神による祟りの類では無く、もっと異質な何か別なも
のの仕業で、とにかく一度その勾玉を見てみないことには解らないが、もしかすると山の神社
の神様はその「何か」を勾玉に封じる役割があったのではないか?とのことだった。
神主さんは、まず○○神社に残る文献を調べてみて、何か勾玉に関する情報が無いか
調べてみるとの事で、2日後に地主の家で落ち合う事になりその日は帰る事となった。

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