怪談・洒落怖

【新作洒落怖】夢魅

投稿日:2023年5月15日 更新日:

本文

29 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:14:57.17 ID:YSGKGk/pO

10年近く前の話だが書かせてもらいます

もう高校を卒業する間近の話だ
進路も決まり、進学では無く就職する事になった私は毎日暇を潰す事だけを考えていた

そんなある日友人から近くの山の麓にある廃寺に行こうと誘いがあった
何度か行った事はあったがこの暇をどうにかしてくれるならと連いて行く事にした。

メンバーはAとAの彼女Eとその友達のKだ。
Aの彼女とは面識はあったがKとは初対面だった、意外とタイプでテンションもかなり上がり、4人でワイワイ騒ぎながら歩いて行った

廃寺まではそう遠くなくすぐに到着した
何度か来た事があるとはいえ夜の廃寺などいいもんではなく、4人とも一気に静まり返った

A 「何度か来たがやっぱり雰囲気わりーよな」
私 「まあなーいいもんではないわな、廃寺だもんよ」
E 「私は初めてだよ、本当に何か嫌な感じだね…Kは来た事あるんだよね?」
K 「うん、彼氏と来た事あるよ」

なぬっ彼氏など聞いてないぞとなり、上がっていたテンションも急降下、帰りたくなった私は自分勝手に言った
私 「もう良くね、ある程度見たし、帰ろうや」
A 「そうだな、結構遅いし帰るか」
と帰る準備を始めてた時に突然Kが「何か階段みたいなのがある」と言いだした
見てみると地下の貯蔵庫的な所に続く階段だった

30 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:15:39.71 ID:YSGKGk/pO

今までは気付かなかったが確かに階段があった

ここでやめておけばいいのに好奇心旺盛な私はテンションを急上昇させ、入ってみようと皆に言いましたが、AもEもやめた方がいいと嫌がっていた
だがKは「私は行く!!」とノリ良く言い、じゃあ二人で行く事となった

AとEはもしもを考え上で待つ事になり懐中電灯を持ち二人で階段を降りて行った

階段は余り長くなく、すぐに降り終わり、そこには10畳程のやはり貯蔵庫というか倉庫があり、本やら何やら無造作に積まれてあっただけだった

私 「何だ、つまんねーの、古い本とかばっかじゃん」
K 「本当、何かお宝的な物期待したのに」
お前は金目の物が目的かいっ!!と思いながら物色していると一番奥に壁に直接埋められた仏壇のような物があった
K 「あっ金庫発見!!」
いやいや、諦めかに仏壇じゃね…と思いながらKを無視し仏壇の前まで行った
仏壇の開き中央には何枚かお札が貼ってあってあり、これは無いわと触れずに行こうとすると空気嫁!!と言わんばかりにKがいきなり力任せに仏壇を開いた
お札はビリビリと破れ埃を巻き上げながら仏壇は開きは開かれた
仏壇の中は何も無い?と思いましたが隅の方に腐った桐箱が置いてありました
Kがおもむろに桐箱を取り出し、蓋を開けると中には丸い鈍く光る玉が入っていました

32 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:42:43.61 ID:YSGKGk/pO

玉を見た瞬間に背筋に寒気が走り、一瞬気が遠くなるような感じがした

Kは何とも無いのか「キレーイ、これ私が開けたから私のだからね」と嬉しそうに玉を見つめていました

私 「馬鹿ッんな所に入ってたんだから良い物のはずないだろが早く戻せ」
K 「もー怖がりだなー私君は…何とも無いって」
と笑顔でスタスタ一人で上に上がって行きました

本当に大丈夫なのか?と思いましたが何もあるわけないか!と歓楽的に考え、私も上へ上がっていった

上に上がった瞬間AとEから声を合わせたように「遅い!!!」と言われました、思った以上に長い時間下にいたらしく、時刻は2時を過ぎようとしていた

流石にヤバイと思い大急ぎで4人とも帰り、その時は帰る事だけを考え、玉の存在など忘れていました

33 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:43:18.46 ID:YSGKGk/pO

そしてまた暇に追われる毎日に戻り、丁度一週間が過ぎようという時にまたAから連絡来て、この前のメンバーで家で飲もうとなりました

Aの家に行くとすでに私以外は集まっていて、すでに飲み始めている最中でした
A 「おーっお疲れ、遅かったじゃん」
E 「久しぶりって一週間位か」
K 「私君お疲れー一週間ぶりだねー」
一瞬Kと気付きませんでした、一週間でこれほど変わる物かという位変わっていました、ナチュラルな化粧は厚く濃ゆ目に、黒ロングの綺麗な髪はギャルみたいに盛られていた
私 「Kかっ!?めちゃくちゃ変わったな」
K 「まあねー」
Kは元々テンション高い感じでしたが前以上にテンションとノリが上がっていました
私 「何だよ、良い事あったのかよ、えらい上機嫌じゃん」
K 「良い事って言えば良い事かも」
と含み笑いをしているKに少し不気味さを覚えました

34 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:43:53.50 ID:YSGKGk/pO

そして4人で飲み始め就職や進学、たわいのない話を飲みながら話しをしました

私 「Aは家業を継ぐんだよな?EやKはどうすんの?」
Aは実家がお雛様や子供用の刀や鎧などを扱う老舗の店をしてました
E 「私は地元の大学に行くよ、Aの家の手伝いしながらね」
AもEも高一から付き合ってて、ずっと結婚するとか言ってるバカップルだ、当たり前の返事が返ってきた
K 「私はねーしたい事があり過ぎてまだわかんないんだ、でもね、何しても上手く行く気がするから大丈夫だよー」
その時はKの返答は自信家なんだな、と思える位の物だったが、ずっと話して行く内にKの言葉全てに違和感を感じ始めた

Kの言葉には自信が満ち溢れてる、いや、異常なまでに自信過剰なのだ
自信があるのは悪い事では無いが行き過ぎてる気もしてるなと考えた時にあの「玉」の事を思い出した

私 「そういやKあの時の「玉」どうしたんだよ?しっかり返したのか?」
A 「何だよ「玉」って?」
私 「いや廃寺の地下に降りた時にKが持って帰っちゃったんだよ、お札とかあったから、良い物じゃないだろ?」
A 「札!?何を持って帰ってきてるんだよ、Kそれどうしたんだよ?」
K 「金庫開けたの私だしあれ私のだよ、今も持ってるし」
そう言って鞄から「玉」を取り出した、気のせいか「玉」は前と輝き方が違く見え、前以上に気が遠退く感じがした

35 :本当にあった怖い名無し:2012/05/01(火) 08:45:24.97 ID:YSGKGk/pO

A 「何だよ、それ?普通じゃなくね?一瞬気分悪くなったし」
どうやらAも私と同じ感覚を感じたようだった
K 「そんな事ないよ、逆にこれ持って帰った日からいい夢ばかり見るし、良い事ばっかだよ」
話しを詳しく聞くと、「玉」を持ち帰った日から毎日小さな頃から持っていた様々な夢が叶う夢だけを見るようになり、学校の成績、評価も上がり、雑誌に送った自分が書いた物が載ったりと色々良い事ばかり起こるらしい

なるほど、Kの自信はここからかと思った、だから今までの地味な格好も変え、過剰なまでに自信に満ち溢れてたんだなって

A 「ちょっと見せてみろよ、良い事悪い事抜きにしても普通じゃないだろ?」
そういってKから「玉」を取って観察し始めた
A 「石や金属じゃないな表面に塗ってあるのは恐らく漆だ、ただそれだけじゃないな何か混ぜてある」
家業の関係上、漆など詳しいAはまじまじと「玉」を観察していた

A 「駄目だ、俺じゃわかんねー親父に見せたらわかるかもしれないけど」
そう言って「玉」をKに返した

その後もしばらく話しながら飲み、そろそろ遅くなったし解散となり、帰ろうとしてる間際に玄関でAが言いました
A 「K!!良い事ばかりかもしれないけど普通じゃない事はわかってんだから、すぐに戻せよ」
K 「大丈夫だって、私が成功したら皆にこれを貸したげるから」
そう笑顔でおどけて見せた、それがKの見せる最後の笑顔となった

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