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駅のホームにいる霊がどう見てもウルトラマンにしか見えない件

投稿日:2023年8月11日 更新日:

「僕が見たものがなんだったのか、わかる人がいたらと思って」
そう語ってくれたのは、都内で接骨院を営むKさんという男性。
Kさんにはとある思い出がある。
今となっては思い出したくない記憶だが、それがなんだったのか、今も気になっているという。

東京の西のはずれの街で生まれ育ったKさんは、幼い頃から霊感があった。
物心ついた時には街中や家の中で変なモヤを見るようになっていた。
毎日見かけるものだし、彼に襲い掛かってくるわけでもなかったから、特段それが恐ろしいものであるという認識はなかったという。
人間サイズの白いモヤ。
白とクリーム色の中間みたいな風合いの、輪郭のあやふやな存在。
大きいのから小さいのまでいて、子供心になんとなく「オバケには大人も子供もいるんだ」くらいに思っていたという。

不思議なことにそのモヤは風になびかない。
煙のようにも見えるが、車や人がモヤにぶつかっても形が変わったりすることはなく、強い風が吹いても飛ばされていくこともない。
ただモヤっとそこに見えるだけで、空気とかの影響は受けていないようだった。
そのモヤは全く動かないから、子供の頃はモヤに触ろうとしたり、モヤの中に顔を突っ込んで何が見えるか試したりしていた。
結局モヤはモヤで、触ることはできないし、向こう側の景色がぼんやり見えるだけで特に面白いことはなかった。
日によって現れる場所も違っていて、彼が見ている前でフッと薄くなって消えたり、逆に目の前にいきなりブワッと現れて驚いたりもした。
その日その場所にたまたまいて、それは街の中とか家の中とか関係なく、特に悪さをするわけでもない。
そんなモヤが見えるのが普通だったから、彼は特に警戒したりすることもなく、そういうものだと理解していた。

ことあるごとに「あそこにモヤがいるよ」と教えてくる彼に、親は「何ばかなこと言ってるんだ」とまともに取り合うことはなかった。
当時は子供のメンタルケアに過敏な時代ではなかったし、Kさんの両親も彼が本気で言っているとは思っていなかったようだ。
「まーた言ってるよ、変な子だねえ」と言われるのがだんだん嫌になって、彼は親にモヤのことを教えるのをやめたという。

二十歳くらいの頃にメンタル系の病院を何件か受診してみたことがある。
そこでも自分の見ているモヤのことを医師に伝えると「疲れですね」とか「人付き合いによるストレスが云々」などと適当にあしらわれてしまい、彼の疑問に答えてくれることはなかった。
そんなこんなで彼は自分の見ているモヤがなんなのかわからないまま、それはそれでいいやと観念して生きてきたという。

三十歳すこし手前の頃に医療系の専門学校に通い始めた彼は、実家に戻ってそこから専門学校に通うことにした。
地元の駅からJR青梅おうめ線に乗って立川たちかわ駅で乗り換え、そこから新宿方面へ向かうルート。
この立川駅の青梅線乗り場にソレはいた。
街中で見かけるモヤは当然、駅のホームや電車の中でも見かける。
青梅線の下りホームには結構モヤがいて、階段を降りながら「おー今日もいるねえ」なんて思いつつ通学していた。

※以下の動画は実際に立川駅の青梅線ホームに行って撮影したもの。

立川駅を使い始めて1年以上経った頃、「なんか最近モヤ少ないな」と思うようになった。
ホームに結構な数いたはずのモヤが、明らかに減っているのがわかったという。
日によっていたりいなかったりするのでそれほど気にしていなかったものの、気がついてしまうと明らかにモヤの数が減ってきているのが気になる。
そうしてモヤの数を気にしながらさらに1ヶ月ほど経った時に、ソレを見つけた。

煙っぽいというかモヤッとしていて輪郭の感じられないモヤ達の中に、あきらかに人型をした細身のモヤが混じっているのが見えた。
顔らしき輪郭があって、胴長で手足もしっかり生えている。
細身でひょろ長の人間らしい形をしたモヤがそこにいた。
まばたきを繰り返したり目を細めたりしてよく見てみるも、どうにも他のモヤ達と同じ質感というか、同系統のモノのように感じられる。
初めてみるタイプの人型モヤにテンションの上がった彼は、到着した電車に乗り込んでからもその人型モヤを凝視し続けた。
動いている。
その人型モヤは他のモヤ達と違って場所を移動しているようだ。
歩いている風ではなくスススーッと滑るように移動して他のモヤのそばに移動する。
そして腕に該当する部分を胸の高さまで持ち上げて交差させるのが見えた。
何をしているんだ?
彼の目は釘付けになっていた。
腕らしきモノを交差させた人型モヤ。
その腕からプシューッと霧吹きのようなモヤを出して、そばにいたモヤに吹きかけた。
人型モヤも他のモヤ達も、質感的には風の影響を受ける感じではない。
だがその腕から出てきた霧状のモヤは、まんま霧吹きのような感じで勢いよく飛び出してそばにいたモヤに降りかかった。
霧状のモヤは吹きかけられたモヤにぶつかってモワッと流れる。
タバコの煙なんかを壁に吹きかけたようなイメージ。
そのまま空気に溶けるように消えていく。
そして吹きかけられた側のモヤも同じように空気に溶けて消えたという。

何が起きたのかわからず凝視していると、交差していた腕を下ろした人型モヤはまたスーッと滑るように移動して他のモヤ達の一人へと近寄っていく。
そして腕を交差させて、霧吹きのようなモヤを発射して、浴びせられたモヤは煙のように消えていく。
消しているのか?
わけがわからないまま彼はその光景を眺めていた。
結局、電車が出発するまでの数分の間に、ホームにいたモヤ達はどんどん数を減らしていき、ある時その人型モヤ自身もフッと薄くなって消えてしまったという。

それ以降、立川駅で乗り換えるたびに彼は人型モヤを探すようになった。
そして結構な確率でその人型モヤは現れた。
唐突にフッと現れて、ホームにいる他のモヤ達のそばにスススーッと寄っていき、交差させた腕から霧状のモヤを発射して、浴びせられたモヤは消滅し、ある程度の時間が経つと人型モヤも消えていく。
そんな光景を何度も見るうちに彼は、「どう見てもウルトラマンだろ」と認識するようになり、人型モヤの活躍を見るのが通学時の楽しみになっていった。
いったいあの人型モヤはなんなのか、なんで他のモヤ達を消して回っているのか、もしかしたらなんらかの「お助けマン」的な存在ではないのか。
離れた位置から眺めているだけだが、人型モヤの動きから完全に彼は「正義の味方」的なノリでその光景を楽しんでいたという。

専門学校の卒業を目前に控えたある日、彼はとうとう人型モヤに近づいてみることにした。
卒業したらこのホームを使うことはなくなるし、その前に人型モヤの勇姿をこの目に刻みつけておこうと思った。
「完全に誤解していたんです」と彼は言う。
いつの間にか、消される側のモヤはなんらかの事情で現世に留まっている哀れな霊であり、人型のモヤはそれを消して回ることによって助けているのだと思い込んでいたという。

人型モヤがスペシウム光線(仮)で他のモヤ達を消しているすぐ真後ろに近寄り、人型モヤの背中側からその様子を観察する。
今までどんなモヤにも触ろうと思っても触れなかったし、向こうから彼を認識したことなど一度もなかったから大丈夫だと思い込んでいた。
写真に映らないかなとスマホを取り出して人型モヤにカメラを向けた。
その瞬間、人型モヤの顔の部分がグルンと勢いよく振り返って彼を見た。
目が合ったとわかって心臓が止まりそうになった。
今までモヤだと思っていた人型モヤの顔には目と口があった。
ムンクの『叫び』みたいな印象。
つるりとした輪郭に、二つのまん丸な目と大きく開いた口。
目と口に該当する部分には何やら黒くて小さなウネウネしたものが蠢いていて、それが集まって目と口のように見えているのがわかった。

「…………」
目が合ったまま彼は固まってしまい、その場から動けなくなった。
二メートルも離れていない位置で彼と人型モヤは見つめ合っている。
真っ白な頭のまま、人型モヤの体がねじれていくのを見ていた。
スマホを向けようとした彼に、頭の部分だけをグルンと180度回転して顔を向けた人型モヤ。
その頭部を追うように上半身がギギギと彼の方に向いた。
両手を交差させた状態、スペシウム光線(仮)を打っていた姿勢のままで。
ムンクみたいなまん丸の目と口が縦長に変形していくのが見えた。
怒ってる?
消されるの?
そう思った瞬間、

「1番ホームに到着の電車は奥多摩行き」

というアナウンスが頭上のスピーカーから大音量で聞こえてビクッと体が跳ねた。
見ると到着した電車のドアが開くところだった。
無我夢中で電車に駆け込み、ドアの手動開閉スイッチを連打してドアを閉める。
ホームが見える側の座席に座り、震えながらさっきまでいた場所を見る。
人型モヤは動いておらず、さっきまで彼がいたであろう場所に向かってスペシウム光線(仮)をプシューッと発射していた。
しばらくスペシウム光線(仮)を放っていた人型モヤは、その後フッと薄れて消えてしまった。
ホームには他のモヤ達がまだいるのが見える。
まさか追いかけてきたのかと車内を見渡すも人型モヤの姿はない。
目の端にフッとモヤが現れたので声を上げそうになったが、いつものように輪郭のあやふやな無害のモヤだった。
電車が走り出して最寄駅に着くまで、彼はいつでも逃げ出せるように周囲を窺っていたという。

その後なにごともなく自宅に帰ることができたが、彼はどうしても翌日から立川駅の青梅線ホームを使うのが怖くなってしまった。
卒業まであと少しの間だけという約束で親に頼んで立川駅まで車で送迎してもらい、青梅線のホームで乗換せずに済むようにした。
それ以来一度も立川駅の青梅線ホームには降りていない。
「たぶんアイツは今でも青梅線のホームで他のモヤ達を消して回っているんだと思います」
そう言ってKさんは話を終えた。

結局、あの人型モヤがなんだったのか今でもさっぱりわからない。
悪い霊、あるいは可哀想な霊を消しているのだと勝手に思っていたが、あの恐怖を思い出すととてもじゃないが人型モヤがまともな存在だとは思えないという。
もしあの時スペシウム光線(仮)を自分が受けていたらどうなっていたのか。
それを想像するのが怖い。
この体験から10年経った今でもたまに夢に見ることがあるという。
夢の中で彼はスペシウム光線(仮)を受けて消滅する。
そして自分の叫び声で目を覚ます。

もしも立川駅の青梅線ホームで彼と同じようなモノを見かけたことがある人がいたら、ぜひ情報を教えてほしいという。
「アレがなんなのかわかる人がいたら正体を教えてもらいたいんです」
今まで自分以外にも霊が見えるという人とは会った事があるが、場所が同じでも見え方が全然違うので、彼がモヤだと認識しているモノに関しても全然違う見え方の人がいるかもしれないと期待しているという。
Kさん自身は、ハッキリと人の形をしたモノを見たのはこの体験だけで、そういうモノだと今でも思っている。
立川駅青梅線ホームには何かがいる。
情報をお持ちの方がいたらぜひコメント欄またはツイッターでお寄せいただきたい。

参考写真

※立川駅青梅線ホームの画像。モヤが立っているのがわかる人はいるだろうか。

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やこう

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