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怪談夜行列車

実話怪談

実話怪談・バチあたりの町

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夜行列車ブログに寄せられた実話怪談をご紹介します。
地名・人名は伏せてありますが現在も実在するお話です。

とある山奥にある町のお話。
日本有数の山岳地帯のほぼ真ん中に位置する町の歴史と現在の様子をご紹介します。

そこはかつて林業で栄えた町でした。
その昔、源氏から逃げ延びた平家の残党が女子供を連れて山の奥深くに隠れ住んだのが町の成り立ちです。
平家の侍達は逃げ延びる際に一体の仏像を大切に守っていました。
源氏からの追跡を乗り切ったと判断した侍達は、如意輪観音像にょいりんかんのんぞうというその仏像を本尊として寺を建立し、その地に定住することを決断します。
如意輪観音像とは、六道全てに救いの手を差し伸べると言われる六本の腕を持つ観音様で、あぐらの姿勢で右足を立てて、右の膝に乗せた右手を頬に当てて考え込んでいるポーズの、ややアンニュイな雰囲気を纏った仏像です。
「どうやったら衆生の全てを救うことができるだろうか……」と日々考え続けておられる大変ありがたい観音様であると言われています。


※参考イメージ(写真は談山神社の如意輪観音像・出典写真AC

山の奥深くから少し降った位置に寺を建立し、谷を挟んだ対面に神社を建立。
さらに降った山裾に集落を設けます。
上空から見ると、逆三角形▽の左の頂点がお寺、右の頂点が神社、下の頂点が集落となります。
この逆三角形を鎮護の結界として見たて、さらにお寺と神社を見上げる位置に集落を設けて祀ることによって、神仏の加護を受けられるようにしたのです。
戦に負けて逃げ落ちた平家の残党。
無念であったと思います。
女子供を守りながら山に隠れ住んでいた時の不安な気持ちは想像に難くありません。
それらの想いを神仏に委ねて、その地に根を張ることを決断したのでした。

さて、神仏に守られたこの集落はその後、長い時代を下って現代まで生き続け、山奥ながらも成長し町と呼べるほどに大きくなっていきました。
皮なめしなど、かつては部落的と言われた仕事も必死にこなして、人里離れた山の奥深くという環境にあっても人口を増やし続けていたのです。
そして転機が訪れます。
昭和の戦後復興や高度経済成長による木材の高騰があり、林業バブルと呼ばれる時代がやってきます。
木材の価格は上がり続け、1980年代に林業のピークを迎えるまで、町は静かな熱狂と共に成長を続けました。
山奥にありながら町として機能していたこの町には多くの労働者がやってきました。
近隣の県などからやってきたニューカマー労働者はやがて家族を呼び寄せ、この町の町民として生きていく決断をします。
最盛期には5000人を超える人口が暮らす、山の奥地にあっては奇跡のような活気がある町でした。
その好景気が思い上がりという不幸をもたらします。
昔から町に住んいた町民は、県外などから移住してきたニューカマーのことを「奇流民」と呼んで見下すようになります。
林業で生計を立てる町民にとって山は文字通り宝の山であり、宝に群がる虫のごとくにニューカマー達を毛嫌いし、差別していました。
危険を伴う林業にあって組合に入れない。
町内会にも入れない。
ニューカマー達には屈辱的な生活が待っていましたが、それでも5000人を超えるほどにまで人口は増え続けていました。

もう一つの転機はダムの建設にありました。
逆三角形▽の位置どりに作られたお寺と神社と町。
お寺と神社はそれぞれ対面する山の中腹に建てられており、山と山の間に渓流が流れていました。
逆三角形▽の中心付近を渓流が流れ、上流に配置された墓地から流れてきた穢れを神社とお寺で浄化して下流へ、そして海へと流すように考えられたものでした。

その渓流の下流を堰き止める形でダムが建設されました。
ダムの建設により渓流の水面は上昇し川となりました。
渓流沿いに暮らしていた町は川の底に沈むこととなり、その場所から山を登るように町は移転しました。
遥かな時代から見上げて敬ってきたお寺と神社を見下ろす位置に新たな町をつくったのです。
そのことは町民から神仏へ対する敬意をゆっくりと奪っていきました。
かつては高みに置いて見上げ敬っていた神仏に対し、世代を経ることで今ではお隣さんと同じ感覚で視線を並べているのです。
言葉では言い尽くせない無念と不安を神仏に委ねたご先祖様の想いは、もう残っていませんでした。

町民が神仏への態度を改めたことにより、神仏もまた町民に対する態度を改めることとなります。
ホラー小説のような恐ろしい出来事は起きませんでしたが、わずか数十年の間に千年に及ぶ町の成長は終わりを迎えます。

かつては背筋が伸びるほどのご神気に満ちていた神社は代替わりとともに神主を継ぐ者が現れず、お寺に新しく赴任してきた住職には「よそ者が来やがった」と言って嫌がらせをする始末。
菩提寺に除草剤を撒くなどという信じられない行為が現実に行われました。
住職が町に受け入れられるまでには十年以上を要したといいます。

やがて林業にも衰退が訪れます。
国外の材木が手頃に輸入できるようになり、日本の景気低迷が拍車をかけ、ついには林業は国の補助金がないと成り立たないと言われるまでに衰退します。

ダム建設の際に受け取った国からの補助金で味を占めた町長は、自宅の前を通るように県道を誘致します。
逆三角形▽の中心付近を流れていた渓流は、その頃にはダムによる水位上昇で川幅30メートルほどの立派な川となっていました。
元々あった橋から100メートルほど遡った位置に新たに県道を通して橋を掛けることにより、町長の自宅の前に県道が通りました。
この工事でも大した金額の補助金を受け取ったといいます。
そしてその山道整備によって山の一部を崩してしまったことから、町にさらなる災いが降りかかることになります。

この町長は元々建築業の社長で町の有力者でした。
新しい住職が赴任する際に大反対したよそ者排斥派の筆頭で、ある会合の際に「寺から借りてきたで~」と言って、片手で鷲掴みにした仏像を皆に見せびらかすような人物です。
県道を通す際に「山を崩さないように迂回した方が良い」という住職や神主の言うことを聞き入れなかったのもこの町長です。
さらにはせめてもの供養にと、山を崩した場所に奉納された大日如来の碑文の横に、町おこしイベントのモニュメントを設置したりもしています。
とにかくやることなすこと全てに意味があるかのような徹底したやり口で神仏を挑発するこの町長は、滅びの定めを表す兆候だったのかもしれません。

林業が廃れたことにより元ニューカマーの家族は土地を離れていきました。
神社は廃神社となり、神様の気配は感じられなくなりました。
青年団の団長のYという青年が急死しました。
誰もが誰かを憎んでいがみ合っていた町民の中で、Y青年だけは誰にでも分け隔てなく優しさを持って接する人柄の好青年で、この町においては珍しく誰からも頼りにされ、愛されていました。
いつも通り重機で山に入り仕事をしていたY青年がなかなか戻らないことを不審に思った仲間が彼の仕事現場に探しに行ったところ、倒れていた重機の側で亡くなっているY青年を見つけたとのことでした。
青年団のまとめ役で人望厚く、次期村長と言われていたY青年の突然の訃報は町を暗く沈めました。
菩提寺の住職が葬儀を執り行いました。
葬儀用の太い蝋燭に火がつけられ、お経があげられます。
真っ青な顔で異常なほどの汗を流しながら葬儀を終えた住職に違和感を感じた町民がたずねたところ、次のように言われました。
「普通、葬儀の時に使う蝋燭は放っておけば燃え尽きるまでに何時間もかかるものだ。それが僅か十分ほどの時間で根本まで燃え尽きてしまったのは異常と言うほかない」
「葬儀会場に入った時から恐ろしい気配が満ちている。明らかな怒りの気配で非常に恐ろしい。前日に供養に訪れた事故現場でも同じ気配を感じた」
「山神様というのは実際にいる。おそらくYさんは山で何かしてしまったんだろう。元々は入ってはいけない山だったのかもしれない」

神社が廃された今となっては知るよしもありませんが、もしも神社が山神様と人間の間を取り持つ役割をしていたのだとしたら、今後は山神様の怒りが直接降りかかることになるのかもしれません。

現在では過疎のループによって町はさらなる人口減少に直面しています。
まず大きな病院がなくなり、高校がなくなり、小学校と中学校が統合され、幼稚園もなくなりました。
中学を卒業した子供が高校へ行くには町の外に出るしかありません。
1日1本のバスでは通学できないために全寮制の高校がある街へ行くのです。
そうして高校や大学を卒業した彼らが町に戻ってくることはほとんどありません。
かつて5000人を超える人口を抱えていた町には、現在400人ほどの町民しかいません。
殆どが高齢者で、若い人ほど町から出て行きます。
このループから抜け出すのはもう無理だと町民は諦めています。

現在、町には鬱屈した陰の気が充満しています。
それは過疎によるものだけでなく、山を崩したことも影響しているのです。
かつてお寺や神社や山に守られるように存在したこの町は、自らその結界を壊すことによって陰の気を溜め込むハメになりました。
川の流れに沿って上流にあるお墓から川下へと穢れを浄化しながら気を運ぶことを意図した町の配置。
山の一角を崩すだけでそのラインは変化してしまいました。
この陰の気によって町全体の運気は下がり続けています。

住職は今でも自らの信仰心のみを頼りに菩提寺を守り続けています。
後継ぎがいないので住職が亡くなったらこのお寺も廃寺となる予定です。
そう遠くないうちにこの町は、神も仏もない町になることでしょう。
ただのありふれた過疎化のお話かもしれません。
しかし過疎化したから神仏が離れたのではなく、神仏に対する尊崇をやめた後にゆっくりと確実に過疎化していったことは紛れもない事実です。
うがった見方をするならば、町の次世代の希望ともいえるY青年が突然に亡くなったことにも意味があるように感じます。
「この町の未来はない」と示されているような気がするのです。
私はこの町の歴史と顛末を見てこう思うのです。

神様が離れていき、仏様も離れてゆく。
バチあたりの町であると。

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やこう

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